ヒトの歩行は「大腿骨の角度」がカギ?

大腿骨の図

大腿骨

太ももを構成する骨を大腿骨(だいたいこつ)と言います。骨盤とくっついて、股関節を成しているのは大腿骨の骨頭(こっとう)と言われる部分。そして、この骨頭と骨幹部を繋ぐのが頚部(けいぶ)。ここに角度、傾きが存在します。一つは頚体角(けいたいかく)と言って、骨頭と骨幹部との間の頚部の角度です。類人猿や四足動物は概ね90°ですが、ヒトは約120°です。

これによって足が体の中心に寄る形になり、片足立ちが容易になりました。そしてもう一つ、骨頭部分に角度があります。それが今回のテーマである前捻角(ぜんねんかく)です。

前捻角

前捻角

前捻角

大腿骨の骨頭は膝の水平面に対して、やや前方(腹側)にねじれています。これを前捻角(ぜんねんかく)といいます。類人猿では5°程度ですが、ヒトの成人では約15°と言われています。

さて、この角度はなぜあるのでしょうか?実は、股関節を構成している骨盤側(臼蓋)もやや前に傾いています。つまり、股関節は大腿骨も骨盤もともに前方にねじれて開いているということになります。これは、股関節の鼠径部を開く動作(股関節の伸展)をしやすくしていると考えられます。この動作はヒト特有で、他の動物で大きく鼠径部を開くような動きをする動物はいません。

鼠径部を開きやすくするのは、歩くためです。足を蹴るというということは股関節では鼠径部が開いているということです。ですから、前捻角は蹴り出しのための形態といってもいいでしょう。進化の中で作ってきたのです。

先ほど提示した前捻角の正常値(15°)ですが、実はこの角度に個人差が大きいのです。これがあまり知られていません。そして、これは臨床経験からの私見ではあるのですが、子どもの頃の座り姿勢が大きく影響を与えると考えています。以下、具体的に解説します。

ぺたんこ座りの弊害

子ども、特に女の子の座り方で多いのが、女の子座りとも言われる「割座」です。足を横に開いてペタンとお尻を床に着く座り方です。この状態を股関節で見てみますと、股関節を内側にねじっている動き(内旋)になります。大腿骨では前捻角を強くする方向に力がかかっています。この座り方を習慣にしている方は大人になった時に前捻角が強い傾向になります。横座りも同じように、片側だけ強くなります。

では、前捻角が強いと何か困るのでしょうか?実はこの角度が強いと、あぐらをかくように股関節を開く動作(外旋)をする際に可動域に制限がかかります。

前捻角が強いと、相対的に大腿骨の骨頭が前、そして大転子という骨の隆起部分が後ろということになります。股関節を外に開く(大腿骨を外にねじる)とこの後方部分の大転子が骨盤に当たってしまうのです。つまり、骨の衝突によって動きが制限されるのです。また、前に出た骨頭も正常よりも外れるような状態になり違和感を感じます。場合によっては、関節の合わさっている部分が少なくなることで痛みを感じる方もいます。

このように、前捻角が強いと股関節の可動域に制限がかかり、やや内股気味になります。内股は女性らしさを表すのか、十代の女性誌を見るとほとんどのモデルさんが内股でポーズをとり写っています。しかし、歩く時には踵の外側から着地することからも分かるように、股関節を開く動作はとても重要です。内股で走ると早く走れません。蹴り出しも股関節は外に開きます。

私はヨガの指導もしていますが、ヨガでは瞑想や調気法などで座法をとります。特にあぐら座りは股関節を大きく開きます。実は、生徒さんでこの姿勢が辛いという方が多いのです。調べてみるとほとんどがこの前捻角の問題で、聞けば、幼少から割座が多い方がほとんどでした。こうなると骨格の問題ですので改善は難しいのです。

親御さんには割座を見たら注意が必要ということを覚えておいて欲しいのです。時々であれば問題はありません。あぐら座りも割座も両方できるといいですね。何事も度が過ぎるといけないのです。

クレイグテスト(CRAIG test)で問題を把握しよう

ではどのように発見すればいいのでしょうか。簡単に方法を解説します。

  1. うつ伏せになる
  2. 膝を90°に曲げる
  3. 大転子(お尻の横骨あたり)を触れる
  4. 大転子が床と平行になる部分で止める(大転子が最外側になる部分)

    この時、床への垂線と脛(すね)とが成す角度が前捻角。写真のように正常は15°で、大きい方は45°もあることもある

開始肢位

開始肢位

前捻角の投影

前捻角の投影


少し慣れは必要ですが、骨模型があると分かりやすいですね。練習すれば誰でも簡単にできます。このテストを用いることで股関節の可動域の制限が骨格の問題なのか、または筋肉の問題なのかを鑑別できます。

まだ聞きなれない名前ですが、ぜひ常識の知識にして頂き姿勢と運動の関係性について多くの方が気を配れるようになると障害予防に大変に役立つと思います。
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