定評あるダンスと柔軟な歌唱力を武器に、史上初・日中合作ミュージカル『陰陽師』からダークな異色作『ブラック メリーポピンズ』まで、様々な作品で活躍する良知真次さん。今年は夏から初秋にかけて、終戦後の知られざる青春模様を描く『宝塚BOYS』、耽美的な『ドリアン・グレイの肖像』と、タイプの異なる二作品に出演、注目を集めています。この記事では2018年初夏に行った最新インタビュー、そして2015年、『ライムライト』稽古中のインタビューを掲載。一歩一歩、着実にキャリアを築いていらっしゃる良知さんの率直な言葉の数々、お楽しみください!

《目次》
・2018年初夏 良知真次さんインタビュー(本頁)
良知真次 83年東京都出身。15歳からジャニーズJr.として活躍した後、04年から劇団四季に所属。『コーラスライン』マーク役などを務めた後、東宝芸能に所属。『屋根の上のヴァイオリン弾き』『ALTAR BOYZ』『ロミオ&ジュリエット』『スリル・ミー』等に出演する傍ら、ライブ活動、振付でも活躍している。(C)Marino Matsushima

良知真次 83年東京都出身。15歳からジャニーズJr.として活躍した後、04年から劇団四季に所属。『コーラスライン』マーク役などを務めた後、東宝芸能に所属。『屋根の上のヴァイオリン弾き』『ALTAR BOYZ』『ロミオ&あジュリエット』『スリル・ミー』等に出演する傍ら、ライブ活動、振付でも活躍している。(C)Marino Matsushima

 

2018年初夏・良知真次さん最新インタビュー】
先人たちの夢や情熱が
今の日本演劇界の活況に繋がっている、と
意識しながら『宝塚BOYS』を演じたい

 

――まずは8月に出演される『宝塚BOYS』についてうかがいます。本作は良知さんにとって、どんな作品でしょうか?

 

「ひとことで語るのはすごく難しいですね。日本で知らない人はいない、100年以上の歴史を持つ宝塚歌劇団を舞台に、(宝塚の)歴史からは見る事が出来ない事実をベースにした作品で、ハッピーエンドではない。おそらく人生で二度とやらないような気がして、前回、すべてを出し切ったので、その時の記憶はないんです。今回は新たにやるという感じなので、むしろ初めて出演するメンバーより新鮮な感覚かもしれないですね。この前、(前回公演で共演した)藤岡(正明)君と会ったら、彼は(この作品のことを)全部覚えていて、驚いたほどです。

 
『宝塚BOYS』

『宝塚BOYS』

 

この作品の特徴として、稽古に入る段階では、まだ役は決まっていません。最終的に(演出の鈴木)裕美さんが決められるのですが、そういう作品ということもあって、本読みでは全員の気持ちになって読まないといけないと思っています。いろいろ試していきたいですね」

 

――記憶が残らないくらい出し切るというのは、良知さんにとってはよくあることですか?

 
『宝塚BOYS』過去の公演より。写真提供:東宝演劇部

『宝塚BOYS』過去の公演より。写真提供:東宝演劇部

 

「僕はだいたい、いつもそうです。特技と言うくらい、ぱっと忘れますね(笑)。すべてをその一つの公演にぶつけないといけないと思っています。しっかり終えてこそ再演があるし、やるとしても、例えば1年のインターバルがあるとしたら、その間の経験を通して、自分の成長を反映させ、新たに臨むものだと思うんです。前回と同じ役になるかどうかはわからないし、共演者が変われば芝居全体も変わってくる、いい意味で輸入ミュージカルとは違う、型にはまっていない作品なので、前回とは全く異なる作品になる予感の中で、新鮮な気持ちで取り組みたいです」

 

――前回、ご出演の後、良知さんは宝塚歌劇団で振付のお仕事をされたそうですね。“宝塚”観は変わりましたか?

 

「宝塚観が変わったというより、“これは皆さん、憧れるはずだ”と感じました。近くで見ても、男役さんはかっこいいし、娘役さんは美しい。でも、一つお客様に自慢させていただくなら、僕は生徒さんたちが日々、ものすごく努力しているところを目の当たりにしたんですね。お客様は努力の結果を御覧になるわけだけど、その過程では、朝から夜10時までの、全力投球の稽古があるわけです。そこには、彼女たちに“スターになりたい、作品を良くしたい”という夢があって、それを実現することにまい進されている。それが“清く正しく美しく”という宝塚の姿勢に繋がって行くのだろうと思います。まだまだ自分の稽古姿勢は甘い、と反省したほどです(笑)」

 

――(宝塚で)驚いたことなどありましたか?

