東山義久undefined大阪府生まれ。99年にミュージカル『Shocking Shopping』でデビュー。『エリザベート』トート・ダンサーで注目を集め、05年『レ・ミゼラブル』にアンジョルラス役で出演。ほか『ALTAR BOYZ』『ニジンスキー』『ちぬの誓い』等に出演の傍ら、自身のグループDIAMOND☆DOGS公演も積極的に行っている。(C) Marino Matsushima

東山義久 大阪府生まれ。99年にミュージカル『Shocking Shopping』でデビュー。『エリザベート』トート・ダンサーで注目を集め、05年『レ・ミゼラブル』にアンジョルラス役で出演。ほか『ALTAR BOYZ』『ニジンスキー』『ちぬの誓い』等に出演の傍ら、自身のグループDIAMOND☆DOGS公演も積極的に行っている。(C) Marino Matsushima

*6ページに『CLUB SEVEN』観劇レポートをUPしました!*

雄々しさと色気を兼ね備えた声を活かし、『レ・ミゼラブル』のアンジョルラス、『ちぬの誓い』の不動丸など、頼りがいのあるリーダー役を魅力的に演じて来た東山義久さん。いっぽうでは切れ味鋭いダンスでダンサーとしても活躍、パフォーマー仲間と立ち上げたグループDIAMOND☆DOGSで精力的に公演を重ねています。

最新作の『CLUB SEVEN 10th stage!』は、彼がパフォーマー活動を始めたごく初期から縁があり、尊敬する玉野和紀さんの作・演出ショー。今年10回目の公演となりますが、東山さんは第二回、第五回、第七回公演に出演、今回が4回目の出演です。彼にとって『CLUB SEVEN』はどんな演目であり、また今回はどんな舞台になりそうでしょうか?

“ありえない”を“アリ!”へと次々変えてゆくエンタテイメント・ショー、『CLUB SEVEN』

――東山さんは04年、第二回公演から『CLUB SEVEN』に出演されています。どういう経緯があったのでしょうか?
『Club Seven 10th Stage!』

『Club Seven 10th Stage!』

「ある舞台を観に行ったとき、出演していた知人の楽屋に挨拶に行ったら、“東山君じゃないか”と急に呼び止められたんです。“誰だこの人?”と思ったのが、玉野和紀さんでした(笑)。玉野さんはそれ以前に僕の出ていた舞台を観て、(西村)直人さん、(吉野)圭吾さん、それに僕とショーをやりたいと思って下さっていたようなんです。“今度一緒にやろうよ”と言って下さったのがきっかけで、第二回から何回か出演させていただいています」

――例年ですと、『CLUB SEVEN』は1幕では出演者がかわるがわる歌やダンスを交えながら時におかしく、時に真面目なシーンを展開し、2幕はミニ・ミュージカルと、100曲近いナンバーをみんなで歌いつないでゆく、怒涛の「50音順ヒットメドレー」…という大まかな枠組みですね。

「はい。1幕は、玉野さんは“スケッチ”と呼んでいらっしゃいますが、子供の格好をしてタップを踊ったりとか、各シーンで面白いことをやっていますね。2幕はミニ・ミュージカルで始まりますが、これまでに僕が出た時は踊りが主体のミュージカルになっていたことが多いです。ただ、今回は現時点ではまだ台本をいただいていないのですが、もう少し歌やお芝居が入ってくるように聞いています」

――前回の出演舞台(11年の第四回公演)を拝見しましたが、東日本大震災の翌月の公演、感慨深さもひとしおだったのではないでしょうか。

「そうですね。ちょうど日比谷の稽古場で、振りを稽古しているさなかに地震があって、その後は日本中が喪中のように、悲しみに包まれてしまいました。そんな中で、玉野さんは“こういう時だからこそ、笑いが大切だ”とおっしゃって、僕らも観に来て下さる方がほんのいっときでも楽しんでいただけたら、と思ってやらせていただきました。ライブステージはテレビと違って、お客様が足を運んで下さらないと成立しないエンタテインメントであることを痛感したりと、いろいろなことを考えた公演でもありましたね」

――毎回、様々なアイディアが飛び出しますが、すべて玉野さんによるものでしょうか?

