また唄ってみようかなー

ガイド:
RIKAさん、おひさしぶりです。さっぽろももこという名義も使われていますが、僕にとって一番親しみのあるRIKAさんと呼ばせてもらいますね。前回のインタヴューが2002年ですから、あれからもう10年以上経ってしまったとは驚きです。記事が出てから、何か反響みたいなのものはあったのでしょうか? 実は、All Aboutテクノポップの中でもなかなかよく読まれた記事なんです。

手工芸テクノ歌姫、RIKAさん (All Aboutテクノポップ)

RIKA:
rika

RIKA 2014/06/07 @渋谷 Last Waltz

当時インタヴュー依頼をいただいて、最初は悪戯メールかと思ってしまいました。「ロマンチック」は世間様からは忘れ去られられたアルバムなのに何で今頃?みたいな(笑)。反響はちょこちょこありましたが、何より私自身が嬉しかったです。売れなかったCDだけど、まだ今になっても気に入ってくれる人がいるんだ、って。また唄ってみようかなーっていう気になりました。誉められると調子に乗ってしまう性格です。

ガイド:
見ることが出来なくて残念だったのですが、RIKAとして2013年2月にライヴをされていたんですね。YouTubeに上がっているのは、80年代の「ロマンチック」…あ~懐かしい!!! この時は、他にRIKA時代の曲はされたんですか?

RIKA - ロマンチック (LIVE 2013) (YouTube)
*2013西荻窪アコースティックLIVE 2013.2.24 西荻窪 Bar Topolino

RIKA:
あとは「その年一番寒い日」(RIKA曲だけどCD未収録)と「週末論」(最近の曲)です。ゲストのゲストという形だったので曲数少な目。たぶん20年ぶりくらいのライヴだったので、すっごく緊張したけど楽しかったです。ライオン・メリィさんに声を掛けてもらって、久々に共演できたのも夢のようでした。

メジャーデビューを振り返って

ガイド:
前回、迷いがあって、突っ込めなかったのですが、今回、もう少し深く訊かせて欲しいことがあります。ポプコンからポニー・キャニオンからメジャーデビューとある意味順調なスタートを切ったにも関わらず、ある日、シーンから姿を消してしまった… 「疲れたから」というのが答えでしたが、それは周りの期待や業界に疲れたととってもいいのでしょうか?

RIKA:
2ndアルバムの企画も進む中、突然キャニオンさんからリストラ通告を受けたのでふてくされただけのことなんですけどね(笑)。商業音楽、というか音楽自体、聴くのが嫌になってTVもラジオもしばらく遠ざけてました。そんな感じなので唄うのもバンドも全部やーめた、って。我ながら青臭いですね!

かしぶち哲郎さんにもっと聞いておけば…

ガイド:
yokosocinemahousee

ようこそシネマハウスへ

僕自身、最後のシングル『ようこそシネマハウスへ』は、大大大好きな曲。その前のシングル『アルファベット』と共に、かしぶし哲郎さんによる編曲も素晴らしいです。かしぶちさんは、残念ながら2013年12月17日にお亡くなりになられましたが、RIKAさんにとってかしぶちさんはどのような存在だったのでしょうか?

RIKA/ようこそシネマハウスへ (1988) (ニコニコ動画)

 

RIKA:
まだ亡くなったのが信じられない気持ちです。当時のディレクターも私もかしぶちさんのファンでした。音作りは繊細で抒情的で透明でどこか哀愁があって…本当に良いアレンジをしていただけたと思っています。お人柄もとても温厚な紳士でした。ダンディーな見かけとはちょっとギャップのある温かい栃木訛りの語り口も素敵でした。でも私にとっては雲の上の人だったので、当時はあまりズケズケとミーハー的な質問もできなかったのが悔やまれます。今にして思えば、たとえウザがられてももっともっと音楽の話を聞いておけばよかったなあ、と。

 


『Dragon Shock』CD化

ガイド:
dragonshock

Dragon Shock

RIKA名義での最後の音源は、当時メトロファルスだったライオン・メリィさんと光永巌さんと作られた『Dragon Shock』(1989年)。でも、当時はFM TOWNSのCD-ROMのみの発売で、聴いた人は限られていたと思います。2007年にジャケも新たにCD化を果たしました。メトロファルスのお二人とはどのような経緯で一緒にやることになったのですか?