 
『宝塚BOYS』

『宝塚BOYS』

 

「やっぱり、“らしさ”の追求はすごいですね。例えば、男役さんなら、男を演じるうえでのカッコよさというものを、本物の男より追求していて、座り方、ジャケットを着た時の手の角度といったものを、一つ一つ研究されている。娘役さんだったら、スカートをどうひらひらさせて可憐さを表現するか。その後、2.5次元ミュージカルに出演する時など、宝塚で見たことを参考にさせていただいています」

 

――2.5次元や、例えばジャニーズのアイドルの方々もそれぞれにカッコよさは追求されていると思いますが。

 

「でも、女性目線ではないから、見ていて“なるほどな”と思うものがあるんですよね。最近演じた(2.5次元ミュージカルの)『陰陽師』でも、安倍晴明を演じるにあたって、原作の晴明が美しいだけに、その美しさを着物のさばき方などで表現しました」

 

――実際に男子部に在籍された方にもお会いになったのですよね。

 

「責任感が増しました。本当にその時を生きた人たちの話を、芝居という形で現代に伝えないといけない。彼らほど熱く生きてる人って、現代にはなかなかいないけれど、こういう夢をもった人たちがいたからこそ、僕らが今当たり前のように生きている、そのことを伝える事が出来たらと思います」

 

――本作では宝塚に憧れて育った上原はじめ、電気店の竹内、オーケストラメンバーだった太田川ら、個性豊かな面々が、新設された男子部で慣れないレッスンに励む日々が描かれます。当初から劇団内・観客からの風当たりが強かったにもかかわらず、皆があそこまで頑張れたのはなぜなのでしょう。

 
『宝塚BOYS』過去の公演より。写真提供:東宝演劇部

『宝塚BOYS』過去の公演より。写真提供:東宝演劇部

 

「(創始者の)小林一三先生含め、男たちの夢だったのでしょうね」

 

――冒頭、戦争の爪痕が爆音で示唆されていますが、もしかしたら彼らが戦争の傷を癒すのに、宝塚と言う“夢の世界”にすがらずにはいられなかったということもあったでしょうか。

 

「それもあるとは思います。舞台のお仕事って娯楽であって、娯楽は世の中で最も“いらない”仕事と思われているかもしれません。例えば農業は絶対的に必要だけれど、娯楽はなくても生きていけます。でも、もしここに明日死のうとしている人たちがいたとして、彼らに“もう一度生きてみよう、夢を観よう”ということが言えるのが、娯楽というもの。それは僕自身、いつも思っていて、実際に舞台とうお仕事によって救われたこともあります。

男子部のメンバーも(戦争による心の傷を)舞台によって癒されたからこそ、自分も舞台をやりたいと思ったのでしょうね。終戦後の混乱のなかで、誰もそんなことをやろうと思わないなかで敢えてやろうというのだから、ひとことで言えば変わり者の集団です。上原さんなんて、その中でも小林先生に男子部創設を提案する手紙を書いたのだから、一番の変わり者(笑)。でも彼らのような夢や希望が、今の日本の演劇界に繋がっていて、2.5次元ミュージカルが海を越えていくような活況が生まれているんだと思います。そのことは忘れたくないですよね」

 

――でも男子部の結末を考えると、切ないですね。

 

「ハッピーエンドではないので、普通なら敢えて何度も観たいような話ではないかもしれません。それにも関わらず多くの方が“もう一度観たい”と思ってくださり、上演が重ねられてきました。それはやはり、彼らがそれでも“次へ”と進んでゆくからだと思います。命をかけて取り組めば、夢はかなわなくても、その次の夢に進める。人には、その力がある。そしてそこには成長がある。“青春”と言う言葉がぴったりの作品だと思います」

 

――勇気をもらえる舞台ですね。

 
『宝塚BOYS』

『宝塚BOYS』

 

「そう思います。僕らとしては、今、各地の劇場で当たり前のように幕があいて、千穐楽を迎えている。でも、その当たり前を経験することなく、夢に砕けた人々が実際にいたことを、現代のお客様にきちんとお伝えしなければ。特に今回は2チームでの上演で、僕は“経験者”のほうのチームなので、自分たちの経験をどう生かせるかということを考えて、稽古していきたいですね」

 