「玉野さんは『CLUB SEVEN』をライフワークとおっしゃっていて、いつもネタ帳を持ち歩いては面白いと思ったことを書き溜めていらっしゃるらしいです。その中から、これをこのメンバーでやってみたら面白いんじゃないかというのを稽古場で提示されます。もちろん振付も玉野さんがなさるのですが、ステージングなどは僕らに自由にさせてくださって、細かいところを“ここはこうしたら”“それ、面白いから採用!”と決めて下さる。だから一緒に作っている部分もありますね」

――例えば第七回公演では、東山さん演じるマイケル・ジャクソンの“空耳アワー”(日本語のように聞こえる洋楽の部分を、映像をつけながら披露する、テレビ番組『タモリ倶楽部』の人気コーナー)的な場面がありました。あのネタだと、まずは東山さんが“マイケルになりきって踊る”というテーマが提示されるわけですね。
『Club Seven 7th』よりundefined写真提供:東宝演劇部

『Club Seven 7th』より 写真提供:東宝演劇部

「そうですね。マイケルのダンスと、彼の歌の特定の部分が日本語だとこう聞こえるというのを組み合わせるネタがあって、それを義久がやるんだよと言われたんですが、最初は“できないです”と言ってしまったんですね。もちろんマイケル・ジャクソンは知っているし好きではあるけれど、彼の振りは全部覚えているほどのめりこむような大ファンというほどではなかったので。

でも“素顔の、飲み会的なノリでいいんだから”とおっしゃっていただいて(笑)、思いっきりやらしていただきました。“飲み会”というと誤解されるかもしれないけれど、つまりはふだん僕らが舞台の上でやらないようなこと、考えもつかないようなことをやってみる、ということなんですよね。玉野さんからはその都度“義久はこんなことをやると面白いよ、似合うよ”という提案をしてくださるので、新しい自分を発見できてとても楽しいです」

*次頁では東山さんにとっての玉野和紀さん、そして今回の公演の抱負を伺います!


尊敬する玉野さん、そして仲間たちとともに“原点回帰”のショーを作りたい

『Club Seven 7th』よりundefined写真提供:東宝演劇部

『Club Seven 7th』より 写真提供:東宝演劇部

――これまでの公演で演じた中で、特に印象に残っているネタは?

「マイケルもそうですし、あと、大声で全力の芝居をする“全力家族”というのをやったんですけど、それもお客さんが大笑いしてくれましたね。あとは第七回公演の2幕の頭で『妖怪』という、ロミオ&ジュリエット風の内容のミニ・ミュージカルをやったんですが、20分ぐらいの間、踊りだけで表現する役だったんです。言葉なしでどこまで、動きと表情とダンスで玉野さんの意図を僕が表現できるか、は大きな挑戦でした」

――1幕2幕とも圧倒的なボリュームで、それが息つく間もなく展開してゆきますが、途中で振付を失念されたりということがないのも凄いですね。

「1か月間稽古しますから、覚えますよ(笑)。それにこのカンパニーは厳密で厳しいんです。少しでも立ち位置が違ったり遅れたりすると、すぐ玉野さんやスタッフの方に指摘されます。アドリブはほとんどやっていませんが、演出でワンシーンだけ、意図的にメンバーに無茶振りをするコーナーはありましたね。監督役の玉野さんが、突然“これを動物で表現しなさい”と言って、指名された相葉裕樹君や佐々木喜英君が慌てふためいていました(笑)」

――今回のキャストは9人。玉野さん、東山さんのほか西村直人さん、中河内雅貴さん、相葉裕樹さん、佐々木喜英さん、大山真志さんに加えて女性陣が白羽ゆりさんと蒼乃夕妃さん。皆さん、コメディ・センスのある方々ですね。

「玉野さんもそういうところでキャスティングしたいとおっしゃっています。いわゆる“出来る人”より、エネルギーのある人と一緒にやりたい、と。今回は蒼乃さん以外はご一緒したことのある方々で、気心も知れています。玉野さんや、玉野さんを10年以上支え続けている西村さんとの絡みも楽しみだし、蒼乃さんもダンスの名手と聞いているので、一緒に踊るシーンがあるといいですね。白羽さんとも芝居で絡みたいです。あと、この中では中河内君と仲がいいというか、5作品くらい一緒にやっていてプライベートでもよく会っている、弟みたいな存在なんですよ。彼がどれだけ『CLUB SEVEN』をかき回してくれるか、期待しています」
『Club Seven 5th』よりundefined写真提供:東宝演劇部

『Club Seven 5th』より 写真提供:東宝演劇部

――玉野さんはどういうショーを作ろうとされているとお感じになりますか?