 

RIKA:
『Dragon Shock』を作る前に、お二人とはライヴも演っていたので。ライヴの経緯はもうあんまり覚えてないけど、私がVirgin VSのファンだったのでメリィさんにお願いしてみた…みたいな感じだったかと。で『Dragon Shock』ですが、ゲーム開発会社の事情が「曲を入れたい、でも予算が少ない」。それで私はメリィさんに何とかしてくれと泣きついた次第です。メリィさんのボロアパート(失礼)で深夜まで打ち込み作業に明け暮れたのはいい思い出です。メリィさん的には辛い思い出かもしれませんが。

ガイド:
オープニングの「OVERTURE」はゲームのための楽曲って感じですが、それ以外はRIKAさんの趣味で好き放題にやったと言えば、言い過ぎでしょうか(笑)? やはりタイトル曲「龍的衝撃 - Dragon Shock」はテクノポップど真ん中。ライナーノーツでも書かれていますが、「モンスターへの愛」が伝わります。でも、子供の時からモンスター好きだったのですか?

RIKA:
好き放題です! 怪獣は男兄弟の影響もあって、TVの特撮モノを小さい頃よく見てました。特に好きだったのがジャミラ。ストーリーの意味は大人になるまであまりよくわからなかったけど、子供の頃は「人間が怪獣に変身する」ってシチュだけでゾクゾクきてました。

ガイド:
ジャミラは子供心をくすぐりますね。悲しい宇宙飛行士の物語もジーンと来ますが、頭をシャツの中に入れて、ジャミラ遊びをした子供は多いでしょう。僕もその1人です。
「プロペラ天使」は、アンドロイドの歌。前の曲はゲームへの関連がありましたが、そんな縛りは超えて、さらに趣味の近未来的世界に突入していますね(笑)。「人工無能」が出てきますが、今やiPhoneのSiriまで進化してしまいましたね。

RIKA:
まさかこんな未来が待っていようとは! 長生きはしてみるもんです(笑)。

ガイド:
「G線(ゲエセン)王子」は、ムーンライダーズのメンバーが関わっていないのに、ムーンライダーズのような曲。ムーンライダーズは、RIKAさんの遺伝子になっているんでしょうね。

RIKA:
そういえばテクノポップにハマる前からムーンライダーズ聴いてましたからね。染みついてしまってるのかもです。どこか不思議なアウトロのアレンジはメリィさんが音色の設定を間違えてできた偶然の産物。

ガイド:
「Girls be ambitious!」は、その後の日本のkawaiiカルチャーの先駆けのような曲になっていますね。僕はこの部分はジェンダー論的にとても面白い分野だと思います。特に欧米では、kawaiiというのは女性に対する制限、悪く言えば蔑視とまで取られることもあります。しかし、日本では、あくまでも多数派としてですが…kawaiiを女性の特権、さらに正義とまで考えます。あ、難しく考えすぎましたかね?

RIKA:
まさしく先見の明ですね! と、誉められて調子に乗ってみました。なるほど、kawaiiカルチャーってのは日本独自。大正時代の乙女達が夢二の絵に熱狂した頃から脈々と受け継がれている少女文化を、私も愛しています。

ガイド:
「ガーネット・ガーネット」のタイトルは、森雅之さんの漫画『ガーネット』からとあります。僕は森雅之さんのことを知らないのですが、RIKAさん、教えてください。ちなみにこの歌は当時の気持ちを表したものなんでしょうか? 僕にはそう聴こえてしまいます。

RIKA:
森雅之さんの漫画はたぶん一生のうちで一番読み返しています。絵柄はシンプルだけど可愛くて、物語は詩的だけど日常的、優しいけど時に切なくて…とにかくとても愛らしい漫画です。で、歌詞は…正直、当時どういう思いで書いたのかあまり覚えてません(笑)。ただ「届かない祈り、叶わない夢」という概念は他の唄にも何度か繰り返し出てくるので、届かなかった祈りを弔ってやるのが一種のライフワーク的な何かなのかもしれません。後ろ向きなライフワーク。

 


RIKA改めPINPONS

ガイド:
toriaezubest

とりあえずベスト!