そのナンバーで何が求められているか、
常に考えながら表現しています


――『宝塚BOYS』の後には、ミュージカル『ドリアン・グレイの肖像』に出演されるのですね。

 

「何年も前から構想されてきた舞台で、宝塚出身の方が何人も出演されます。内容的には『宝塚BOYS』とは全く違う作品になりそうで、お客様に“違う良知真次”を見せないといけません。2.5次元とも違う、全く違う引き出しをお見せ出来ると思います。台本はまだいただいてないので、アート寄り、もしくはエンタテインメント寄りの舞台になるかはわからないけれど、演出の荻田浩一さんとは『アルジャーノンに花束を』でもご一緒していて、すごい世界観をお見せできるんじゃないかと楽しみにしています」

 
『ドリアン・グレイの肖像』

ミュージカル『ドリアン・グレイの肖像』

 

――オスカー・ワイルドのドリアン・グレイといえば、自らの美しさに人生を狂わされてゆく究極の美青年ですが、こういった耽美的な世界は、ご自身としてはいかがですか?

 

「美しいものが嫌いな人って、なかなかいないんじゃないですか?(笑) 人であったり、心であったり、モノであったり、世の中に“美しいもの”がいろいろあるなか、ドリアンは究極の“美”だと思います。この役に取り組むまでに、いろいろな美を追求して自分の中に入れておきたいですね。稽古が始まったとき、それが表現として出てくると思うんです」

 

――良知さんと言えば振付家としても活動されているほどのダンスの名手ですが、歌い手としても魅力的です。ロングトーンの終盤でパワーがぐっと増すような歌唱をされることがありますが、これが出来る方、なかなかいらっしゃいません。

 

「僕としては他の方々がどうトレーニングしてるかお聞きしたいくらいですが(笑)、作品の中で何がその歌に求められているか、についてはよく考えます。強くぶつけることが必要なのか、切なく歌うべきかとか。

たとえば以前、『NARUTO』で強い役を演じていて、ずっとバーンと歌っているのだけど、最後に死んで、囁くように歌ったんです。そうしたらプロデューサーから“歌詞を(お客様に)届けたいから、もう少しはっきり歌ってください”と言われたんですね。僕はプロデューサーと作曲家、演出家に集まっていただいて、“こちらが切なく歌う時、お客様はそれを聞きたいと思ってくだされば前のめりになる。この人に耳を傾けたいと思うから真実って伝わるわけで、僕はそういう歌い方をしたいけれど駄目でしょうか”と話したら、演出家が“それで行こう!”と言ってくださった、ということがありましたね。そういうふうに、柔軟に歌い方を変えられるのは日本のオリジナル・ミュージカルならでは。(海外の“お手本”に倣うことなく、歌を)自分のものとして歌えるのは魅力だと感じています」

 

――さきほど、エンタテインメントというお仕事の話題が出ましたが、良知さんがその意義を意識し始めたのはいつ頃だったのでしょう?

 

「最初からそうだったのかもしれません。15歳でこの世界に入った時から、これだけたくさん人たちが集まって泣いたり笑ったりする、この仕事には何かがあると感じていました。最近はそれに加えて、この仕事は国境を簡単に超えていけるんだな、とも思います。最近出演した『陰陽師』は、日本の物語が中国でオンラインゲーム化され、それを日中合作で舞台化したものでした。日本・中国双方で上演され、大きな歴史が動いたと思うし、政治的な関係はどうあれ、文化は受け入れられていくのだな、と。おかげさまで中国でも日本でも評判が良かったし、舞台も続きがあるような終わり方だったので、また手を取り合って(続編が)作られていくといいなと思っています」

 

――その『陰陽師』を含め、良知さんは最近、2.5次元ミュージカルでも活躍されています。2.5次元世界はいかがですか?

 

「楽しさもあるけれど、一言で言うと“大変”です(笑)。むしろ海外ミュージカルのほうが楽かもしれません。というのは、日本を代表するコンテンツを舞台化するにあたっては、普通の作品より求められることが多くて、映像を含め、最新技術を取り入れてゆくと、一か月の稽古期間ではとても足りないんです。時間的なハードさもありますし、役者としては、2.5次元ミュージカルでは殺陣もやればダンスもやる。海外ミュージカルとは比べものにならないくらいやることが多いけど、だからこそ多くの方が観たくなるものが出来るのかもしれません」

 

――3年前のインタビューで、良知さんはご自身のヴィジョンとして“いろいろな色を出していきたい”とおっしゃっていましたが、その後のご活動の中で、手ごたえはいかがでしょうか?