「一言でいえば“総合エンタテイメントショー”なのでしょうけれど、3時間弱の中で笑いありスタイリッシュな面もあり、ふつう舞台の上でやろうとも思わないようなことも“お客さんが楽しんでくれるのだったらやろう!”とお見せしてしまう、フルコースのショーだと思います。こういうショーでこれだけ続いている公演といったら、『CLUB SEVEN』以外にはあまりないですよね。玉野さんが脚本を書いたり演出しているなかで“こういうことも、ああいうこともやってみたい”とどんどん湧き出てきたものがおもちゃ箱みたいに詰め込まれて、歌も踊りも芝居も観られるというのが『CLUB SEVEN』の魅力だと思います」

――舞台人として、玉野さんは東山さんにとって大きな存在ですね。

「22歳で、右も左もわからない中でこの世界に入って、『CLUB SEVEN』のみならず、僕が始めた『DIAMOND☆DOGS』というグループの公演や他の舞台でも演出していただいて、とても縁のある方なので、影響を受けてないということは絶対ないですね。ショーを作るときには、かっこいい部分だけではお客さんがしんどくなってしまうので、バカな部分も作らないといけない。けれどずっとバカばかりなら、それは僕たちがやらなくていい。また、この人がいるからこのナンバーをやる、という意識を常に持つ、といったいろいろなことを学ばせていただきました。

『CLUB SEVEN』というライフワークが芯にあって、そのうえで他の仕事もこなしていらっしゃるスタイルにも共感できるし、この前も玉野さんと対談取材を受けたときに“続けることの大変さ”をおっしゃっていたけど、自分もグループをやっているので本当にそう思います。尊敬している方です」

――どんな舞台にしたいと思っていらっしゃいますか?

「今回、10回目を迎えるにあたって、玉野さんは“原点に帰るための『CLUB SEVEN』にしたい”とおっしゃっています。このショーは1回1回、お客様と一緒に作っていける舞台だと思うので、初日から千秋楽まで、皆さんと一緒に新たな『CLUB SEVEN』を作っていけたらと思います。“原点回帰のCLUB SEVEN”を、この9人でお見せしますよ。個人的には、僕は大阪出身なので、大阪魂に火を付けられるようなコーナーがあるといいですね。みんなを笑かせたいです!」

*次頁で東山さんの「これまで」をうかがいます。意外や意外、少年時代はスポーツとは無縁の文化系だったのだそう!



“勝ち負け”ではない、舞台の“自由”に魅せられて

『DIAMOND☆DOGSundefinedFunny』2015年undefined撮影:篠原稔

『DIAMOND☆DOGS Funny』2015年 撮影:篠原稔』

――東山さんは大学時代にダンスに出会ったそうですが、それまではスポーツをされていたのですか?

「高校の時にゴルフはやっていましたが、あとは囲碁将棋部。高校生まで小柄だったこともあって、成績も他の科目では4とか5だったけど、体育だけ3でした。逆立ちもできなかったし。サッカーやりたいとかラグビーやりたいという思いもあったけど、みんながすごくデカかったからとても入っていけなかったですね。一瞬、馬術部にも入ったんですけど、(馬にまたがると)あまりに高くて怖くてやめました(笑)。完全に文化系ですね」

――それが突然ダンスの道へ?!

「大学3年の終わりぐらいで、周りは就職活動をしていたけれど、自分は就職はしたくないと思いまして。ほかの道を考えた時に、“舞台をやってみたい”と思ったんです。3年は好きなことをやってみようと思って親に話したら、長男ということもあって親父には怒られました(笑)。でも母は父に“あなたも好きなことをやってきたでしょ”と言ってくれまして。今では来なくていいと言っても(両親は)観に来ます」

――なぜ舞台だったのでしょうか。

「舞台表現って、いい意味で自由。将棋だったら勝たなくちゃいけないけど、舞台には勝ち負けはないじゃないですか。そういうところに魅力を感じたんです。実際やってみると、それまでチームプレーというものをしたことがなかったので、一人が良くても別の誰かが良くないと舞台は失敗するんだなとわかったし、こんな僕でもこの台詞を読んだらこういうふうに見えるんだとか、こう振付されたらこんなにセクシーに見えるんだとか、そういう発見がすごく面白くて、それまでいろんなことが長続きしなかったのが、これだけは違いました。

