マーケティング/マーケティング事例

キラリトにヒカリエ、商業施設キラキラネーム化のなぜ

2014年10月30日、銀座一丁目という好立地にオープンする「キラリト ギンザ」。早くも話題となっているが、今回はそのネーミングに注目したい。近年、商業施設で独自のカタカナネームが増加している。2012年の「ヒカリエ」や「東京ソラマチ」、2014年の「あべのハルカス」など。いわばキラキラネームともいえるこの独特のネーミングはなぜ流行しているのか。商業施設の歴史とともに解説します。

新井 庸志

執筆者:新井 庸志

マーケティングガイド

キラリトのオープンと独特な名前

2014年10月30日(木)、銀座に新しい商業施設「キラリト ギンザ」がオープンする。場所は銀座一丁目。三越、松屋銀座なども並ぶ銀座のメインストリート、中央通りだ。施設の中には飲食、ファッション、ジュエリー、ギフトショップなどが入る。

そんな「キラリト」に代表されるように、ここ数年、商業施設で独特なカタカナネームが増加している。2012年にオープンした渋谷の「ヒカリエ」や東京スカイツリーの商業施設「東京ソラマチ」。2014年の「あべのハルカス」(大阪)などが挙げられるだろう。まさにブームといっていいかもしれない。

デパートから複合商業施設への歴史

商業施設のカタカナネーミング。このブームの前に、商業施設の歴史について簡単に説明したい。そもそも現在のような複合商業施設の潮流はデパートにあった。三越、松屋、松坂屋、高島屋、東急百貨店、大丸などが代表例だろう。

人々は飲食、ファッション、ギフトなど多岐にわたる用事を一度に済ませたい時、デパートに行くようになった。日常生活は、近所の商店街の鮮魚店、青果店、文房具店、あるいはスーパーマーケットなどに行けば用が足りていたのだ。デパートに行くことが言わばオシャレな時代だった。1957年の大ヒット曲である「有楽町で逢いましょう」は有楽町そごう(現在のビックカメラ)のテーマソングであり、さらに時代をさかのぼれば「今日は帝劇、明日は三越」というキャッチコピーが使われた時代もあった。

しかし時代が進むにつれ、若い人達にとってデパートは魅力的ではなくなった。従来からの顧客を重視するあまり、若い人達のニーズを捉えられなくなった。またバブルが崩壊し、不況の時代に入ると、商品が高額であることも敬遠される理由となった。こうしてデパートの人気は落ち、代わりに複合商業施設が台頭してきたのだ。

複合商業施設のネーミングの変遷

複合商業施設のネーミングも最初は普通のものだった。日比谷シャンテ、サンシャインシティ、ラフォーレ原宿などが代表的なものだ。日比谷シャンテのシャンテは、英語で「詠唱者」や「聖歌隊の先唱者」といった意味だ。ラフォーレ原宿のラフォーレとは、フランス語で「森」を意味する。これは開発者である森ビルの森にちなんだものだ。その後も恵比寿ガーデンプレイス、渋谷マークシティなど外国語をそのまま商業施設のネーミングに取り込む時代が2000年くらいまで続いた。

その後、2000年あたりをさかいに複合商業施設のネーミングの方向性が徐々に変わってきた。ラゾーナ川崎(2006年)のラゾーナとはスペイン語の絆(Lazo)と地域(Zona)という言語を組み合わせたものだ。日本橋にはコレド日本橋(2004年)がオープンした。コレドとは「CORE+EDO」つまり「中心+江戸」という意味だ。ネーミングの中に英語やフランス語を取り入れることがオシャレという時代が終わり、スペイン語など今まで使われなかった言語や文字遊び的なネーミングが増加していったのだ。

複合商業施設に日本語が使われ始めた転機は2007年頃だ。2007年に有楽町イトシアが完成した。イトシアのイトシとは日本語の「愛し(いとし)」という意味だ。2008年には赤坂に赤坂サカスが完成する。サカスとは「咲かす」という意味や「坂s(赤坂は◯◯坂という名称が随所にあるように坂が多い)」という意味だ。このあたりから複合商業施設の独特な日本語ネーミング化が加速していき、現在までのトレンドとなっている。
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