2013年、約1年前にPINPONSという名義でニューアルバム『とりあえずベスト!』が出ていますね! バンド名のように聴こえますが、基本、RIKAさんのひとりユニットなんですか? で、どうしてPINPONSなんですか?

PINPONS-とりあえずベスト!
(YouTube)
マッチングモヲル通販処
※マッチングモヲルさんは店舗(カフェ)でも買えます↓
前衛派珈琲処マッチングモヲル 
shop MECANO 
※MECANOは店舗ですが、通販ご希望の場合、以下にメールしてみてください。
mecano@jcom.home.ne.jp
※両店舗とも『Dragon Shock』『とりあえずベスト!』2枚とも扱ってもらってます。

 

RIKA:
基本はひとりユニットです(今はバンド版PINPONSもありますが)。録音からPV作成まで。名前の由来は「ピンポン録音」からです。2台のラジカセでリコーダーの音をピンポン録音して遊んでいた陰気な子供時代。その精神のまま4ch、8ch、コンピューター…と渡り歩いてきたDTM野郎(私)の魂の原点です! 大げさ!

エロゲーにおける曲の役割

ガイド:
ベスト盤からアルバム・リリースする人もいないこともないですが(Perfume、古くはソフトクリーム)、どうして『とりあえずベスト!』なんですか? 全18曲、その中に「エロゲー」にまつわるものが8曲。僕はエロゲーというのがいまいち分かっていないのですが、曲を聴く限り、別にエロくはなくて、往年のアイドル歌謡において、ちょっとだけ少女が大胆になった程度(「恋のライフセーバー」「いたいけなリビドー」)。エロゲーにおける挿入歌の役割を教えてください。

RIKA:
実は何年か前からコミケ(オタクの祭典)で、ちょこちょこと2~5曲入りの手焼きのCDを売ってたんです。そこら辺の曲がずいぶん溜まってきたので、ちゃんとプレスCDの形にしてみたいなー、と。エロゲーの主題歌はイメージソング的な位置付けかと。だから直接的なエロスは少なめです。あ、私が参加しているエロゲーは変なゲームが多いので変な曲が多くなります。例えば「恋のライフセーバー」は、バカゲーと呼ばれるジャンルのギャグっぽいゲームだったので、かなりバカ度を高めにしてあります。あくまでゲームのイメージに合わせたということで(笑)。

ラジオスターの悲劇

ガイド:
オープニングの「素敵なチャーリー」…以前のインタヴューでBugglesが好きとの話がありましたが、「ラジオスターの悲劇」へのオマージュ的フレーズも出てきますね。やはり、身体に染み付いているんでしょうか?

RIKA:
やっぱりバレた! てへっワザとです。間奏にちょこっとラジオスター風味を入れてみました。

 


性別ナシに憧れていた

ガイド:
PVもアップされている「ゼッケン」は、ノスタルジックな学校がシーンの歌。僕はRIKAさん以上に古い人間なので(笑)、別に何を、誰を、思いだすという訳ではないけれど、学校時代の郷愁に浸ります。ひとつ気づいたのですが、RIKAさんは「わたし」ではなく「僕」が基本、主語ですよね。これは、80年代もそうですよね。女の子が会えて使う「僕」、それとも男の子としての「僕」なんでしょうか? 確かに昔からボーイッシュですよね、RIKAさん。

PINPONS-ゼッケン (YouTube)

RIKA:
無歴史的なあてどないノスタルジーが大好物です。見たこともない風景なのに何故か懐かしい…みたいな根拠ないデジャブ感が好き。とはいえ「ゼッケン」の原風景はハッキリと母校のM中学なんですが。「僕」という人称を使うことに関しては私にも理由はよくわかってません。まあ昔から性別ナシに憧れていた傾向はないこともないですが。ひょっとして日本独自の少女文化とも関係があったりするかもしれません。ジェンダー問題、奥深いです。

閉ざされた空間

ガイド:
「8月のプラネタリウム」は、「ようこそシネマハウス」に通じるRIKAさんが愛してやまないと思われる「閉ざされた空間」がモチーフとなった歌。実は、僕も好きなんです、その世界。だから、博物館、特に公共のものよりその道の人が作った異質の空間としての博物館。RIKAさんも、きっとそうなんだろうと…如何でしょう?