 

「目標はいい意味で、変わっていないと思います。ということは、きっと僕は一つの色に染まっていないということだと思うんですね。すごくクールな役もやれば、気が狂ったような役も、おちゃらけた役も、病気の役もやってきている。いろいろな役をやるということ、“七色であること”が、自分のカラーになってきているのかもしれません。実際、もし自分はこう、と色を決めていたら、2.5次元出身でない僕が2.5次元ミュージカルに出ることはなかったと思うんですね。これからも、この目標は変えずにやっていきたいです」

 

*公演情報*

宝塚BOYS8419日=東京芸術劇場プレイハウス、その後名古屋、久留米、大阪で上演。

ミュージカル『ドリアン・グレイの肖像92130日=博品館劇場、その後大阪で上演


*次頁で、2015年に行った良知さんへのインタビュー、最終頁で『ライムライト』観劇レポートを掲載しています!

【2015年初夏・良知真次さんインタビュー】
良知真次 83年東京都出身。15歳からジャニーズJr.として活躍した後、04年から劇団四季に所属。『コーラスライン』マーク役などを務めた後、東宝芸能に所属。『屋根の上のヴァイオリン弾き』『ALTAR BOYZ』『ロミオ&ジュリエット』『スリル・ミー』等に出演する傍ら、ライブ活動、振付でも活躍している。(C)Marino Matsushima

良知真次 83年東京都出身。15歳からジャニーズJr.として活躍した後、04年から劇団四季に所属。『コーラスライン』マーク役などを務めた後、東宝芸能に所属。『屋根の上のヴァイオリン弾き』『ALTAR BOYZ』『ロミオ&ジュリエット』『スリル・ミー』等に出演する傍ら、ライブ活動、振付でも活躍している。(C)Marino Matsushima


落ちぶれた老芸人が、自殺を図ったバレリーナの命を救う。人生を儚んだ彼女を励まし続けるうち、二人の間には強い絆が育まれるが、老いを自覚する芸人は彼女の愛を拒絶。大スターとなっても変わらぬ彼女の思いにようやく彼が応えようとするとき、残酷な運命が待っていた…。

石丸幹二さんがこよなく愛する、チャップリン晩年の代表作『ライムライト』。映画のストーリーに、チャップリンが残した本作の前日談ともいえる小説『フットライト』のエピソードを加え、今回世界初の舞台化が実現します。

この物語で、ヒロインのテリーがバレリーナになる以前、文房具店で働いていたころに思いを寄せていた貧しい作曲家ネヴィルを演じるのが、良知真次さん。最近では『シャーロックホームズ2~ブラッディ・ゲーム』『ちぬの誓い』『ブラック メリー・ポピンズ』等での情熱的な演技が印象的な彼ですが、今回は打って変わり、優しく淡い風合いの作品世界、役柄に難しさを感じているのだとか。どんな舞台、またどんなネヴィルが観られそうでしょうか。
 

名曲「エターナリー」のメロディにのせて描かれる
優しく、淡い風合いの愛の物語で
純粋な作曲家役に挑戦

『ライムライト』

『ライムライト』

――原作映画や台本をご覧になっての第一印象からお聞かせください。

「原作の映画はオーソドックスな名作ですよね。今まで舞台化されていなかったのが不思議なくらいですが、チャップリンという方が主演していたことで、彼の存在感が大きすぎて舞台化しづらかったのかもしれないですね。

今回の舞台の台本は、初めて読んだ時に映画とはまったく違った印象を受けました。映画の世界をぐっと濃縮した感じではあるのですが、独特の優しい世界観があって、これをどう作るのだろう、と。実際、稽古に入ってみて、“映画と同じようにしよう”という話は全くでてきませんし、オリジナル作品を創るような感覚で皆さん作っていらっしゃると感じます。感情の周波数の波形があまり大きくないというか、起伏が穏やかな中でストーリーがどんどん膨らんでいくようなイメージです」

――そのなかでネヴィルという役をどう作っていらっしゃるのですか?

