歴史的圧勝でV6達成した帝京大、その強さの理由とは

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圧倒的な強さで前人未到の連覇を「6」に伸ばした帝京大 (C)JRFU 2015, photo by H.Nagaoka

今シーズンの大学選手権は決勝史上最多得点、最多得点差という記録的な大勝で帝京大学が筑波大学を下し、6連覇を達成しました。下馬評通りの強さを見せつけた形で、1強時代をより強烈に印象づける結果だったと言えるでしょう。

なぜ、帝京大学はこれほど際立つ強さを発揮できたのでしょうか。

多くのラグビー関係者は圧勝の要因として、「選手のリクルーティング」「外国人留学生の存在」「大学のバックアップ」といった要素を挙げますが、本当の理由は別のところにあります。それは、最もきちんとしたシステムが導入されており、ラグビー以外の普段の生活にもしっかりと向き合っているチームである、という点です。だからこれだけ連覇することができ、さらには連覇が今後も続いていくという予測が立てられるのです。


人間的に成長できる集団だからこそ、圧倒的な結果を残せる

私がU20日本代表のヘッドコーチとして代表候補合宿に参加した際も、帝京大学の選手は何をするにしてもしっかりと準備を整え、必ず集合時間より早い時間に集まり、大きな声であいさつするといったことができます。これは、強いチームの典型的な特長です。

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優勝後、胴上げされる岩出雅之監督 (C)JRFU 2015, photo by H.Nagaoka

ひと昔前までは、多くの競技で「プレーはすごいけれどそれ以外は何もできない」といった選手が活躍していましたが、もはやそんな時代は終わりました。科学や組織力が進歩した現在では、人間的にも成長できる集団のほうが、圧倒的に成果を出すことがわかってきたのです。個人として接してみても、ゴールに対する意欲、自己管理の意識などは、他大学に比べ帝京大学の選手たちが一段上という印象を受けます。

ラグビーは激しい身体的接触をともなうスポーツです。体を鍛える、激しく体を張る勇気を持つといったことが重要だからこそ、日々の自己管理やセルフコントロールが重要になり、そこをきちんとやっているチームが勝つ。それを体現しているのが、現在の帝京大学なのです。


足し算型から掛け算型のラグビーに、まったく隙がなかった

また、帝京大学は当然個々の選手も強いのですが、試合中に選手同士が話し合っている表情や雰囲気を見ても、リーダーを中心に非常によくまとまっており、質の高いトークをしていることが垣間見えます。

たとえばミスが起こった時、その選手に対してリーダーがどういう声かけをしているかによって、チーム内の信頼関係が浮かび上がります。そうしたところまで観察しながら試合を見ると、明らかにその見本となっているのが帝京大学であり、強さの理由がわかるはずです。

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決勝でも再三FW、BK一体となった華麗なアタックを披露した。写真はFB森谷圭介 (C)JRFU 2015, photo by H.Nagaoka

具体的なパフォーマンスを見ても、以前はフィジカルを前面に押し出したシンプルな「足し算型」の戦い方でしたが、最近はスピードとスキルも駆使した「掛け算型」、さらには「方程式型」ともいうべきラグビーになっています。見ていてもボールが動くので楽しいですし、プレーに余裕があるので思い切ってチャレンジしている。難しいことでもやってみようという意思が、明確に現れるようになってきたと感じます。

みんながやることを理解し、一人ひとりのチャレンジを認めているからこそ、多くのビッグプレーが生まれるわけです。

一方、これまでの看板だったスクラムやラインアウトといったセットプレーが今年も圧倒的に強かったかというと、そうではありませんでした。実はシーズン中、何度かスクラムを押されたり、ラインアウトを崩されたりすることがあった。しかしたとえセットプレーが崩れても、BKがランプレーでスコアを重ねたり、ディフェンスで相手ボールを奪い返すことで、まるでそれがなかったかのようにカバーしていました。