今でも、例えば『CLUB SEVEN』のマイケルのネタなどは、自分では絶対思いつかないし、シアタークリエでこんなことやって大丈夫なのかな?と思いましたけど(笑)、やってみたらすごく受けて“ああ、アリなんだ”と。そういうことの連続がこれまでモチベーションになってやってこれたと思います」

――一般的には舞台を志すとまずスクールに通う方が多いと思いますが、東山さんは独学だったのだそうですね。
『ニジンスキー』撮影:山田勉

『ニジンスキー』撮影:山田勉

「自分なりに頑張りました。一度、(吉野)圭吾さん主演の舞台にアンサンブルで出させていただいた時に“お前、いいもの持ってるからバレエやりなよ”と言われて、先生を紹介していただいて1年間だけ週2回通ったんですが、教室でバーを持った瞬間に“ダメだ、自分でやろう”と思って、自宅でジョルジュ・ドンとか、今年引退するシルヴィ・ギエムのビデオをひたすら見て、家で練習していました。ああいうふうに立ち振る舞えたら、踊れたら素敵だなと思える例はたくさん見ていたので、そのために僕なりのルートで行ったような気がします。

僕にとって大きかったのが、人の縁に恵まれたこと。一人で始めたことだったけど、偶然知り合った方々との出会いで、最初にいろんな舞台に出させていただけたんですよ。スクールに行くより、実際に舞台に出ることで叩き込まれて、恥かいて。仲間からへたくそだ、バカだといわれて悔しいと思いながら伸びることが、僕はあったと思います。

出演するということは、すごい振付家の先生の振付を無料で受けられるということ。1か月後に写真もクレジットも出て本番という期限があるから、それまでに何が何でも形にしていく、それがとても自分を追い詰める力になりました。“いつか舞台に出るために”という練習だったら、僕は続かなかったと思います。練習で5回転できても、(そういう役がつかないと)舞台では使えないですから。実は歌のレッスンにもほとんど行ったことはなくて、DIAMOND☆DOGSのボーカルにコツを聞いたりしてやってきました」

*次頁ではターニングポイントとなった『レ・ミゼラブル』アンジョルラス役等について伺います!


“自分らしさ”を追求した『レ・ミゼラブル』アンジョルラス役

『レ・ミゼラブル』2006年undefined写真提供:東宝演劇部

『レ・ミゼラブル』2006年 写真提供:東宝演劇部

――それでも歌が主体の『レ・ミゼラブル』(2005~2009年)でアンジョルラスという大役を勤められました。

「出演が決まったら、僕より周りが驚いていましたね。ミュージカルは『エリザベート』(2000~2001年)にも出ていたけど、その時はトートダンサー役だったので、自分も歌う演目では『レ・ミゼラブル』が初めてでした。

稽古場に行くとみんなマスクしてたり、大声で発声練習をしていて、すべてが“未知との遭遇”でした。ミュージカルをやる方の一つの目標となるような作品で、とても愛されている作品なので、アンサンブルを含めて、みんながジャン・バルジャンの動きも歌詞も知ってるんですよね。複数のキャストがいるので、一人だけやることが違うと、例えば他の役が指差した時にそこにいなかったりするといけないので、違うことをするのが許されない作品でもある。そういう中に入って、決まった動きの中でどういう風に僕らしさを出したからいいか。そうだ、(他のアンジョルラスが)バリケードを10秒でのぼるところを、僕は3秒で上がろうとか、そういうところで自分らしさを表現することを考えてました」

――ディテールで恐縮ですが、最後の壮絶な仰向けポーズ、東山さんは片足で支えていらっしゃる姿がとてもきれいでした。よく考えると、片足であのポーズはきついですよね。

「あのポーズは、例えば(この役の先輩である)岡(幸二郎)さんは下に敷く旗の形までこだわって、美しく死んで行かれたと聞いていて、ここはそういうところなんだと思って考えました。他の皆さんがどうやっていたか分かりませんけど、僕は片足でしたね。バリケードの上り下りじゃないですけど、あそこでいかに死ぬかを考えていて、足も違う方向にまわしたほうがリアルかなとか、僕は体が柔らかかったので、上半身を90度垂れてみましたが、そうすると“照明が(顔に)当たらないので、もう少し起こしてもらえますか”と言われたり(笑)。

