家族から受け取った「生きる力」の意味とは

更新日:2015年07月06日


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極地を舞台に活動する、植物生理生態学者の田邊優貴子さん。大学院時代に一大決心し分野変えをして現在の道へ進んだ。定期的に極地へ赴くようになって芽生えた新たな試みとは? そして決断に迷っている人達へ強いメッセージを送る。
(前編はこちら)



まずは自ら経験し、内側から起こる感情を大切にする


――これまで極地へはどのくらい行かれたんですか?

南極に5回、北極に3回。今年も夏に北極、冬に南極へ行きます。


――何度も訪れるうち、ご自身に変化を感じることも?

ありますね。哲学的なのですが、時間の流れの見方が変わりました。南極はすごく古い大陸で、すぐそこに出ている岩が40億年前のものだったりするんです。氷河が削れて大陸がいまの地形になったのが、数十万年の単位。氷河も始まりは雪なのですが、積もった雪が圧縮されて氷に変わり海に流れ、氷山になるまでに十数万年。生きものが入り、生態系が出来るのにまた1、2万年。そのスケールで地球と人間の時間を対比して考えたとき、より時間を大切にしようという気持ちが湧いてきました。あとは、良い意味でちょっとしたことでは動じなくなりましたね。落ち着いて物事が見られるようになったと思います。

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Photo by Yukiko Tanabe (C)



――研究以外にも、出版や講演会など活発に活動されています。ご自身が小学生のころにアラスカの映像を見たことが興味をもつきっかけになったように、次の世代にとってのきっかけ作りをしたい想いもあるのでしょうか。

まさにそうですね。研究者だけで学会に閉じこもっていても社会に対するアウトプットがない。ものとして還元するわけではないですが、自然科学の面白さや思想・生き方を伝えて還元することはすごく重要だと思っています。
講演のとき、子どもたちに「私は地球温暖化のために何をしたらいいですか?」と尋ねられて驚きました。それは順番が違うなと。まずは自分が自然や現地へ出て体験し、そこで起きている問題を見つける。それを解決するためにはどうしたらいいのだろう?と考える、という順序があると思うのです。環境問題を先に学習してしまっているので、まずは問題ありきで考えてしまう。そういうところも変えていけたらと思い、一般向け、特に子ども向けの講演をやっています。


――まさに、田邊さんの人生はその繰り返しのような気がします。ご自身で経験して、考えて、決断する。

そうですね(笑)。今は情報があふれているけど、まずは自分の内から起こる感情を大事にしてほしい。そうでないと、実際に行動しても、それは本物じゃない気がしてしまって。その考え方は理系の基本なのかもしれないですが、そういったことが自然科学を志す子どもたちが増えることにも繋がるんじゃないかと思います。


祖母の病気を通して受け取った「生きる力」。田邊さんの決断へ向かうプロセスとは……

ガイドインタビュー-Human dept.ガイドの原点