世界最高峰リーグ「スーパーラグビー」の歴史

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日本人選手として初のスーパーラグビープレーヤーとなった田中史朗。日本代表でも別格の存在感を見せている (C)JRFU,Photo by H.Nagaoka

国際的なラグビーの歴史においては、ヨーロッパのイングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランド、フランスによる国別対抗戦、5か国対抗(2000年からイタリアが加わり、現在は6か国対抗)が、長らくもっとも伝統と権威のある大会でした。一方で実力的に見れば、南半球のニュージーランド、南アフリカ、オーストラリアのほうがそれらの国々よりも上であり、ワールドカップでは過去7大会中、6大会でその3国が優勝している(ヨーロッパ勢は2003年大会のイングランドの1回のみ)という現実があります。

この南半球3か国の連合協会である「SANZAR」によって1996年に創設されたのが、「スーパー12」です。これはそれぞれの国のスーパークラブ(地域代表や州代表の選抜選手で編成)が12チーム参戦して行われる国際リーグ戦で、このスーパー12が始まったことにより、ラグビーは見るスポーツとして活性化され、大きく発展を遂げました。

その後、マーケティング的な観点からスーパー12はどんどん規模を拡大し、2006年シーズンからは14チームによる「スーパー14」となり、2011年にはさらに1チーム増えて15チームによるコンペティションとなりました。なおこの年から、大会名称も「スーパーラグビー」となっています。

常に新しいものが生みだされる大会名に込められた思い

ちなみに「スーパーラグビー」という大会名には、「既存のラグビーを超越する」という意味が込められているそうです。その狙い通り、スーパーラグビーではこれまで、数々の新しい攻撃方法やディフェンスシステムが、毎年のように生み出されてきました。

つまり多くのイノベーションを起こして世界のラグビーをリードしてきたのが、スーパーラグビーなのです。この点において、国のプライドと伝統をかけて戦うヨーロッパの6か国対抗とは大きな違いがあります。伝統を守るより常に新たなものを創造し、発信していく——それが、スーパーラグビー最大の特徴といえるでしょう。

想像もしなかったことが現実に!「スーパーラグビー」に日本が参戦!

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日本代表のキャプテンを務めるリーチ マイケルは、来シーズンからニュージーランドのチーフスでプレーする予定だ (C)JRFU,Photo by H.Nagaoka

スーパーラグビーは2016年シーズンからさらに規模を拡大し、18チームで行われます。そしてこのたび、そこに日本チームが加わることが決定しました。

これは、日本ラグビーにとってかつてないほど大きな出来事であり、日本のラグビーが大きく変わる歴史的な転換点といえます。世界のラグビーにとっても、非常に価値のある出来事となるでしょう。なぜなら、多くの人に勇気と可能性が与えられるからです。

10年前、日本がスーパーラグビーに参戦するなど、誰も想像すらしていませんでした。かつて5か国対抗にイタリアが加わった時も、イタリア人でさえ想像しなかったことが起こったと言われ、それによって世界のラグビーに変化が起こりました。はじめの数シーズンは大敗続きでしたが、いまでは世界的強国であるイングランドやウェールズ、フランスとも十分渡り合うまでに成長し、注目を集める存在となっています。


日本が世界のラグビーを変える!
野茂やカズの時のような高揚感をぜひ!

実力的に見ればニュージーランドや南アフリカ、オーストラリアと日本では、まだまだ大きな差があります。一方で、日本にしかないラグビーのスタイルやスキルがあるのも事実です。日本がスーパーラグビーに加わることで、日本人特有の俊敏性や姿勢の低さ、テンポの早い攻守の有効性が認知され、広まっていけば、世界のラグビーが変わっていく可能性もあります。

そう考えれば、今回のスーパーラグビー参入は、「枠組みに入れてもらって一番下でチャレンジする」というより、「世界のラグビーを変えるというミッションをもって参入する」というスタンスで臨むべきだと思います。そうした存在意義が、日本にはあるのです。