「老齢の芸人カルヴェロとの対比ということもあって今回は僕の実年齢よりずっと若い青年役ですが、難しいなあと思いながら作っています。というのは、原作の映画では、テリーが昔の淡い恋を思い出すシーンで、文房具店に通ってくるネヴィルが登場するのですが、今回の舞台ではその場面がないんですね。2幕に登場した時、テリーの記憶の中に居たネヴィルとしてうまくイメージ付けができるか、というのが一つの課題です。

また、老芸人のカルヴェロは芸のこと、テリーはバレエのことで葛藤していますが、ネヴィルの葛藤は描かれていません。そんな彼が最終的にカルヴェロとテリーの愛を応援していくような形に、作品の抽象的な空気を活かしながら演じていかなければなりません。ネヴィルはもともとすべての面で優しい人だと思いますが、それがテリーを思うことでさらに優しさの方向性が増えていく、ということなのかなと想像しながら役を作っています」

――お話をうかがっていて、力強いタッチの油絵ではなく、点描であったり、淡い日本画のような世界が想像できます。

「その通りかと思います。“淡い憧れ”という歌詞もあって、まさしくそういう世界です。僕はわりと感情をあらわしたりするタイプですが、そうじゃなくて一歩引いたところで、優しく言葉をかけるんですね。もしかしたら、(物語の舞台である)20世紀初頭のロンドンでは、そういう人が多かったのかもしれないですね」

*『ライムライト』のお話、次頁でまだまだ続きます!

ネヴィルの「子犬のような」奥ゆかしさ、もじもじ加減も
見どころの一つ?!

――その「引き」が今回のご自身のテーマでしょうか?
『ライムライト』ネヴィル役

『ライムライト』ネヴィル役

「確かにそうですね。ネヴィルはもじもじしてるんですよ。演出で“子犬のように見えてほしい”というリクエストをいただいていまして、僕的にはちょっとかゆくなるような感じの青年(笑)。僕だったら“今行けばいいのに”と思うタイミングで、“行きたいけど~無理~行きたいけど~”と苦しんでる様子を見せられたらいいかな。そこがテリーとしてもかわいく見えるのでしょうね。はっきりアプローチされたら拒んだり距離を置いてしまうところを、ネヴィルのような性格だから友達の関係でいられるし、守ってあげたいという意識が芽生える」

――ネヴィルがいることで、よりテリーの人物像が明確になりますね。

「そうですね、僕の役を通してテリーという人物がよりお客様にわかりやすく見えていったらいいなと思いますね」

――今回は“音楽劇”ということで、チャップリン自身が作曲した「エターナリー」など映画のナンバーに加え、荻野清子さんによるオリジナル曲も登場するのですね。

「お芝居の中にナンバーが溶け込んでいる感じで、1曲歌って拍手をいただくという感じではないのが、ミュージカルとは明らかに違います。本当にきれいに溶け込んでいて、音楽劇の良さを感じます」

――台本にはチャップリン自身の人生哲学かな、と思われるような名台詞もたくさんありますが、良知さん的に共感できる台詞はありますか?

「物語自体はちょっと切ない部分があって、ミュージカルで例えれば『コーラスライン』的な、人生の影の部分が描かれていて、それを受け入れちゃうと寂しいかなと思うんですが、カルヴェロがテリーとの会話で言う、“笑いや拍手があるときほど頑張れることはない”というような台詞にはすごく共感できますね。役者さん誰もが同じだと思います。

舞台ではお客様や作っている側の空気によって、受けることもあればそうでないときもあるけれど、それがマッチする時にはすごく「よかったな」と幸せを感じるんです。カーテンコールで拍手をいただくと嬉しいし達成感があるし、そのあとも頑張っていける。不思議ですよね、拍手の力って。『スリル・ミー』のようなシリアスな作品からものすごくハッピーなミュージカル、アーティストとして活動させていただいているライブまで、いろいろなステージに立っていますが、そのどこでも拍手というのは一つ、同じ力を持っているのかなと思います」

――今回、どんな舞台になりそうでしょうか?

「原作映画の世界観に演出の荻田浩一さんのエッセンスが加わることで、原作とは一味もふた味も異なる、まるで異空間にいるような感じの舞台になるのではないでしょうか。それこそ淡く優しく、切なく哀しく、そして感動的な…。カルヴェロが主人公ではありますが、病気から立ち上がったヒロインがさらに試練を乗り込えてゆくという話ですので、女性のお客様にもとても共感できる作品だと思います。僕たちにとっても、カルヴェロやテリーの“芸道”に自分を重ねてみることができる作品です」

*次頁からは良知さんの「これまで」をうかがいます。ジャニーズ事務所から劇団四季を経て東宝芸能へ。アイドルの世界から、どのようにミュージカルへと進路を変えていらっしゃったのでしょうか?