目を見開いたまま死んでいく人もいらっしゃったらしいんですよ。目をあけていることでアンジョルラスたち、学生の意志の強さを表現していると聞いて、それもアリだな、と一度稽古場でチャレンジしたんですけど…、僕はだめでしたね、あまりにもひどいドライアイで(笑)。

歌でははじめ、皆さんをひやひやさせることもあったけど、結果的に4,5年にわたって150回くらいアンジョルラスをやらせていただいたことは、本当に僕の力になりました。それまで、ダンス主体に活動していこうと思ってたけど、いやいや、ミュージカルって凄い世界だと思いました。今でもライブをやると『レ・ミゼラブル』の曲を歌ったりしますね。いろいろ引き出しを増やさせてもらい、自分の容量が大きくなったし、“こういうこともやったらいいんじゃないかな”と考えが広がって、今の舞台で生きていると思います」
『ちぬの誓い』撮影:吉原朱美

『ちぬの誓い』撮影:吉原朱美

――昨年のミュージカル『ちぬの誓い』主人公、不動丸役も印象的でした。東山さん、“和”の世界、合いますね。

「僕、嫌いじゃないですよ。剣を持つとかっこいいなと思ったり。TSミュージカルファンデーションは『眠れぬ雪獅子』という作品で主演させていただいてから3年ぶりだったのですが、あれこそ体力消耗型で、とんでもなく大変でしたね(笑)。謝(珠栄)先生の舞台は主役が出ずっぱりだし、僕はダンス力が魅力だと思ってくださっているので、何かあると“そこ、飛んで”と言われたりして、玉野さんもそうですが、こちらの限界のちょっと上を狙ってきます(笑)。

『ちぬ』では謝先生が“あんたもしっかり芝居できるようにならんとあかんからな、鍛えてやるわ”と言ってくださって、最後に盲目になって絶叫するシーンがあるんですが、そこだけ抜き稽古で繰り返しやるんですよ。かっこよくと思ってたけど、目が見えなくなっても地を這ってでも生き抜く主人公ということで、“鼻水が出てもいい、はいつくばってでもやれ”と言われて、ぼろぼろになりながら演じていました」
『ちぬの誓い』撮影:吉原朱美

『ちぬの誓い』撮影:吉原朱美

*次頁で以降の代表作、そして今後のビジョンについてお話いただきました。


役柄も髪型も“束ねる”ことが多い所以

――昨年は『ニジンスキー』の再演もありました。
『ニジンスキー』撮影:山田勉

『ニジンスキー』撮影:山田勉

「ロシアの伝説のバレエダンサーの物語を荻田浩一さんが僕のために書き下ろし、演出してくださった作品です。実在した人物の役でしたが、荻田さんは僕のいいところも悪いところもよくご存知の方で、ニジンスキーというものを借りて僕という人間を表現させていただいたと思います。僕の大先輩である岡さんと安寿(ミラ)さんが共演してくださって、ダンスから始めた僕のキャリアの集大成ができたし、表現し切れたかなと思います。今までやってきてよかったな、間違ってないんだと自信が持てた舞台です」

――ご自身のグループ、DIAMOND☆DOGSでも活躍されていますが、そもそもどんな意図で立ち上げられたのですか?

「『エリザベート』で初めて帝国劇場に立たせていただいた時に、お客様たちのものすごい熱気を感じて、刺激を受けたんですね。ダンスの公演も“うまい”だけじゃなくて、お客様たちに“観ていただける”舞台を作りたい、ダンスもボーカルもできる、そんなエンタテインメントのグループを作りたいと思ったんです」

――DIAMOND☆DOGSでもミュージカルに出演されるときにも、リーダー的な役が多いですよね。
『ファウストオデッセイア』2014年undefined撮影:平賀正明

『ファウストオデッセイア』2014年 撮影:平賀正明

「そうなんですよ、どこのカンパニーに行っても翌日には“リーダー”と呼ばれるんですよね。なんででしょうか(笑)。ただ、僕、面倒くさがりなので、ぐずぐずしてるんだったらこうしようよ、と言う方ですね。ひっぱろうというようなおこがましいことは思ってないけど、物事を円滑に進めるために意見は言うほうかもしれないですね」

