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犬と子供との関係 考えておきたい6つのこと

犬と子供が仲良くしている関係、雰囲気というのは心和むものです。しかし、一般的に犬は子供が苦手と言われています。よい関係が築けるようにするには、犬も子供もお互いに相手のことを知る必要があります。今回は、犬と子供の関係について考えておきたい6つのことを解説します。

大塚 良重

執筆者:大塚 良重

犬ガイド

子どもにとって犬はよき友達となり、兄弟にもなり、時に守り手にもなってくれます。その反面、互いに脅威の対象となってしまう場合もあり得ます。犬と子どもとのつきあいにおいて、どんな点について考えておいたらいいのでしょうか?
 
犬と子供の関係を考えるとき知っておきたいこと

犬と子供の関係を考えるとき知っておきたいこととは?

 

犬と子供との関係:犬にとっての子供の脅威

親が犬と子ども、両方を守り、お互いについて教えてあげることで、かけがえのない友達になることができる

親が犬と子ども、両方を守り、お互いについて教えてあげることで、かけがえのない友達になることができる


犬にとって、子どもは体も小さく、不可解な生き物として映っているのかもしれません。
  • 突然、奇声をあげて走り回ったりする。
  • 犬に対して乱暴な扱いをする。
  • 平気で犬の物を取り上げたり、食事の邪魔をしたりする。
  • 犬が発するサインを理解できない。
子どもというのはこうした予測不能な行動をとり、まだ自分をコントロールできない分、いくら穏やかで我慢強い犬であっても、子どもの態度が度を過ぎれば堪忍袋の緒が切れることがあります。「この犬はとても優しい性格で、絶対に人を咬まない」と過信するのは禁物です。実際に、そうした“優しい”とされる犬が子どもを咬むケースもあるからです。

また、私たちは体験的に犬にもジェラシーがあると考えています。アメリカで36頭の犬を対象に行われた犬のジェラシーに関する研究においても、相手は犬のぬいぐるみではあるものの、飼い主がそのぬいぐるみを可愛がっている素振りを見せると、ぬいぐるみとの間に割って入ろうとしたり、中には荒い態度に出る犬もいたり、ジェラシーと見られる行動が観察できたとしています。

犬が先にいて、子どもが後から生まれた場合、状況によっては犬にとって赤ちゃんがジェラシーの対象になることもあるでしょう。
 

犬と子供との関係:子供にとっての犬の脅威

逆に、子どもにとって犬が脅威の対象になることもあります。2010年にアメリカで行われた調査によると、犬が子どもを咬む場合、多くが顔(特に目)や首などの頭部を狙うそうです。子どもの身長が低いので、当然そうなるということも理由になるでしょうが、それはともかく、体に残った傷はもちろん、子どもの心に残るトラウマは計り知れません。

人間の手にあたるものは、犬にとっては口になります。小型犬でも深い傷をつくることは可能であり、大型犬ともなれば破壊的な力となります。小さな子どもにとっては脅威となるものを犬は持っているのだということを、私たちは忘れてはなりません。

一方では、犬と子どもがよい関係を築けているケースはたくさんあるわけです。多くの人がそうなることを望み、犬にとっても、子どもにとってもトラブルになるようなことは誰も望まないでしょう。

では、犬と子どもとがよい関係になれるには、どんなところに配慮したらいいのでしょうか? 
 

子供が赤ちゃん~乳児である場合

犬と幼児

お互いを少しずつ慣れさせるのと同時に、安全対策も忘れないようにしたい


突然、犬に赤ちゃんを会わせるより、前もって少しずつ慣らしておくのがベストでしょう。

人でも犬でも産まれてくる前の環境は、赤ちゃん・子犬に影響すると言います。ある研究では、50人の妊婦さんに対して出産前に音楽を聴いてもらい、産まれてきた赤ちゃんたちに同じ音楽と別の音楽を聴かせてみたところ、赤ちゃんたちはお腹の中で耳慣れていた音楽を聴くと心拍数が下がる傾向にあったそうです。

ということは、お腹の中で聴いた音を覚えているということなのでしょう。ちなみに、人の赤ちゃんの場合、産まれる3ヶ月くらい前から聴覚が発達し始め、蝸牛のような聴覚器官が成熟するのは産まれる5週間くらい前だとか。

実際、お母さんのお腹の中にいた時から、同居犬の吠え声を聞いて産まれてきた赤ちゃんは、眠っていても犬の吠え声にびっくりして目を覚ますということも少ないようです。

しかし、音楽であっても、たとえばデバイスを直接母親の体にあてて聴くというようなことは聴覚に刺激を与え過ぎてしまうので注意が必要ということですから、胎教の一つとして犬の吠え声に慣らすことを考えるならば、過剰にならない程度に、ごく自然な形で慣らすのがいいということですね。