特定のパートが圧倒的に強かったというより、ゲームや対戦相手によってその都度活躍する選手や圧倒するポイントが変わり、強みと弱みのバランスをとりながら順調に成長していった。その結果、最終的にはまったく隙のないチームになっていました。シーズン当初と選手権終盤のチーム状態を比較して、もっとも成長したのが帝京大学だったと感じます。


見事にピークを合わせた帝京大、余力の差が大きな差に

逆に他のチームは、最初はよかったけれどピーキングがうまくいかず、ターゲットを絞りきれないまま終わる--というケースが多くありました。試合を重ねるごとにケガ人が増え、疲労も蓄積していって、結果として開幕時より弱くなったのでは、と感じるチームも少なくなかった。そこが帝京大学と他校の大きな違いでした。

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2年ぶりの決勝進出を果たした筑波大。シーズン終盤に力を伸ばした (C)JRFU 2015, photo by H.Nagaoka

準優勝の筑波大学や、その筑波大学と準決勝で死闘を演じた東海大学も、シーズン終盤になって力を伸ばしていったチームだと言えます。東海大学はディフェンスを中心に強化してきて、最終的にとても厳しいラグビーをできるようになりました。

筑波大学も終盤になってケガ人が続々と復帰し、ブレイクダウンの激しさとトランジションの早さを武器に勝ち上がった。ただ、大学選手権ではさすがに余力を残しながら戦うことはできず、すべてに全力で臨まなければならなかったため、最後は消耗が激しかったように感じます。

たとえば筑波大学は準決勝で見事な逆転勝ちを収めましたが、1週後の決勝の間でもうひと伸びできたかと考えると、疲れやケガなどもあって若干停滞した印象がありました。東海大学もセカンドステージの最終戦で早稲田大学をほぼ完璧に封じましたが、関東リーグ戦から大学選手権に入る時の伸び率と、選手権セカンドステージから準決勝に上がる時の伸び率を比べると、後者はやや小さかった。

一杯いっぱいで戦っていく中で必死に伸びていったチームと、照準をピークにきっちりと合わせ、余力を残しつつ多くの可能性を探りながら勝ち上がった帝京大学とで、最後に大きな差がついてしまったわけです。


なぜ、伝統校は勝てなくなったのか?

伝統校と呼ばれる中では慶應大学が唯一ベスト4入りを果たしましたが、準決勝では帝京大学に10−53と大敗を喫しました。早稲田大学、明治大学はセカンドステージのリーグ戦を勝ち抜くことすらできなかった。ラグビーが急速に進歩する中で、時代が変わったことを強烈に印象づける結果だったと言えます。

伝統校の難しいところは、「伝統を継承しなければならない」という組織的な使命に縛られることです。昔の慣習や考え方にとらわれていると、今のラグビーでは勝てないばかりか、どんどん弱体化していってしまいます。近年苦しんでいる伝統校はいずれもそんな状況に陥っており、そうした連鎖をどこかで断ち切らなければ、今後も復活するのは難しいでしょう。

早稲田大学の「ゆさぶり」、明治大学の「前へ」、慶應大学の「炎のタックル」などはおなじみですが、なぜそうした伝統のスタイルが生まれたかをひも解いていくと、根本的には意外にシンプルな理由であることがわかります。たとえば以前の早稲田大学は体が小さく、それを克服する方法としてゆさぶりが生まれた。いまはそもそもの「体が小さい」という前提をもっと改善していかなければ、太刀打ちできない時代になっています。


表面的なこだわりを捨て、いまこそ外に目を向けるべき

一番よくないのは、「伝統のスタイルを実行できなかった」という安易な反省の仕方をしてしまうことです。結果が出なくなった今だからこそ、そんな表面的なこだわりはすべて捨てて、そもそもなぜそうした伝統が生まれたのかをしっかりと考えるべきです。

もちろんそれらの伝統校も少しずつ変化はしています。しかし他チームや他国の指導者といった「他者の視点」を大胆に取り入れなければ、いつまでも同じ反省を繰り返す事態に陥りかねません。伝統校は伝統に立ち返るのではなく、いまこそ外に目を向けるべきだと思います。
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