野茂英雄投手がメジャーリーグで投げたり、三浦知良選手がセリエAで初出場した時のような高揚感を、ぜひラグビーでも味わっていただきたいと思います。

驚異的なアスリートの競演、ボールが大きく動く楽しいラグビー

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オーストラリアのメルボルン・レベルズで2013年からプレーする堀江翔太。来季の契約延長も果たした (C)JRFU,Photo by H.Nagaoka

スーパーラグビーでプレーするのはそれぞれの国のトップレベルの選手たちで、基本的にその中から国代表が選出されます。現在の世界ランキングはニュージーランドが1位で南アフリカが2位、オーストラリアは4位(11月17日発表)ですから、まさに世界最高峰リーグと呼ぶにふさわしいレベルといえます。イメージとしては、サッカーのチャンピオンズリーグを思い浮かべるとわかりやすいでしょう。

スーパーラグビーはエンターテインメントとして魅せるラグビーを追求した歴史があるため、ランプレーが多く、ダイナミックにボールが動き、攻守も頻繁に入れ替わってよく点が入ります。日本に比べプレーが途切れず、見ていて楽しいラグビーが展開されます。

もちろんそのレベルで戦うためには、それに耐えうるだけの能力が必要になります。とりわけフィジカル(身体的)の強さは大きな比重を占めており、選手たちのアスリートとしてのレベルの高さは驚異的です。初めてスーパーラグビーをライブ観戦すれば、その圧倒的な体の大きさとパワー、スピード感に、きっと衝撃を受けるでしょう。


スーパーラグビー参戦で日本ラグビーの何が変わる?

スーパーラグビーに参入することで、日本はハイレベルの国際試合を経験できる機会が飛躍的に増えることになります。どれほど厳しいトレーニングを重ねても、本物と戦わないことには経験値にはなりません。しかもその相手は常に新しいものを生み出そうとしているわけですから、素晴らしい経験の場になることは言うまでもありません。

レベルの高い相手と数多く試合をこなすことで、「この部分は通用した」「ここは通用しなかった」ということが明らかになります。それによって、日本ラグビーのアイデンティティが築き上げられることにも期待しています。戦いを重ねるにつれ、日本ラグビーの進むべき方向が明確になっていくはずです。

なによりありがたいのは、「チームとしてチャレンジできる」ということです。野球やサッカーではすでに多くの選手が海外に挑戦し、大きく成長していますが、すべて個人です。一方、スーパーラグビーには日本チームとして参入できるので、チーム全体がレベルアップできます。

海外で活躍する選手も当たり前のように増えていくでしょう。アピールするまでもなく相手がこちらを見てくれるわけですし、実際に試合をやる中で評価されるわけですから、選手にとってはこれほどラッキーなことはありません。選手だけでなく指導者の意識も、世界基準に変わっていくと思います。

世界で日本人のすごさを体現。今度はラグビーでも

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東京を本拠地に、日本代表に準ずるチームを編成して臨む。世界最高峰のラグビーが、国内で日常的に見られるようになる影響は、はかりしれない (C)JRFU,Photo by H.Nagaoka

野球にしろサッカーにしろテニスにしろ、他競技では日本人のすごさを世界の舞台で体現している人がたくさんいます。その点で、ラグビーは出遅れていると言わざるをえません。ただ今回、スーパーラグビーというステージに立つことで、「ラグビーでも日本人が世界に通用するのだ」と感じられる場面が増えていくと思います。

実際、選手個人で見れば、世界で通用する人物はこれまでも数多くいました。日本人ならではの俊敏性や器用さ、低い姿勢での素早い動きなどは、スーパーラグビーでも絶対に有効です。ただこれまではその場でプレーする機会がなかったため、認知されてこなかったのです。

日本選手が海外で高い評価を受ける可能性は、今後大きく広がるでしょう。他国の強豪チームからオファーを受けることも珍しくなくなるかもしれません。スーパーラグビーという舞台に立つことで、多くの日本選手がラグビーで通用することが、きっと証明されるはずです。

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