RIKA:
です、です。閉ざされた空間(ある意味ゲームも)はメタフィクションの種。そして「この世界自体も閉ざされた空間かも?」なんて厨二病的な感覚に襲われたりすることがクラクラと楽しいのです。

謎の無国籍歌謡

ガイド:
「幸福ノ原理」…ゲームのことは知りませんが、中近東風、いや、この「妖しい無国籍感」は僕にとってニューウェイヴです。RIKAさんにとっての無国籍とは? 「駱駝」もそっちですね。

RIKA:
「幸福ノ原理」に関しては確か「大陸歌謡&戸川純的なニュアンスで」という発注でした。特殊エロゲーならではの特殊な注文です。面白そうなので喜び勇んでやらせてもらいました。なんちゃって民族音楽風のフレーズを切り貼りしてると、謎の無国籍歌謡になちゃうのが面白くて!

ヴァージンVSのファンジン

ガイド:
「輪転サアカス」では、大正~昭和初期のエレジーとでも言いましょうか、この世界観も間違いなく日本のニューウェイヴです。あがた森魚さん、戸川純さんなど、でもこの世界は日本ならではですよね。あがた森魚さんのファンジンも作っていたことあるんですよね?

RIKA:
あ、ファンジン作ってたのは「ヴァージンVS」の時です。今でも自分が作った大阪すみれ団のコピー誌持ってます。あがたさんやメリィさんのサインも入れてもらって宝物です!

 


歌詞がお下品なのは…

ガイド:
ファンジン、ぜひ、今度見せてください。
「恋のライフセイバー」は、ピンクレディーXビートルズ的な曲調、「僕」ではなく「あたし」が主語であることからも、RIKAさんとしては異色な歌ですね。「どうぞ、あたしのパパイヤ」と主人公もやけにはっちゃけています(笑)。ムーンライダーズの「マスカット ココナッツ バナナ メロン」を思い出しました。いにしえの夏の海の想い出から生まれた歌なんでしょうか(笑)?

RIKA:
歌詞がお下品なのは、ひとえに企画&絵師の長岡建蔵さんとライターの石埜さん(共同作詞者)のせいです。と、また言い訳。しかしこういうギャグっぽい企画のおかげで、ピンクレディーやキャンディーズのオマージュという愉快な曲を作ることができました。で、セルフカバーするにあたって、どうせならビートルズもディープパープルも入れちゃえー的なカオスな状況に。でもいろいろ詰め込んだ割には不思議と王道ポップスになってます…よね(笑)? 「マスカット ココナッツ バナナ メロン」はもちろん大好きです。歌詞がエッチ過ぎです!

ネガティブPOP

ガイド:
「終末論」ではなく「週末論」、自分の中では聴き返してみて、一番記憶に刻まれた曲です。「週末を君と過ごそう」というフレーズは、ほろ苦すぎます(褒め言葉)。

RIKA:
「週末論」は3.11(震災)がらみでできた曲です。原発事故とかいろいろあって、どうよどうよ、関西の実家に帰った方がいいのかなー、どうしようどうしようーって、プルプルしていた頃の気分です。でも政治的主張はこれっぽっちもありません。ダメ人間だから「絆」とか「頑張ろう」とかそういう前向きなフレーズはまるで浮かびませんでした。ネガティブPOP!

だまされたと思って

ガイド:
このアルバムには収録されていませんが、「デキソコナイワルツ」というPVが今年になって発表されていますね。こちらも含め、PINPONSの『とりあえずベスト!』を聴いてみて、テクノポップ~ニューウェイヴの文脈でもっともっと多くのリスナーに聴いて欲しいというのが正直な想いです。名義は違いますが、80年代のRIKAさんと脈々と繋がっていると感じます。同時に、ポニーキャニオン時代の作品も再発されたら、いいのに! 最後にRIKAさんから、ここでRIKAさんまたはPINPONSを初めて知った方に、メッセージをお願いします。

PINPONS - デキソコナイワルツ (YouTube)

RIKA:
だまされたと思って聴いてみてください。ロマンとお茶目がてんこ盛りです。あ、8/17にはコミケに参加します。CDも持って行きます。詳細はHPにて。

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