数々の名馬が引退の舞台に選んだ
「有馬記念」

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2013年の有馬記念で6つ目のG1タイトルを手にしたオルフェーヴル(写真 JRA)

数ある日本のレースにおいて、「ドリームレース」と呼ばれるのが、G1有馬記念(芝2500m/中山競馬場)。出走馬選出のためのファン投票が行なわれる、オールスター戦です。

有馬記念の特色はそれだけではありません。12月末に行なわれるということで、競馬界を引っ張ったスターホースが「引退戦」として選ぶのもこのレースの特徴。寒さ厳しい中で行なわれるこのG1レースは、ほかとは違った独特の雰囲気に包まれます。

そんな有馬記念では、数々のドラマが生まれてきました。それまで不振にあえいでいた“アイドルホース”のオグリキャップが、引退戦で奇跡の復活を遂げた1990年の有馬記念は、この季節がくるたびに語られる名ドラマです。

反対に、引退戦の難しさを感じるレースでもあります。G1レースを6勝し、どんな展開でも優勝争いに絡んできた牝馬のブエナビスタは、引退戦となった2011年の有馬記念で7着と大敗を喫してしまいました。レース後の引退式では、ブエナビスタの目の下に涙のようなものがあり、まるで彼女が泣いているかのような姿が話題になりました。

そしてそのときに勝者となったのが、のちに世界最高峰とされる凱旋門賞(芝2400m/フランス・ロンシャン競馬場)で2年連続2着するオルフェーヴル。このような「世代交代」のシーンが訪れるのも、有馬記念の特徴です。

名ライバルが引退に華を添えた
オルフェーヴルのラストラン

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オルフェーヴルは、引退戦で驚異的な走りを見せて圧勝(写真 JRA)

そのオルフェーヴルが、引退戦として臨んだ2013年の有馬記念。ここでも一つ、名ドラマが生まれました。

2年前、3歳馬が世代の王者を決める「三冠レース」を圧倒的な強さで総なめにしたオルフェーヴル。その三冠レースのうち、二つのレースでオルフェーヴルの2着に敗れていた馬がいました。同世代のウインバリアシオンです。

「オルフェーヴルさえいなければ……」という声も聞こえるほど、ウインバリアシオンも強かったのですが、三冠レースではライバルにかなわず無冠。そしてその後は、屈腱炎(くっけんえん)という大けがにより、約1年半もの長期休養に入ってしまいました。

その間に、オルフェーヴルは海を渡り凱旋門賞で2度の2着。そして、5歳となった2013年の有馬記念で引退を迎えるのですが、ここに間に合わせるように復帰してきたのがウインバリアシオンでした。

三冠レースでしのぎを削った2頭の最後の戦い。その結末は、まさに「様式美」と言えるようなドラマチックなものでした。

2013有馬記念のレース映像(オルフェーヴルは赤帽の6番、ウインバリアシオンは黒帽の4番)

最後の最後に、これでもかというほどの圧勝を決めたオルフェーヴル。この馬の偉大さを知らしめたなか、大きく離されたとはいえ、2着にウインバリアシオンがいたのです。

1着オルフェーヴル、2着ウインバリアシオン。2年前、三冠レースで見ていたこのシーンが、最後によみがえったのでした。ケガを乗り越え、盟友の引退に華を添えたウインバリアシオン。そして、ライバルの復帰に全力の走りで応えたオルフェーヴル。何だかそこには、2頭の特殊な関係性があるように思えて仕方ありませんでした。

数々のドラマが生まれてきた有馬記念。唯一無二のレースで、ぜひとも熱くなってもらいたいと思います。