「本当にやりたいこと」に気づき
改めて「ミュージカル」という道を選ぶまで

『宝塚BOYS』写真提供:東宝演劇部

『宝塚BOYS』写真提供:東宝演劇部

――ここからは良知さんの「これまで」をうかがいたいと思いますが、良知さんは15歳でジャニーズ事務所に入られたのですよね。なぜアイドルを目指されたのですか?

「僕はアイドルになりたかったわけではないんです。テレビでアイドルを見ても特に憧れたりという気持ちはなかったんですが、中学生の時にたまたま少年隊の『PLAYZONE』のビデオを見て、衝撃を受けたんです。歌って踊ってアクロバットもして芝居もして、この人たち何でも出来るんだ! かっこいい! 僕もこういうふうになりたい! と思ってオーディションを受けました」

――さっそくジャニーズJr.として活動されましたが、下積みが長く続きましたよね。それでも心が折れなかった、その原動力は何だったのでしょうか?

「心が折れそうになる時ももちろんありましたが(笑)。でも心が折れても、そのたびに立ち上がれたのは、やっぱり“やりたい”という気持ちがあったから。どんなに悩んで“無理だ”と思っても、それでもやりたいと思ったということでしょうか。苦しい時も不安なときも、常に“やりたい”という気持ちに支えられたし、それが結果として次に繋がってきたんじゃないかと思います。
『ブラックundefinedメリーポピンズ』撮影:難波亮

『ブラック メリーポピンズ』撮影:難波亮

もう一つ、応援してくださる方々の存在が大きかったです。ジャニーズの時から応援してくれる方が、当時の僕はバックダンサーをやっていることが多かったから、ミュージカルの世界で主演が決まったときにびっくりしたと手紙を送ってくれたり、劇団四季時代、それ以降に僕を知ってくれた方々もいろんな思いを持ちながら応援してくださっていて、とっても嬉しいです。

ある時期、自分の歩む道についてすごく悩んでいて、先輩から“芝居をやりたいのか、歌か、踊りか、一つ決めてそれに向かって進んでいったほうがいい”と言っていただいたことがあって、その時僕は一つに絞れなかったんですね。それは僕に才能がないということなのか、と思ったのですが、 “いや僕は全部やりたいんだ”と気が付いて、改めてミュージカルの道に進むことを選んだんです」

――04年から2年ほど、劇団四季に在籍。『ジーザス・クライスト=スーパースター』『マンマ・ミーア!』に出演したり、『コーラスライン』のマーク役を演じました。四季で学んだことの中では何が一番大きかったですか?

「ジャニーズとは180度世界観も違うので、一言でいうのはすごく難しいんですけど、役者としての基礎でしょうか。例えば、日本人である以上は日本語を大切にしなければいけない。台詞を言う、お客様に伝えるのであれば、お客様がチケット代を払ってくださっている以上、1階でも2階でもどこに座っている方にも平等に聞こえなくちゃいけないということを教えてもらったりしました。僕も自分が舞台を観ていて、“何言ってるんだこの人”と思うのはいやだと思うんですよ。では台詞をきちんと伝えるためにはどういう身体が必要か、といったことまで学ばせていただいたと思います」

*次頁では秋に控える『ダンス オブ ヴァンパイア』について、また今後の抱負をうかがいます!
 

引き出しをさらに増やし、
観客に「好きな色」を決めてもらえる表現者に

『シャーロックホームズ2undefinedブラッディ・ゲーム~』撮影:難波亮

『シャーロックホームズ2 ブラッディ・ゲーム~』撮影:難波亮

――迷われた先にあった「ミュージカル俳優」という道。現在はどうとらえていらっしゃいますか?

「この道を選んで絶対に良かったという確信があります。ミュージカルにもいろんなジャンルがあって、ブロードウェイ・ミュージカルからウィーン・ミュージカル、韓国ミュージカルに2,5次元といろいろやらせていただいていますが、それぞれ世界観も違うし、音楽のテイストも異なります。芝居がメインのミュージカルもあれば歌だけの作品も、ダンスがメインのものもありますよね。ジャニーズJrに入った時は踊りがメインだった僕が、最近では、『シャーロックホームズ2』『スリル・ミー』そして今回の『ライムライト』と、まったく踊りがないところでキャスティングしていただいています。

