代ゼミが7割閉校を決めた

大手予備校代々木ゼミナール(以下代ゼミ)が全国の7割の校舎を閉め、旧校舎を活用した不動産業に軸足を移行するというニュースは、衝撃をもって報じられました。

企業がそれまでの本業とは全く別の領域に踏み出す際に重要なことは、同業他社の追随を許さない自社の強みがどこにあり、それをいかにして活かしていくのかという観点で自社分析をおこなうことです。一般的に「コアコンピタンス分析」と言われるものがそれです。

解説

7割の校舎が閉鎖される代ゼミは不動産業へのシフトが予想される

これは経済学者のゲイリー・ハメルが定義した概念で、強み(コアコンピタンス)は単に技術力やノウハウだけでなく、ネットワーク、企業理念、ブランド力等々、有形無形問わないありとあらゆる企業が所有する資産が対象になりうるものです。

この観点で考えてみると、今回の代ゼミの意図するところは実に分かりやすいです。代ゼミは古くからJR代々木駅前の一等地に複数の自社ビルを構え、ここを拠点として、受験生数の多い私立文系志望学生をメインターゲットに予備校ビジネスを展開。80年代の事業の拡大期においても、同様の戦略のもと日本各地で受験生たちが通いやすい駅前の一等地を選んで自社ビルを続々建ててきたのです。

いまの代ゼミの「強み」を知る

90年代に入り、少子化の流れによる受験生の減少と共に訪れた「私大が余る」という傾向により、いわゆるマス層を対象とした代ゼミのビジネスには陰りが見え始めます。

同社はこの時期から全盛期に次々と手に入れた一等地不動産の活用による新たなビジネス展開を検討することになったのです。なぜ代ゼミは受験予備校と並行して不動産活用の検討をはじめたのか。それは全国の主要都市の駅近物件を多数所有しているという事実が、組織マネジメントから見た代ゼミの強みだったからです。

90年代後半から規模の縮小に伴い閉館されはじめた一部の校舎は、オフィスやホテルとして転用されています。その象徴とも言える例は代々木駅前の旧本校で、ここは08年の新宿代ゼミタワー竣工を機に一部はオフィス転用されるとともに、メイン部分は複合商業施設「代々木ヴィレッジ」として再開発され、消費者の注目を集める新スポットに生まれ変わりました。

代ゼミは自社ビルが持つ駅前一等地というメリットを最大限に活かして、オフィスやビジネスホテルやショッピング施設等への転用をはかり、縮小する受験ビジネスに代わる第二のビジネスへの部分転換をすすめているのです。事業としての大学受験予備校から完全撤退したわけではありませんが、自社の強みである資産の有効活用による不動産事業展開は、今回の校舎7割閉鎖を受けて一層進展するものと思われます。