――ひっつめのヘアスタイルは昔からですか?
『宝塚BOYS』写真提供:東宝演劇部

『宝塚BOYS』写真提供:東宝演劇部

「短いこともありましたよ。『宝塚BOYS』では短かったし、色も真っ黒でした。ただ、長髪のほうが、ほどけば妖艶な感じになるし、結べばワイルドになったりしていろんな表現ができるんですよ。『サロメ』とか、中性的な役もやりやすいですし。短いと一色にしかならないので、あまり切らないですね。でも、本当は短髪のほうが似合うんです、たぶん。切りたいんですけどね(笑)」

――武士道精神に憧れていらっしゃるのかと思いました(笑)。

「そういう理由ではないです(笑)。でも結んでるから和装が似合うことはあるかもしれないですね」

――今後のビジョンとしては、どんなものを抱いていらっしゃいますか?

「DIAMOND☆DOGSを続けつつ、個人的には活動の幅を広げていきたいですね。例えば大河ドラマに出演したりとか。舞台俳優って“知る人ぞ知る”ということが多いかと思うんですが、舞台って腕がないと続けていけない、本当に大変な世界です。その舞台を続けていくためにも、舞台以外でも活動することで、“あの人がいるDIAMOND☆DOGSね”と舞台に来ていただくようになれれば、可能性も広がってゆくし、次世代の才能のある人たちを紹介していけるグループになるかもしれない。
『DIAMOND☆DOGSundefinedFunny』2015年undefined撮影:篠原稔

『DIAMOND☆DOGS Funny』2015年 撮影:篠原稔

そういった活動をしつつ、今は『CLUB SEVEN』のように与えていただいた機会を通して、自分がどういうことが出来るのか、(まだ未知の)才能をもっと知りたいし、(その過程を楽しみ、)酔いたいです」

*****
舞台俳優になる道は決して一つではない、と気づかせてくれる東山さんのトーク。穏やかながら率直な語りの中には時折、道無き道を切り拓いてきた人の“凄味”が感じられます。

そんな彼にとって自身のグループ活動と同じくらい大切な舞台『CLUB SEVEN』、今回は10回目を迎えたショーとともに、彼にとっても舞台人として「原点」を見つめなおす機会となるのではないでしょうか。ご自身ならずとも、東山さんのどんな“新たな側面”が引き出されるのか、楽しみでなりません。

*公演情報*
CLUB SEVEN 10th stage!
4月2~20日=シアタークリエ、4月23日=福岡市民会館、4月25~26日=梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、4月27日=愛知県芸術劇場大ホール

*次頁で『CLUB SEVEN』観劇レポートを掲載しました!*


『CLUB SEVEN』観劇レポート
エンタテインメントの“原点”に思いを致させる
“限界を超えた”役者たちのショーマンシップ

『CLUB SEVEN 10th』写真提供:東宝演劇部

『CLUB SEVEN 10th Stage!』写真提供:東宝演劇部

もともと7回の開催を目指しつつ、好評によりその後も回を重ねてきている本作。10回目の今回は“原点回帰”がテーマということで、第8弾、9弾は男性のみでしたが今回は女性キャストも2名参加、常連もいれば“初参戦組”もという9名の布陣で、ほどよい緊張感のなか開幕しました。
『CLUB SEVEN 10th』写真提供:東宝演劇部

『CLUB SEVEN 10th Stage!』写真提供:東宝演劇部

シャープでマニッシュなオープニング・ナンバーに続くのは『CLUB SEVEN』恒例のスキット集。アイドルのオーディションやメディアの取材を受けるゾンビたちなど、実力のあるパフォーマーが真剣に演じるからこそ面白いコミカル・シーンが、次々登場します。
『Club Seven 10th Stage!』写真提供:東宝演劇部

『Club Seven 10th Stage!』写真提供:東宝演劇部

思いっきり弾けた芝居がスタンダードの『CLUB SEVEN』なので、ふだんは“イケメン”“二枚目”で通っているメンバーの女装や汚れ役はもはや“当たり前”。しかしその中でも“謎の金ぴかツタンカーメン”や“掃除のおばちゃん”役を、確信犯的(?)な強烈さで演じる東山義久さん、さすが若手のリーダー格です。
『Club Seven 10th Stage!』写真提供:東宝演劇部

