ケンタウロス大戦争

ケンタウロス大戦争の図

にゃんこ大戦争ならぬ、ケンタウロス大戦争

ギリシャ神話に、ケンタウロスっていますよね、上半身が人間で、下半身が馬の生き物。最近、スマートフォンなどのモバイル端末向けのゲームをしていると、このケンタウロスを思い浮かべることがあります。

ガイドの頭の中にある、とりとめもないイメージの話で大変恐縮なんですが、色んなゲームがケンタウロスに見えるんですよ。ケンタウロスというか、正確には、上半身と下半身が別々の生き物。上半身は色々あるんですね、人間だったり、カエルだったり、カニだったり、でも下半身はみんな馬なんですよ。ヒヒーン。

で、これが大戦争を繰り広げているんです。上半身は色々ですから、色んな戦い方ができるんです、人間は剣を持って戦うけども、カニは堅い甲羅でガード、そしてハサミでちょっきん、カエルは長い舌でちょっと離れた間合いから攻撃、とか。

でも、1つ残念なことがあります。それは、みんな結局下半身は馬だということです。だから、基本は平らで広いところを見つけて、敵にむかってつっこんでいくしかありません。木の上に身を潜めての奇襲とか、海を渡って背後からとかそういうことができないんですよ。これ、下半身も変わったら、すごく面白くなりそうなのになあ、と思うんです。

えー、この時点で何かピンときた方もいらっしゃるでしょうか、何言ってんだかさっぱりという方の方が多いでしょうか。すいません、変な話で。でもこの変な話、少し続けさせてください。

パズドラの成功と色んな上半身のケンタウロス

パズドラの図

パズドラはスマートフォンに大きな流れを作りました

ガイドは、最近人気のモバイル端末向けゲームが、ケンタウロスのように見えることが良くあります。上半身と下半身が別々に見えるんですね。もちろん全部のゲームがというわけではないのですが、とても目立ちます。そして、上半身は色々ですが、下半身はいつも馬なのです。

ケンタウロスの代表は、ガンホー・オンライン・エンターテイメントが配信している「パズル&ドラゴンズ(パズドラ)」です。パズドラは、3,200万以上のダウンロードを誇る、モバイル端末向けゲームのトップを走るタイトルです。それまで携帯電話向けのソーシャルゲームで定番化していたカードバトルの仕組みをベースに、スマートフォンで遊ぶのに最適化されたパズルを載せた形で、携帯電話からスマートフォンへの移行を象徴するようなタイトルとなりました。

そのパズドラが大ヒットすると、パズドラのパズル部分を変えたようなゲームがたくさん登場します。このパズル部分が、ケンタウロスの上半身です。コロプラの「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」は上半身がクイズに、セガの「チェインクロニクル」ならラインディフェンス、ミクシィの「モンスターストライク(以下モンスト)」は「ひっぱりハンティング」と呼ばれる、キャラクターをひっぱって飛ばし、敵にあてて倒す独特のアクションが人気になりました。ちょっと変わったところでは、TOYDEAの「ドラゴンファング ~竜者ドランと時の迷宮~」は上半身がローグライクになっています。スパイクチュンソフトの「不思議のダンジョンシリーズ」みたい、というと分かりやすいでしょうか。

しかし、これらのゲーム、内容のうち半分は全く別のゲームなんですが、もう半分はそっくりなんですね。それが、ケンタウロスの脚です。細かく言えば色々違いもあるんですけども、基本的にはカードバトルの課金と育成の仕組みです。厳密には、どのゲームも集めるのは「カード」というわけではないんですが、この記事では便宜上「カード」という言葉を使わせていただきます。

クエストの途中で手に入れるか、ガチャと呼ばれる抽選クジで、仲間のカードを集め、カード同士を合成することで育てていって、それらのカードを装着することで攻撃力や体力、属性なんかが決まっていく、という仕組みです。場合によっては、この下半身部分はパズドラのクローンとでも言いたくなるぐらい、そっくりなものもあります。

パズルにクイズに、ディフェンスゲームにローグライクなどなど、色んなゲームが登場するのはとても嬉しいことです。一方で気になるのは、下半身の方です。

上半身の戦術と下半身の戦略

モンストの図

戦術はゲームごとに様々なんです

多くのゲームは、パズルや、クイズや、コマンドバトルや、ミニゲーム的なものをこなすことで、敵にダメージを与え、戦闘に勝利することを目的としています。この戦闘に勝利する為の方法論を、大きく戦術と、戦略という2つの観点から考えると、ケンタウロスの上半身は戦術であり、下半身は戦略であることに気が付きます。

戦術というのは、敵と具体的にどう戦うか、という話です。ゲームで言えば、火の属性の奴には水属性の攻撃をぶつけて、3ターンに1回高火力の技がくるから同じサイクルで回復して、みたいなことですね。この部分は上半身で、それぞれのゲームによって当然違いがでてきます。

