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ラーニングピラミッドとは?学習定着率アップの鍵!

学習定着率が上がる「ラーニングピラミッド」という考え方を紹介します。勉強といえば、授業を聞く、教科書を読むなどのインプットが大切と思われていますが、定着率の高い学習には、「やってみる(問題を解く)」「説明する」「教え合う」といったアウトプットが必要です。「主体的・対話的で深い学び」や「アクティブ・ラーニング」にもつながる効果的な学びとは?

伊藤 敏雄

執筆者:伊藤 敏雄

学習・受験ガイド

講義形式の授業を受けることだけが勉強だと思っていませんか? 実は、その多くは学習効果が低いとガイドは考えています。

学習の仕方には、その効果の度合いによっていくつかに分類されているのです。今回は、自身の塾講師の経験も踏まえ、「ラーニングピラミッド」という仮想モデルを用いながら、このことについて解説していきます。最も学習効果が高い学習の仕方とは?

【目次】  

ラーニングピラミッドの原型「経験の円錐」とは?

ラーニングピラミッドの前に、その原型といわれているDale, Edgar(1946)の「The “Cone of Experience”(経験の円錐)」を見てみましょう。
ラーニングピラミッドの元となったとされる経験の円錐(The Cone of Experience)

ラーニングピラミッドの元となったとされる経験の円錐(The Cone of Experience)

※(日本語訳はガイドによる)

■引用元
Dale, Edgar. (1946) The “Cone of Experience”, Audio-Visual Methods in Teaching. NY: Dryden Press.

これは、人の経験や学習の過程を分類したもので、まず体験して、次に自ら参加し観察し、最終的に言葉やビジュアルで表すことができるようになるということを表しています。具体的な体験を経ることで物事を抽象的に捉えることができるようになると言い換えてもいいでしょう。

この「経験の円錐」はその後、多くの解釈が加えられ、「ラーニングピラミッド*」として、およそ下の図のように援用されています。そこへ、ガイド自身の塾講師の経験も踏まえて、学習の定着率のイメージも図にしてみました。
勉強の仕方をランク付けした「ラーニングピラミッド」

勉強の仕方をランク付けした「ラーニングピラミッド」

*ラーニングピラミッドはあくまでも仮定されたモデルであり、数値が併記されているものもありますが、それは科学的に裏付けられたものではありません。

ガイドの解釈では、ラーニングピラミッドは、学習は「講義を受ける」から「教える」までの7つの段階に分けられ、下段に行くほどその定着率(効果)が高いと考えます。
 

学習定着率が上がる「ラーニングピラミッド」という考え方

まず、1段目:「講義を受ける」とは、教師や講師があるテーマについて話しているのを聞いて学ぶことです。しかし、これは学習の定着率は最も低いでしょう。

次いで、2段目:テキストなどを「読む」、3段目:映像などを「視聴する」、4段目:誰かに「実演してもらう」と、順に定着率は上がっていくと考えています。

「講義を聴くと眠くなる」、そんな体験をした人は少なくないでしょう。教師や講師がただ一方的に話す講義形式の授業は、これまで一人が多数に教える時に効果的と思われてきた方法です。それで、学校などで広く行われてきた授業形態なのですが、実は学習効率の観点からはあまり効果は期待できないのです。

もちろん、講義形式の授業で学ぶこと自体を否定しているわけではありません。ただ講義を受けるだけでは不十分なので、様々な方法で学びを深める必要があるのです。
 

学習効率はちょっとした工夫をするだけでアップする

講義が上手な教師や講師は、ただ話すだけでなく、学習者に何かの文章を読ませたり、映像を取り入れたり、実演して見せたりといった工夫をしているものです。ラーニングピラミッドによると、「講義を受ける」よりも、「読む」「視聴する」「実演してもらう」の方が学習の定着率は高いとされています。

この定着率は、実験などによって確かめられた数字ではありませんが、おおよそ的を射ていると考えられます。講義が上手な人は、経験的にそういったことを理解していて、取り入れているのでしょう。

ですから、学習者が気をつけるとしたら、講義を受けてただ話を聞くだけではなく、「資料やスライドをよく見る(読む)」、「具体的にどうすればよいのか質問して実演してもらう」ことを意識することです。こうした工夫をすることで、学びがより深まると考えられます。
 

効果的な学びは、受け身の学びから主体的・対話的な学びへ

さらに学びを深めるには、5段目:グループで「議論する」、6段目:実際にやってみて「練習する」、7段目:誰かに「教える」という方法を取り入れてみましょう。これらは、学習者が主体的に取り組むという点で、先の4つとは異なります。

満足度の高い研修や講座では、参加者が主体的に取り組めるような活動を取り入れていることが多いようです。その理由は、活動を入れることでより学びが深まるからです。

「習うより慣れよ」という言葉があるように、これは誰かに教えてもらうという受け身の姿勢よりも、実際にやってみたり練習したりして身につけるという主体性をもって取り組むことが重要であることを示しているのです。

誰かに「教える」ことが、最も学習効果が高いと考えられるのは、教えることで学んだことを一通り整理することができるからです。もちろん、学んだことを上手に整理しないと人に教えることは出来ませんが、「学ぶ→教える→また学ぶ」という循環が生まれることで、効果的に学ぶことにつながります。

まとめとして、学んだことについてグループで「(誰かと)議論する」、実際に「やってみる(練習する)」、誰かに「教える」など、ひと工夫をすることで学びがより深まると考えられます。

授業を受けた後や、テスト勉強や資格・検定の勉強に、早速、取り入れてみましょう。
 

ラーニングピラミッドが示唆すること、要はアウトプットが重要

アクティブ・ラーニングにつながる「ラーニングピラミッド」。その信憑性が問われる中、結局、重要なのはアウトプットだった。

アクティブ・ラーニングにつながる「ラーニングピラミッド」。その信憑性が問われる中、結局、重要なのはアウトプットだった。

一時期、ラーニングピラミッドがもてはやされた時期がありました。しかし、いつの間にか付与された数値の信憑性が問われるようになり、今、この「ラーニングピラミッド」というモデルをそのまま紹介するには注意が必要です。

とはいえ、受け身の学習より能動的な学習の方が効果的なことは間違いないありません。要は、聞くとか読むといったインプットよりも、話したりやってみたりといったアウトプットの方が学習効果が高いことを伝えたかったのでしょう。

最近では、「学びを結果に変えるアウトプット大全」がベストセラーになるなど、アウトプットの重要性が学習において最大の関心事です。アウトプットを意識した学びを心がけることが、文科省が提唱している「主体的・対話的で深い学び」や「アクティブ・ラーニング」につながると言えるでしょう。

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