でも実は踊ってない時こそ踊りの勉強になるんですよね。芝居の気持ちだったり、歌を歌うことに集中することで、その経験が次の現場で踊るときに活きてくる。視野や世界観が広がることで、“こういう感じで踊ってみたいな”という発想につながるし、振付の仕事もやらせてもらってるので、役者さんやアーティストにうまく伝えやすくもなります。(場数を踏むことで)“演出家はこういう意図で言ってるんだな”“脚本家さんはこうしたいんだな”というのが早くつかめるようにもなってきました。

ミュージカルって、歌はアーティストさんと同じくらい歌えないといけないし、ダンスはダンサーさんと同じくらい踊れないといけない、芝居は役者なんでできて当たり前ですよね。ものすごくハードルの高い世界だから、身体つくりを含めて日々の訓練が大切だと思います。でもその積み重ねで、一つの道が二つになったり四つになったりとチャンスが広がっていきます。今は日々、“今あるこの仕事がラストチャンスだと思って一生懸命にやることに、間違いはない”と思うようにしています。実際、それが自分にとっていい方向に行っていると感じています」

――11月には『ダンス オブ ヴァンパイア』にアルフレート役で出演されますね。
『ダンス オブ ヴァンパイア』アルフレート

『ダンス オブ ヴァンパイア』アルフレート

「再演を重ねている作品で、すごく楽しみにしてくださってる方も多いですし、アルフレート役として泉見洋平さんや浦井健治くんがやってきたものを裏切らないように、自分なりのアルフレートを演じたいなと思ってます。僕は帝国劇場に立つのが『SHOCK』以来、15年ぶりなんです。『ダンス オブ~』は11月公演ですが、『SHOCK』も11月でした。ちょうど15年目という節目の年に同じ舞台に立てるのも運命かなと思います。幸せですし、そこに挑戦できるのはものすごくうれしいですね」

――今後について、どんなビジョンをお持ちでしょうか?

「一言では難しいんですけど、いろんなジャンルをやらせていただくなかで、視野が広がってきているので、様々な良知真次をいろんな色、角度でお見せできたらと思います。いい意味で期待を裏切って、「こうくるだろうな」と思ってたら「そっちで来たか」というような見せかたもしたいですね。いろんな引き出しをもっているほど、作品を通して多くの色を出していけると思うので、一つと決めずにやっていきたいです。俳優に限らず、振付や映像の監督の仕事で視野が広がったりもしているので、様々な角度から作っていったり演じていったりして、いろんな色の良知真次の中から、お客様に好きな色を決めていただけたら嬉しいですね。自分から“僕は何色”と提示するのではなく、そういう役者になりたいと思っています」

*****
アイドルの世界からミュージカルの世界へ。性質の異なる競争社会で地道に経験を重ね、それが大輪の花となりつつある良知さん。そのご苦労、苦悩は言葉にされている以上のものと思われますが、インタビューの間ずっと輝きを失わない、澄んだ瞳が印象的でした。近年はエネルギッシュな役が続いていた彼ですが、“純粋さ”を具現化したような今回のネヴィル役は、本質的に良知さんにぴったりなのでは。ぜひ劇場で、お確かめください!

*公演情報*ライムライト』7月5~15日=シアタークリエ
*次頁で『ライムライト』観劇レポートをお届けします!

 


『ライムライト』観劇レポート
無償の愛とエンターテイナーの“性(さが)”を
気品とユーモア、ペーソスを交えて描く舞台

『ライムライト』写真提供:東宝演劇部

『ライムライト』写真提供:東宝演劇部

原作映画のファンでいらっしゃるのか、熟年男性の姿も多い客席。映写機が回る音と「エターナリー」を奏でるピアノの音色に、主人公カルヴェロ役・石丸幹二さんのしっとりとしたナレーションが重なり、心地よさの中で舞台は動き始めます。
『ライムライト』写真提供:東宝演劇部

『ライムライト』写真提供:東宝演劇部

1幕の舞台は大きく二手に分かれ、下手(舞台向かって左側)のアパートのセットではカルヴェロとテリーのドラマが展開。上手の舞台袖風空間ではその他の役者たちが下手の様子を見守り、時にカルヴェロたちに関わりにゆくという構図です。アパートの大家役の保坂知寿さん以外の方々は、1幕の間はアンサンブルに徹していますが、2幕で作曲家を演じる良知真次さんが時折舞台中央でテリーの方を向いてたたずみ、この後の展開を予感させるなど、ところどころにアクセントの置かれた演出。(演出・荻田浩一さん)。チャップリンの自作曲「エターナリー」「いわしの歌」「Spring Song」「You are the song」を補強する形で全篇にちりばめられた荻野清子さん作曲のナンバーも違和感がなく、20世紀初頭の端正で奥ゆかしい空気感に包まれた舞台です。
『ライムライト』写真提供:東宝演劇部

