メキシコじゅうが生き生きと輝く「死者の日」とは?

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メキシコシティの老舗菓子店の飾り付け

2003年に「死者に捧げる先住民の祭礼行事」として、ユネスコの無形文化遺産に登録されたのが、メキシコのお盆にあたる「死者の日」(Dia de muertos)です。毎年10月31日~11月2日の3日間に、故人の魂がこの世に戻ってくるとされ、各家庭に祭壇が設けられたり、先祖の墓を飾り付けたりします。この時期は町じゅうがカラフルな切り紙の旗、楽しく笑うガイコツの人形や、鮮やかなオレンジのマリーゴールドで彩られます。
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墓地ではマリアッチの演奏も行われる

死者の日は、先スペイン期の先住民たちの間で、トウモロコシや豆など農作物の収穫期に合わせて8月に行われていました。しかし、スペイン侵略後のカトリック教への改宗により、11月1日の諸聖人の日と、11月2日の万霊節に日程が替えられたのです。メキシコの農村地帯や先住民たちの間では、11月1日は子どもの魂を迎えるための日、11月2日は大人の魂を迎える日としています。
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死者の日の骸骨メイク

現代の死者の日は、先スペイン期の先住民の儀式や風習をルーツにもち、スペイン侵略後のカトリックの普及とともに混合されたものですが、古来の風習が色濃く残っています。日本の静粛としたお盆と異なり、メキシコの死者の日は、祭壇の飾り付けが派手で、墓地では、故人の墓の前で酒を酌み交わしたり、食事をとったり、マリアッチ楽団を呼び、故人が好きだった歌をリクエスト。これは故人の魂がこの世に戻っている間に、生きている家族や仲間と交流を楽しむという意味があります。
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2018年公開のディズニー/ピクサー映画『リメンバー・ミー』ではメキシコの美しい「死者の日」が描かれました。 (C)2018 Disney/Pixar

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キャンドルがあふれかえる、 美しい墓地。 (C)2018 Disney/Pixar

1年のなかで、最もメキシコらしさを感じる行事であり、その独特な風景を体感するために、世界じゅうから多くの観光客が訪れます。2018年3月に日本でも公開されたディズニー・ピクサー映画『リメンバー・ミー』が、メキシコの「死者の日」にインスピレーションを得て制作されたことからも、今年はさらに多くの人々が訪れることでしょう。
 

死者の日の飾り付け

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家庭の死者の日の祭壇

死者の日の祭壇は故人の魂が訪れて、飲食をし、休憩する場所です。供えられるものや、飾り付けのひとつひとつに意味があります。

■マリーゴールド
故人の魂を導くセンパスチルの花びら

故人の魂を導くセンパスチルの花びら

死者の日を象徴する花が、オレンジ色のセンパスチル(cempasúchil)ことメキシカン・マリーゴールドです。無数の花びらがあることから、先住民言語ナワトルでは、ひとつの花のなかに20の花が詰まっているといわれ、太陽の色と熱を込めていると信じられてきました。祭壇や墓の前に、強い香りと色を持つセンパスチルの花びらを並べておけば、故人の魂が迷うことなく戻ってくるとされています。センパスチルと供に赤いケイトウや白いカスミ草も飾られます。

■死者のパン
並ぶ骨の中心に頭蓋骨がある姿を模している

並ぶ骨の中心に頭蓋骨がある姿を模している

祭壇に欠かせないのが、死者のパン=パン・デ・ムエルト(Pan de Muerto)。地方によってパンの形は異なりますが、代表的なものは丸く、中央に骨を象ったものがついていて、砂糖がまぶしてあり、ほんのりとオレンジの風味がします。先スペイン期では、アマラント(ヒユ科の種子)または、トウモロコシの粉をマゲイ(竜舌蘭)の蜜や、ハチミツで味付けし、蝶の形をしたものを祭壇に供えていました。それが、カトリック教の普及により、イエスの体をパンに例えたことに由来して、小麦粉のパンに替わりました。

■カラフルな切り紙の旗
死者の日のバージョンはガイコツの絵柄が特徴

死者の日のバージョンはガイコツの絵柄が特徴

室内や祭壇に飾られるカラフルな切り紙の旗(パペル・ピカド=Papel Picado)の由来は、メソアメリカ文明で、アマテの木の樹皮からできた紙に絵を描き、神に捧げる祭壇を飾り付けていたものです。この飾りは、スペイン侵略後に、薄いシフォンのような紙を使用するようになり、メキシコの祭事に使用される旗となりました。見た目は中国の切り絵に似ていますが、まったく異なる製法で作られており、一枚一枚をハサミで切っていくのではなく、50枚ほど重ねた紙に、たがね、のみ、ハンマーを使って、抜き切りながら柄を作りあげていきます。

■コパル
コパルの煙は、お清めやお祓いに使われる

コパルの煙は、お清めやお祓いに使われる

先スペイン期より使われるコパル(Copal)の木から採れるお香で、いぶしたような強い香りが特徴。悪い精気を浄化する力があり、故人がつつがなく家へやって来られるようにします。

■ろうそく
夜通し灯される

夜通し灯される

ろうそくの火は故人の魂を導き、迎えるための光、恩恵、希望の意味が込められています。かつては、オコーテ(松の一種)の葉を燃やしていましたが、現在は蝋燭を灯すようになりました。

 
■どくろの砂糖菓子 
甘すぎて食べるのには向かない

甘すぎて食べるのには向かない

どくろの砂糖菓子=カラベラ・デ・アスカール(Calavera de azucar)の大きめサイズのものは、身近な死者を表し、小さめのものは祖先の姿を表しています。故人の名前が書き加えられることも。これは、先スペイン期の祭壇に、故人の頭蓋骨が飾られていたことが由来しています。チョコレートやアマラントでできたどくろもあります。

そのほか祭壇には、塩(空気を浄化するため)、水(命の根源。故人の魂が長い旅による疲れを癒し、また天国へ戻る際の英気を養うため)、故人の写真や故人の好物(大人であれば酒の瓶、タバコなど、子どもだったらおもちゃなど)、フルーツ、さとうきび、カカオとスパイスで作ったソース、モーレ料理や、飲むチョコレートのチョコラテなども供えられます。料理、チョコラテ、死者のパンなどの食物は祭壇に捧げられた後に、家族でいただきます。

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