モンストでは、敵や画面端にぶつかりながら攻撃し、味方に当たれば友情コンボという特殊な攻撃が発動します。また、敵にぶつかって跳ね返るキャラクターもいれば、貫通するキャラクターもいて、両者では動きが変わってきます。その為、敵や味方の位置関係というのが非常に重要になってくるわけです。こういう話は、ゲームによって様々なんですね。

一方、戦略とはどういうことか。これは戦術のもっと手前、計略、策略、実際に戦う前に練り上げるプランのようなものです。戦術は互いの力量が拮抗している、あるいは僅差で負けているような時には非常に重要ですが、そこまでどうやって持っていくのか、あるいは圧倒する状況を作るのか、というのが戦略です。

しかしこの部分というのは今人気のゲームをあたると、非常に似ているものが多いんですね。言ってしまえば、カードの収集と育成に集約されます。ゲームを始めたら、まず最初に特典で有料ガチャを無料でやれるので、そこでいいカードが揃うまで待つリセットマラソン。曜日ごとに特別なクエストがあって、お金や経験値、あるいは合成に必要なカードが手に入りやすかったりするので、できるだけ逃さないように。カードを育成する際には、それが最終的にどのくらい強くなるのかをチェックしてから、などなど。ここら辺の話がそのまま、まるっと当てはまるゲームがとてもたくさんあります。

つまり、上半身は色々なんですが、足は結局馬なので、戦略的にできることはとても似ています。

似ているのは、脚で稼いでいるから

ゲームを遊ぶユーザーの図

下半身は、ユーザーに課金してもらう為の施策と密接に関わっています

なんでこんなに似ているのか。似ているというよりは、恐らくは似せている、といった方がいいでしょう。ケンタウロスの脚の部分は、課金部分にとても深く関わっています。ですから、ユーザーが課金する機会を持つように、誘導しています。

上記のリセットマラソンはいい例で、多くのゲームは最初に本来有料のガチャを無料で試してもらうことで、有料ガチャではいいカードが出るということを分かりやすく体験してもらいます。一方、お金を払いたくないユーザーは、この部分だけを何度もリセットして繰り返し、よりいいカードを手に入れようとするので、リセットマラソンという行為が生まれます。

開発者が、「最初の部分を繰り返すリセットマラソンってどうなんだろうか、それって面白いの?」という疑問を投げかける時には、面白いかどうか以前に、有料のガチャを試してもらう機会を最初に設定するという、課金誘導施策を取りやめるリスクについて、あるいはその代替案について考える必要があります。

結果、課金部分で色々と新しいことをしてリスクを負うよりも、その部分は馴染のある仕組みを投入しつつ、その上に何を乗せるかで独自性を出していく、ということで上半身だけが色々な姿のケンタウロスがたくさん生まれる、という状況になっています。

おそらくこの状況は、もうしばらく続くのではないかと思います。しかしいずれはて、限界がくるでしょう

ケンタウロスの脚にもいつか限界が

クラッシュ・オブ・クランの図

例えば、「クラッシュ・オブ・クラン」のような海外発のゲームが、違う流れをもたらすこともあるかもしれません。(イラスト 橋本モチチ)

かくして、スマートフォンなどでゲームを遊んでいる時に、もわもわもわっと、色んな上半身のケンタウロスがガイドの頭には登場して、ワーワー戦うんですが、「脚がなあ、脚が結局みんな馬なんだよなあ」などと考えてしまうわけです。上半身がどんどん変われば目新しさもあるわけですが、どうしても大局的なところで似てきてしまいます。

娯楽というのは、飽きられたら負けですから、それがどんなに優秀なフォーマットであったとしても、同じことはいつまでも続けられません。おそらくしばらくは、下半身はマイナーチェンジ程度で収めつつ、上半身で独自性を出していくというゲームが続々登場していくとは思います。しかし、そういうゲームがうまくいけばうまくいくほど、消耗は進んでいきます。

そしてその時こそ、ケンタウロスの馬の脚が、大きな変化を遂げ、戦略的にも新規性の高いゲームが登場していくかもしれません。もっとも、モバイル端末向けのゲームというのはとにかく数が多いですから、ケンタウロスのようなゲームが目立って見えてはいても、実際には多種多様なゲームがひしめき合っています。ケンタウロス達が大乱闘を繰り広げるさなか、伏兵がひょこっと次の流れを掴んでしまう、なんてこともあるかもしれません。

上半身が色々出てきてる中で、下半身まで変われば、それはもうケンタウロスでもなんでもない、新種の生物ですね。そういう新しい生き物が脚光を浴びると、ゲームはどんどん面白くなるんじゃないでしょうか。

多くの場合、新しいゲームの情報は上半身部分がピックアップされていくと思うのですが、もし、下半身部分に大きなアイデアを秘めたゲームが登場したら、それは要チェックかもしれませんね。

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【関連サイト】
田下広夢の記事にはできない。(ゲーム業界ニュースガイド個人運営サイト)

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