『ライムライト』写真提供:東宝演劇部

かつて一世を風靡した芸人だったが、年老いた今は体の不自由な友人から金を借りるほど落ちぶれているカルヴェロ。そんな彼が偶然別室の異変を察知し、ガス自殺を図ったバレリーナのテリーを救出。人生を悲観した彼女を言葉を尽くして励まします。彼の献身によってテリーは少しずつ生きる気力を取り戻しますが、反対にカルヴェロのほうは久しぶりの舞台で笑いをとれず、クビを言い渡される。失意の彼を励ますうち、テリーには大きな変化が。マイナスの状況にあるもの同士が互いを思いやり、支え合う様は純粋に美しく、心あたたまる1幕の締めくくりです。
『ライムライト』写真提供:東宝演劇部

『ライムライト』写真提供:東宝演劇部

穏やかに進行する1幕から一転、2幕では場面がカルヴェロのアパートを出ることで、良知さん演じる作曲家に吉野圭吾さん演じる劇場主、植本潤さんが演じる演出家と、主人公たちが関わる人々が増え、ドラマティックな展開へ。かつて文房具店で働いていたころテリーがほのかな思いを寄せていた青年ネヴィルは立派な作曲家となり、テリーもバレリーナとして成功し、二人は再会。今度はネヴィルのほうがテリーに恋心を抱きますが、テリーは自分を立ち直らせたカルヴェロを深く愛し、ネヴィルに告白される前に「私は結婚するの」と牽制。しかし一瞬彼女の心が揺らいだことをカルヴェロは見てとり、若いネヴィルにテリーを譲ろうとします。3人の恋の行方は、そしてカルヴェロは芸人としてもう一花咲かせることができるのか…。
『ライムライト』写真提供:東宝演劇部

『ライムライト』写真提供:東宝演劇部

今回“老け”という意外な役どころに挑戦した石丸幹二さんは、その気品ある持ち味が20世紀初頭の時代感にマッチ。昔日のショーの再現シーンではチャップリンさながらの山高帽に燕尾服でナンセンスソングを歌いますが、それ以外ではことさら表面的な模倣はせず、芸人としての誇りや若い世代に対する愛情など、内面的な部分で(カルヴェロ役を通しての)チャップリンを表現しています。チャップリンの自作曲に本作の作者・大野裕之さんが“若者は輝き 年老いた影消え…”と詞をつけた「エターナリー」の歌唱シーンでは、人の声でありながらまるでヴァイオリンのような、滑らかな“音色”で観客を魅了。声の研究においてはミュージカル界随一である、石丸さんの面目躍如の瞬間です。
『ライムライト』写真提供:東宝演劇部

『ライムライト』写真提供:東宝演劇部

原作映画ではやや平面的な人物描写となっていたテリーを、野々すみ花さんは起伏豊かに演じ、他の登場人物たちとの関係性もより、わかりやすいものに。バレリーナ役として端正な踊りも披露しています。インタビューで「描かれていない部分が多い」とネヴィル役の難しさを語っていた良知真次さんは、背筋がぴんと伸びた姿こそ颯爽としていますが、テリーやカルヴェロとのやりとりで見せるためらいの“間”が、この青年の奥ゆかしさを雄弁に物語ります。カルヴェロと同年代らしい劇場主役の吉野さんは、適度な遊び心で登場シーンの空気を和らげ、演出家役の植本さんはそれに輪をかけたお遊び(演出家役のモデルは…と漏らして爆笑を誘う一幕も)で盛り上げ、大家役の保坂さんは抜群のコメディセンスで物語を弾ませます。(劇団四季時代からの盟友である石丸さんとは、丁々発止のやりとりも息がぴったり。)
『ライムライト』写真提供:東宝演劇部

『ライムライト』写真提供:東宝演劇部

男女3人の愛の純愛とエンターテイナーの“性(さが)”を、気品とユーモア、そしてペーソスを交えて描く本作。演じ手が年輪を重ねてゆけば、また違った味わいが加わることは想像に難くありません。ぜひ数年後に再演を。そしてさらにその数年後にも!

*良知さん以外のご出演者への過去のインタビュー記事 石丸幹二さん

 
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