あの人の決断~鈴木明子さんインタビュー

更新日:2014年10月16日

自分にとって、最高のタイミングを待つ


――最後の1年を経て終わりを迎えたときは、何を感じましたか?

ソチオリンピックですでに足の状態があまり良くなく、痛みに勝てなくなっていたので、世界選手権までは頑張れないと考えていましたが、高橋大輔さんが「日本でファンのみなさんが待っているよ」と声をかけてくれて。その言葉に背中を押され、「ひとりでここまで来たんじゃない。日本には素晴らしいファンのみなさんがいるのだから、成績ではなく自分の滑りを見てもらおう」と、最後の世界選手権に向かっていけました。競技を終え、1万8千人も入るさいたまスーパーアリーナで、総立ちの中見送っていただけた瞬間、「自分が一番幸せだ」と感じました。悲しみや名残惜しさではなく、すごくすっきりした。選手として最高の幕引きができて、自分にとってはこれが最高のタイミングだったんだと思います。

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――とても多くの時間をかけて納得のいく決断をされたのですね。

私はもともとすごく慎重派で、コーチからは「石橋を叩いても渡らない。叩きすぎて壊してしまう」と言われたくらい(笑)。悩んだり時間をかけたりすることが多かったけど、今では直感的にこれだと決断する勇気をもつこともあります。それは、日々の生活の中で、自分の主張が出来るように訓練されたこともあるのですが。その両方を使い分けている、というか……。慎重になって答えを先送りにしても、最初に直感的に思ったことが最終的な答えになるときがある。もっと自分を信用して大丈夫と気付いてからは、なるべくパッと決めるようになりました。
でも、悩んだり、苦しんだりしても良いと思うんです。そうやっていろいろ考えるということは、そのことに対して自分が一生懸命だから。じっくり考えて出した答えなら、納得できるでしょう。誰かに急かされて出した答えでは人のせいにしてしまうかもしれない。私はそれが嫌だから、きちんと自分で責任がとれるように、答えを出すタイミングを待っているんです。


次に進むためならば、諦める強さも必要

――そんな中で焦りを感じることはないのでしょうか?

もちろん焦りますが、結果は急いでない。自分にとって“必要な悩み”ですから。そう思えるのは、これまで悩んで乗り越えてきた経験からですが、乗り越えなくても、そこであきらめるという決断があってもいいと思います。あきらめるから弱いわけではなく、次に進むために必要ないならば、あきらめる決断をする強さが必要。それは妥協ではなく、前向きに別の道に向かっていく強さ。私もすぐ自己嫌悪に陥って、なんて弱いのだろうと落ち込むことばかりですけど、実は吹っ切れると強いタイプ (笑)。勇気を出して飛び越えないといけないときもあるんですよね。

――悩んだり迷ったりするとき、誰かに相談をすることはありましたか?

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以前は自分の中で消化しようとしていました。私はここまでやれる。ひとりで決めなきゃだめだ。弱さは見せたくない、と。でも、18歳のとき摂食障害という病気になったことで、その気持ちが自分自身を苦しめているということに気が付いて、もっと甘えてもいいのかなと思うようになりました。周りの人がそう気づかせてくれたんです。今はわりといろんな人の意見を聞いて、必要だと感じたことは取り込んでいます。だれに相談するかは自分の判断なので、そこも大事にしますね。


いまだに抱え込んでしまうこともありますよ。去年のシーズンもひとりでプレッシャーを抱えて、コーチに「最後の最後に何があったんだ?」と尋ねられて。いろいろ話していくうちに、「なぜ言ってくれなかったんだ?」と言われることもたくさんありました。でも、別にそうやってぶれてもいいんですよね。10代の私は強がっていて、芯が固くピンとしていて、何かにぶつかったらポキンと折れてしまうようなものだった。だけど今は、ぶれても最後にはもとに戻ってくる、しなやかな強さがあればいいなと思う。そんなイメージで今は生きているというか、やっていっています。

鈴木さんが考える、「最高の決断」とは……