また、赤ちゃんの出産後は、自宅に戻るまでの間に、赤ちゃんの匂いがついたものを犬に嗅がせるなどして匂いに慣らしておくといいと思います。

犬と赤ちゃんが初めて対面する時には、赤ちゃんを抱いて、安全な範囲でそっと犬に近づけ、その匂いを嗅がせてご挨拶。この時、新生児ゆえに、犬が赤ちゃんに手をかけたり、舐めたりすることはやめさせた方がいいでしょう。犬が赤ちゃんに対して友好的な態度をとっている時には充分に褒めてあげます。

その後、犬と赤ちゃんとの共同生活が始まるわけですが、犬と赤ちゃんから目を離さなければならない時には、犬が勝手に赤ちゃんに近づけないようゲートを設けておくことをお勧めします。
 

子供が幼児である場合

犬と少年

犬と一度仲良くなれれば、子どもにとって一生の友達にもなり、いろいろな気づきや刺激を与えてくれる相手にもなる


やがて赤ちゃんも成長するごとに犬との接触も多くなってきます。気をつけたいのは、犬と子どもとが一緒にいる時には決して目を離さないこと。くれぐれも犬と子どもだけにしませんように。

事故が起こりやすいのは、犬が眠っている時、ごはんやおやつを食べている時、オモチャで遊んでいる時、子どもにしつこくされた時などです。

眠っている間にふいにつつかれたり、食事やオモチャを横取りされたりすれば、犬も反射的に荒い態度に出ることがあるかもしれません。子どもは加減というものを知らないので、犬にとっては痛かったり、しつこ過ぎたりすることもあるかもしれません。犬と子どもとを分けるという意味ではなく、犬にとって安心できる、子どもの手が届かない逃げ場というものも用意してあげましょう。

そして、子どもには、犬に対して乱暴にしてはいけないということや、犬の周りでははしゃぎ過ぎないということ、撫で方などを教えるようにします。子どもは模倣をするもの。親や大人のやり方を見て、きっと真似しながら覚えてくれるはずです。場合によってはぬいぐるみなどを使って教えるのもいいと思います。

少し大きくなったなら、子どもの手から犬におやつを与えさせたり、ブラッシングを手伝わせたり、自分も犬の世話に参加しているのだという喜びを感じさせることで、犬への愛情と理解も深まっていくことでしょう。

一方、犬には子どもに飛びついたり、歯をあてたりしてはいけないということをしっかり教えていきます。子どもにかけるのと同じくらいの愛情を犬にも注ぎ、孤独にさせないようにしたいものです。
 

子供がよその犬と接する時に注意したいこと

犬と少女

興味があればこそ、子どもは知らない犬にも平気で手を出すことが多い。事故防止の観点からも、大人が子どもに犬との接し方を教えてあげたい


子どもは大なり小なり犬に興味をもつものです。よその犬を撫でたいと言うこともあるでしょう、友達の家に犬がいることもあるでしょう。しかし、よその犬は慣れ親しんでいない分、接する際には少々注意も必要です。
  • その犬を触ってみたい場合、「撫でてもいいですか?」と必ず飼い主の許可を得るようにする。(飼い主は犬を落ち着かせ、安全であるように犬をホールドする。他人と接触するのが苦手な犬であるなら、理由を話して断るようにする、無理に接触させない)
  • 犬と向かい合って、いきなり頭を撫でたりしない。撫でる時には犬に対して横に立ち、匂いを軽く嗅がせてから手の甲で背中や胸、顎の下あたりを撫で、大丈夫そうだったら手の平で撫でるようにする。
  • 眠っている犬や食事中の犬には手を出さない。
  • 犬から離れる時、奇声を上げたり、走って遠去かったりはしないように。
  • 犬の背中に乗って遊んだりしない。
  • 子どもだけでよその犬に近づけさせない。親(保護者)が必ず監督するように。              など
犬が不快や恐れを感じ、唸り声をあげそうになる直前には一瞬体が固まることがよくあります。そのような様子が見られた時には、すぐに犬から離れた方がいいしょう。
 

社会化期にある犬が子供と接することの大切さ

また、犬の側から見た場合、子犬の頃から子どもの存在に慣らしておくということも、犬と子どもとの関係を考えた時には大切なポイントになります。

中にはすんなりと子どもを受け入れることができ、オス犬であっても子守犬になれる犬もいますが、特に子どもと接したことのない犬にとっては、初めて身近に子どもと対面した時、どう接していいのかわからず混乱してしまうことがあります。

犬にとっての社会化適期と言われる時期に子どもと接したことのある犬とない犬とでは、成犬になってから子どもと接する時、そのキャパシティーにおいてやはり差が出てくると考えられます。

犬と子供との関係という視点からも、可能な限り、社会化期に子どもと接する機会を設けてあげることも必要でしょう。


前出のように、犬が子どもに心身の傷をつけてしまうケースもあることは残念ながら否めませんが、一方で心身に傷を負ったり、病気があったりする子どもたちのセラピストにもなれるのが犬たちです。

おそらく大人が犬との絆を築く以上のものを子どもたちは築くことができるのではないでしょうか。少しでも多くの犬と子どもたちが、互いによい関係を築けますようにと願ってやみません。未来の人とペットの世界を担っていくのも、子どもたちなのですから。

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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。

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