間取りづくりは「ゾーニング」から始める!?
「ゾーニング(zoning)」ということばをご存知でしょうか。ゾーニングとは、建物などの設計において、部屋や空間を役割によって分け、建物内に配置していくことです。間取りを考えるときには、細部を決める前にどのフロアにどのような部屋を配置するのか、大まかにゾーニングを考えます。リビング、キッチン、浴室や洗面室というように、用途や役割によって場所を決めていくのですが、単に空間の用途だけで決めてしまうと、家事をする際の動線が複雑になったり、通風や採光が悪くなってしまうなど、暮らしにくい家になってしまうことがあります。ゾーニングを考えることで、希望が反映されているか、自分たちの生活スタイルに合った間取りになっているのか、基本的事項を確認することができるのです。
3階建て住宅は、階段の昇り降りを考慮し、暮らしやすい間取りにするためにもゾーニングを検討するところから始めていきましょう
3階建て住宅の場合は、2階建てに比べて上下階への移動が増える傾向があります。また、制約の多い都市部で建築されることも多いので、ゾーニングの重要性はより高いといえるでしょう。
ゾーニングは「家族が長く過ごす場所」から考えていく
では、3階建て住宅では、どのような順番でゾーニングを考えていけばいいのか、例を挙げながら説明していきましょう。ゾーニングを考える順序としては、リビングなど家族が長い時間過ごす空間を、条件のよい場所に配置するところから決めていくとよいと思います。
一般的な2階建て住宅の場合、どちらかというと、1階にリビングを設けることが多いと思いますが、3階建て住宅では、2階にリビングを設けるケースがぐんと増えてきます。これは、都市部では近隣に建物が密集していることが多く、1階では良好な通風・採光が望めないことが多いからです。
ヘーベルハウスの3階建て住宅の場合では、延床面積が35~45坪の単世帯住宅だと、2階リビングを採用するケースは9割近くになります。これも、さまざまな検討を重ねた結果、家の中心的な空間であるリビングを快適な場所に配置したゾーニングの結果なのです。
ヘーベルハウスの3階建て住宅(単世帯の場合)では、2階リビングの採用率は86%。2階にリビングを設けることで快適性が高まります
先ほど、ゾーニングを考えるときは、リビングなど家族が長い時間を過ごす場所から決めていくとご説明しましたが、このとき忘れてはならないのが「家の中でどこが一番環境のよい場所なのか」を探ることです。
私が設計をする場合は、必ず、敷地を調べることを重視しています。実際に現地に赴いて、どの場所に光が入るのか、風通しはどんな具合かなどを確認して、 もっとも環境のよい場所に家族みんなが集まる場所、つまりリビングを計画します。そうなると、やはり2階や3階にリビングが配置されることが多くなり、次に水廻りなどの機能スペース、そして玄関や個室へ…という順序で考えを進めていくことになります。
環境のよい場所にリビングを配置したら水廻りを
では、例えば2階にリビングを設けることを決めたら、それ以外のフロアには何を配置したらよいでしょうか。基本的には、1階は玄関や浴室、洗面室などの水廻りのほか、収納を設け、3階には個室をまとめることが多くなっています。水廻りはLDKにできるだけ近いほうが動線を短縮できるので、家事効率がよく、便利になります。そのため、家族が長い時間を過ごすリビングと、家事作業の 中心になるキッチンや洗面室に配置されることの多い洗濯機などの水廻りが同一のフロアにあると、生活しやすい家になるはずです。
リビングと同一フロアに水廻りを配置するゾーニングは、3階建て住宅におすすめです
2階のLDKと同一階に水廻りをとるスペースが十分取れない場合は、洗濯機だけをキッチンのそばに置く家が増えています
ガレージは建物と別に設けることもあると思いますが、ヘーベルハウスの場合、約40%は建物内にガレージを組み込む「ビルトインガレージ」を採用しています。3階建て住宅では斜線制限の関係で3階部分が狭くなることがありますが、ビルトインガレージを設けると、通風・採光に恵まれた3階部分を広く取ること ができる可能性があるのも、ビルトインガレージ採用が多い理由のひとつです。
ビルトインガレージにする場合は、車の出入りを考え、遮音や動線の問題を含め、車庫と隣接する空間をどうするか、よく考えながら計画していくことが必要です。
ビルトインガレージを採用する割合はヘーベルハウスで約40%。1階は階高を抑えて、3階の有効面積を最大限活用できるようにします
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