「いじめる人」の心理に潜む「強者からのプレッシャー」

いじめる側の心理とは?

つい、人をいじめてしまう人の心に抱えているものは?


「人をいじめることは絶対にしてはいけない」――これは、人間としての最低限の倫理。平成25年(2013年)に「いじめ防止対策推進法」が施行され、現在、学校や地域では予防から発見後の対応まで、計画的、組織的にいじめ対策が行われています。しかし、このようにいじめをなくすための対策は推進されているのに、いじめそのものがなくなる気配はありません。

いじめは、子どもたちの世界だけのものではありません。たとえば、社会人には「パワハラ」という職場内のいじめがあります。地域や親同士でも、気づかぬうちに「モラハラ」といういじめが発生していることがあります。では、いったいどうしていじめは起こるのでしょう? 理由には様々なことが考えられますが、その一つに、いじめる側が何らかのプレッシャーにさらされているという事情が考えられます。

たとえば、国民的アニメ番組『ドラえもん』で、子どもたちの世界では敵なしのジャイアンも、そのジャイアンと一緒になっていじめるスネ夫も、家に帰れば「親」という強者に常に気を遣って暮らす弱者です。現実の世界で身近な仲間をいじめている子も、自分より強い誰かに常に気を遣って暮らす弱者なのかもしれません。

大人の世界のいじめも、同様なのかもしれません。たとえばパワハラをしている上司は、事業主から課せられるノルマやプレッシャーに常におびえているのかもしれません。地域や親同士の関係でモラハラをする人は、「見下されたらこのポジションから外される」といった強迫観念に常に駆られているのかもしれません。

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「いじめる人」が抱える「弱い自分」とは?

強者からのプレッシャーや「見下される前に見下さねば」といった強迫観念に常におびえていると、「弱さ」を感じさせる存在に過剰に苛立ってしまうことがあります。これは、自分自身の弱さを相手の弱さに投影し、相手をいじめることで自分の中の弱さを消そうとするためです。

また強者は、人に暴言を吐いたり、相手に自分の意見に有無を言わさず従わせることができれば、優越感に浸ることができます。このような強者に従わされてきた人は、「自分もいつかは同じように優越的な立場に立ち、自分の思い通りに人を従わせたい」といったゆがんだ意欲を持ってしまうことがあります。
 

相手を攻撃したときに、自分が後悔できるバランス感覚があるか?

お母さんと子ども

いじめることを躊躇できる心を育てることが大切

一方、権力のプレッシャーにさらされることなく、言いたいことが言え、自由にふるまえる環境で生きてきた人は、積極的に他人をいじめようとは思わないものです。

たとえば、アニメ『ドラえもん』ののび太は、「また0点取ったの?」「そんなことでどうするの!」といつもお母さんから怒られていますが、このお母さんには問答無用で息子に暴力を振るったり暴言を吐くようなところはなく、基本的には穏やかな態度で息子に接しています。お父さんも同様に穏やかで、のんびりした性格の持ち主です。さらに、のび太は幼い頃には温かいおばあちゃんに見守られ、「のびちゃんのままでいいんだよ」と言われて育ちました。

したがって、のび太は学校ではいつもジャイヤンやスネ夫にいじめられていますが、「あわよくば、自分もいじめる相手を見つけてストレスを発散してやろう」というようなところは見られません。ジャイアンやスネ夫にいじめられたときには、「ころばし屋」「のろいのカメラ」のような怖い道具を使って仕返しをすることもあります。しかし、その後には必ず自身に災難が降りかかり、「やるんじゃなかった……」と深く後悔しています。このように、他人を攻撃したときに罪悪感を感じられることは、人間関係における健康な感覚です。
 

いじめたくなる心理に目を向ける必要がある

人をいじめたくなる気持ち、いじめの優越感に浸りたい気持ちの根底には、強者からのプレッシャーに常におびえ、自分の弱さを他人の姿に投影し、それを否定しようとする無自覚の心理が働いているのかもしれません。

もちろん、いじめ防止対策においては、人をいじめてはいけないこと、いじめは人権侵害であることを伝え続けていく必要があります。同時に、いじめを根本的になくすには、つい人をいじめたくなる心理にも目を向け、理由や背景を考えていくことも必要になるように思います。

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