ロンドンデリーのかつての名品

ターコネル

ターコネル

アイルランド共和国の東海岸側北部、北アイルランドの国境近くにクーリー蒸溜所はある。昨年末の記事『カネマラ/スモーキーなアイリッシュシングルモルト』で紹介したように1987年設立、1989年操業のまだ新しい蒸溜所である。
記事内で“アイリッシュの革命児”と呼ばれるほどさまざまな取り組みをしていると述べたが、今回のターコネルはクーリー蒸溜所設立時の事業コンセプトを物語るウイスキーのひとつ。
アイリッシュウイスキーは19世紀まではスコッチウイスキーをしのぐ興隆をみせた。クーリーを立ち上げたジョン・ティーリングは、栄枯盛衰によって失われたかつてのアイリッシュブランドの再興をコンセプトに製造をはじめた。
「カネマラ」の記事でアイリッシュはピートを使いスモーキーだった時代の懐古から生まれたものと述べた。この「ターコネル」は禁酒法(1920~1933)施行前のアメリカで高い人気を得ていたブランドである。

アイリッシュウイスキーはアイルランド共和国とUKに属す北アイルランドも含めてひとつの産地として語られている。20世紀はじめに長い植民地時代から脱出した時に、プロテスタントが若干多い北の地域がUKに残ったわけで、アイルランド島でつくられるウイスキーであることには変わりない。
かつて「ターコネル」は現在北アイルランドに属すロンドンデリー市のアビー・ストリート蒸溜所でつくられていた。この蒸溜所は18世紀末までは僧院(Abbey)であったらしく、ウイスキーをつくっていたそうで、1822年にジョン・スミスという人物がここで起業し、操業をはじめた。1830年頃、酒店を営んでいたワット一族が経営に参画するようになると成功をおさめはじめ、やがてこの一族に経営権が移る。
すると大成功にまで発展。19世紀後半には全英で最大規模の蒸溜所となる。主要ブランドは「ターコネル」「イニショーウェン」「フェバリット」。この3ブランドで禁酒法施行までの最大のシェアを誇っていた。
順調であり、グレーンウイスキーの生産規模も突出していたが、北アイルランドに属していたためにスコットランドの大手D.C.L.との確執に加えて、アメリカ禁酒法の影響があり、1925年に蒸溜所は閉鎖となった。

100倍の高配当で優勝した競走馬

さてこの「ターコネル」。ワット家所有の競走馬の名前である。この馬は1876年、アイルランド・クラシックに出場すると100倍の高配当で優勝してしまう。この番狂わせに歓喜したワット家は、早速記念ラベルとともに発売し、それが大人気となったのだ。
クーリー蒸溜所が復活させた現在の「ターコネル」のラベルにもそのレースのゴールシーンが使われている。
味わいは心地よい飲み口で、ライムのようなフレッシュ感のあるスムーズなシングルモルトである。アイリッシュらしいモルティな感覚もしっかりと抱いている。ただし以前紹介した「カネマラ」のようにスモーキーさはない。
いま、ジャパニーズ、スコッチのシングルモルトの世界を堪能している方がたくさんいらっしゃる。そろそろ「カネマラ」やこの「ターコネル」といったアイリッシュシングルモルトにも目を向けてみてはいかがだろう。新鮮で、味わいの世界が大きく広がるはずだ。是非、試していただきたい。

TYRCONNELL(ターコネル)
700ml/40%/¥3,600(税別)
Tasting Note
色        ライムグリーンがかったゴールド
香り       フルーティー・ライム
味わい      モルティ・クリーミー・バニラ
フィニッシュ   ハーブ様のスパイシーさが印象的

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