3階建て住宅で「緑」を取り入れるには
都市の密集地など、敷地に余裕がない場合が多い3階建て住宅では、緑を取り入れることはなかなか難しいものです。しかし、植物や樹木の緑といった自然を鑑賞したり触れ合うことは、生活に潤いをもたらし、心に安らぎや癒しを与えてくれるものです。住宅を建てる際に考えたい大切なポイントだと思います。3階建て住宅で緑を取り込む手法としては、「ベランダなどの外部空間を上手に活用する」「借景を利用し、緑を取り込む」「壁面や屋上・ベランダを緑化する」などが挙げられます。
例えば、3階部分に空とゆるやかにつながった、光や風を効果的に取り入れるオープンエアのスペースを作ると、緑を楽しむ空間を作り上げることができます。緑と触れ合う庭としての役割だけでなく、リビングのひとつとしても活用できる、空とつながった自由な空間です。
窓の位置を決めるときにも、電線など緑以外のものが気になる場合は、あえて窓の数を減らしてでも緑にフォーカスして、位置や形状を選ぶこともあります。
建物を緑化する具体的な方法は大きく分けて、「壁面緑化」と「屋上・ベランダ緑化」の2つです。
壁面緑化は、プランターを置いてネットやロープ、格子などに植物を這わせるので、屋上緑化に比べて狭いスペースでできるところが利点です。小さいスペースでも緑を感じられ、近隣の視線を遮りながら風通しも確保できるでしょう。厳しい日差しもカットできるので、夏の暑さ対策にもなります。
3階建て住宅の場合、2階建てや平屋に比べ、壁面緑化できるスペースが大きいので、上手に活用すると快適な生活空間をつくることができます。ゴーヤなど、食べられる野菜などを家族で育てれば、楽しみがさらに広がるのではないでしょうか。
屋上緑化を取り入れるには、屋上に土を入れて庭のようにする方法や、プランターなどを利用して植物を育てる方法があります。屋上を緑化すると、ガーデニングや家庭菜園などで自然と触れ合う機会が増えることに加え、屋上という広いスペースを「断熱」することにもなるので、建物全体の断熱性能を高めることにもつながります。
ただし、屋上に土を入れて本格的な庭にするには、土の重量や防水などに配慮しなければなりません。もちろん、それに合わせた構造計算をする必要がありますので、事前に相談が必要になります。
夏の暑さ対策になるだけでなく、屋上の面積にもよりますが、街に対してもヒートアイランド現象の緩和につながります
大々的に緑化もできない、借景も難しいという時には、小さくても緑のポイントを作るのも効果的です。例えば、地窓などの外側に植物を植えて小さな植え込みをつくる、または鉢植えなどを並べるといったことが考えられます。室内スペースが限られている場所に採用すれば、外へ視線が向かうため空間に広がりを感じることができます。
地窓を設けて、外側の植物や植え込みを室内から楽しめるようにするのも効果的
3階建て住宅の日照・採光・通風をシミュレーション
ここまで、光・風・緑を上手に取り入れるための設計手法を紹介してきましたが、3階建て住宅が建てられる敷地は、敷地ごとに緑のある場所も違いますし、光や風の入り方も違います。ヘーベルハウスでは、独自に開発した日照通風シミュレーションシステム「ARIOS」を活用しています。「ARIOS」は、その敷地に家を建てたとき、1年を通じてどのような日照や通風が得られるかをあらかじめシミュレーションすることができ、方位や道路の位置のほか、周辺の環境も反映できるので、シミュレーションを見ながら窓や扉の位置を変えたりするなど、設計に役立てています。
日照通風シミュレーションシステム「ARIOS」では、日照時間と部屋全体の日当たり具合や、各部屋への効果的な風の通り道についてシミュレーションすることができます
大切なことは、どの手法をどのように取り入れるか、です。
これは、設計手法を駆使して「賢くとじて賢くひらく」ためのノウハウです。なぜなら、通風・採光などのさまざまな要素は時としてトレードオフの関係、つまり、一方を取り入れるともう一方が犠牲になることがあるからです。
通風のために窓を大きくとると近隣の視線が気になるとか、採光のために窓を取り過ぎると家具の置き場に困ることがあるといった例もあります。
都市で快適に暮らせる3階建て住宅にするには、単に頑丈な建物だけでなく、外の空間に対して「賢くとじて賢くひらく」ということをきちんと考えられるソフト面、つまり豊富なノウハウも併せ持っていなければならないと考えています。
3階建て住宅設計ノウハウ「光」編はこちらからどうぞ>>