『Club Seven 10th Stage!』写真提供:東宝演劇部

そうかと思えばドラマティック・ダンス『悪魔の赤い靴』では、ヒロインを翻弄する“悪魔”役できめ細やかな美意識が光り、ダンサーとしての魅力も発揮。このシーンではヒロイン役、蒼乃夕妃さんの伸びやかなダンスも見どころです。1幕最後は9人の、“仲間たち”への思いのこもった、あたたかくも爽やかなメッセージソングで締めくくり。
『Club Seven 10th Stage!』写真提供:東宝演劇部

『Club Seven 10th Stage!』写真提供:東宝演劇部

2幕は恒例の「ミニ・ミュージカル」から。今回は“人間のアンドロイド化が進められる2070年”を舞台に、知能を持ったアンドロイドと人間たちの葛藤がスリリングに描かれます。進化したアンドロイドは自我を持ち始めますが、中河内雅貴さん演じる一人は人類に反旗を翻し、それを阻止しようとする東山さん扮するアンドロイドは、自身の創造主である女性博士に恋をしてしまう。人間と“人間でないもの”の境界線はどこにあるのか、人間らしさとは何なのか……。
『Club Seven 10th Stage!』写真提供:東宝演劇部

『Club Seven 10th Stage!』写真提供:東宝演劇部

理性と感情の間で揺れる女性博士役の白羽ゆりさん、走る前後のちょっとした“溜め”のポーズや動きでアンドロイドらしさを巧みに表現する東山さんはじめ、メンバー全員がキャラクターを生き生きと演じ、密度の濃い短編に仕上がっています。
『Club Seven 10th Stage!』写真提供:東宝演劇部

『Club Seven 10th Stage!』写真提供:東宝演劇部

続いては玉野さんが幕前にあらわれ、第10回公演に寄せる思い、「これからもメッセージ性のあるオリジナルミュージカルを作って行きたい」という決意表明を語った後、出演者を一人ひとり舞台に呼び込み、その日の“お題”に沿って質問を投げかけます。(この日のテーマは“自分を動物に例えると?”で、一番“おお~”の声が高かったのが中河内さんの「興奮したチワワ」…。蒼乃さんの「踊るとクロヒョウ!」発言はその後、イジリのネタと化していました)。
『Club Seven 10th Stage!』写真提供:東宝演劇部

『Club Seven 10th Stage!』写真提供:東宝演劇部

各メンバーの持ち味もキャラクターも一通りわかったところで、これも『CLUB SEVEN』のお約束、お待ちかねの「50音メドレー」がスタート!“あ”から“ん”まで、該当する音で始まるミュージカルナンバー、ヒット曲、CMソング等々が、最近の流行語なども交えてノンストップ、怒涛の如く展開します。
『Club Seven 10th Stage!』写真提供:東宝演劇部

『Club Seven 10th Stage!』写真提供:東宝演劇部

女性も動物もなんでもござれ、瞬時の変身で役者としての抜群の柔軟性を見せる西村直人さん、時折生じる玉野さんからの“無茶振り”にも必死に応じる姿が頼もしい中河内さん、相葉裕樹さん、佐々木喜英さん、開幕間もないのにこのテンションで大丈夫?というほどの全力ぶりが清々しい、初出演の大山真志さん。出演者たちのあんな姿、こんな姿に大いに笑わされた後に、キャスト全員の“んー”というハミングでたどり着くのは、“あの名作ミュージカル”のナンバー。人間に与えられた時間の短さと愛をうたう歌詞が、エキサイティングなひと時の後にすっと聴く者の心に染み入ります。
『Club Seven 10th Stage!』写真提供:東宝演劇部

『Club Seven 10th Stage!』写真提供:東宝演劇部

メドレー内にはやはり本作の常連で、今回は出演していない吉野圭吾さんへのオマージュ・ソングも登場していた今回の舞台。構成・脚本・振付・演出のどの面にも、それらを手掛けた玉野和紀さんの人間愛が溢れ、口周りの筋肉がほぐれるばかりでなく、あたたかさに包まれて帰途につける作品でもあります。エンタテインメントの原点に思いを致させ、出演者がその後は“身内”であるかのように親しみを感じてしまう舞台。一度観ればやみつきになる……かもしれません。

(本作ご出演者への過去のインタビューはこちら。大山真志さん


※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。