会社に頼らず、自分の価値を高めるには、「表現する力」が必須

藤川太さん

藤川太さん

これまで1万5000世帯以上の家計を診てきたファイナンシャル・プランナーの藤川太さんに、年収が上がらない時代にサバイバルする方法をインタビューします。(第4回目から続きます)第5回目は、収入を増やす方法についておうかがいします。

――家計を守るためには、“稼ぎ力”を強化する必要があります。変化の厳しいこの時代を生き抜くには、どんな力を身に付ければいいのでしょうか?

藤川太さん  “自分をプロデュースする能力”や“表現してアピールする力”は、自営業やフリーランスのみならず、組織の中で働く人たちにとっても必須でしょうね。“一所懸命やってさえいれば評価されて収入も上がる”と思う気持ちは誰しもあると思いますが、自分がどんなことをして、どういう風に組織のなかで役立っているのかをきちんと表現してアピールする力がないと、周りに埋もれてしまいます。例えば、マツダや日産の売り上げが迷走していた時期は、まさにそうだったと思うんですね。日産が、「1/100秒から1/1000秒の技術へ」などとコマーシャルを打っていましたが、それがユーザーにとってどういう価値があるのかをアピールできていなかった。確かに“技術の日産”と言われるかもしれないけれど、それで車が売れるとは限らない。

――ご自身も、自動車メーカーでエンジニアをしていらしたのですよね。

藤川 大学院を卒業してから4年間、自動車メーカーで燃料電池の研究開発に携わっていました。実は、私もエンジニアの時には、“いいものを作っていれば売れる、評価してもらえる”と思っていたんです。でも、実際に独立してみるとそれじゃ飯を食っていけないことがよくわかりました。自分に何ができるか、人とどこが違うのかを表現できなければ、評価されないし、仕事も得られない。当然、稼ぎ力にはつながりません。

ピラミッドの頂点を狙わない

本当の稼ぎ力をつける方法

本当の稼ぎ力をつける方法

――まったくの畑違いの分野から、どうやって仕事につなげていったのですか?

藤川 まず考えたのは、“自分の強みは何だろう”ということ。元エンジニアで金融業界出身でもなく、専門知識がそこまであるわけでもない。けれど、突破口があるはずだと信じて、“みんながやっていないことで自分が出来そうなこと”を徹底的に探したんです。その結果、見えてきたのが、分析力を生かして「見えないものを見える化する」こと。私は、エンジニア出身の理系人間ですから、分析をしたり、数字で表現することが得意でした。そこに自分の強みを見出して、アピールしていこうと考えたんですね。

最初に取り組んだのは、生命保険の付加保険料の割合でした。保険料のなかに、どれだけ保険会社の経費である付加保険料が含まれているか。それが自分の保険料の場合はどれくらいになるのかを、数字化して発表したんです。これまでになかったデータだったので、世間にインパクトを与えることができました。それがいろんな人の目につき、仕事につながっていったんです。

――自分なりの方法で差別化を図ったわけですね。

藤川 みんなと同じ土俵でピラミッド型の頂点に立つのは非常に難しいことですが、私のようにニッチを狙うというのもひとつのやり方。自分の価値の見出し方は人それぞれです。家計の相談に乗る時に、仕事の相談を受けることもあるのですが、評価をされていなかったり、収入が上がらない人たちのなかには、「こんなはずじゃない」と思っている人が非常に多い。

“会社を辞めてやり直せばなんとかなる”という声もよく聞きますが、自分の意識や姿勢を変えないと、どこに行っても同じことを繰り返して同じ愚痴を言うことになりかねません。そういう人に限って、仕事を通して何をやりたいか、何を表現したいのかを聞いてみると、「他人の役に立ちたい、喜ばれたい」とか「達成感が欲しい」などと、意外とシンプルな答えが出てきたりします。でもそれは、今の場所で本当に叶わないことなのか。

例えば、表現の仕方やアピールの方法をちょっと変えてみることで、人に喜ばれたり、評価につながるケースは少なくない。
達成感を得られないと感じるなら、どうすれば達成感に繋がるかをもう少し掘り下げて考えてみる。自分発信で何かをはじめたり、これまでと違った提案をしてみたり。できることをすべてやった上で、それでもダメなら「今の場所がそぐわない」ということだと思います。

独立直後に見たシビアな光景が、仕事への意識を変えた

音楽家の親戚の運転手としてバイト

音楽家の親戚の運転手としてバイト

藤川 こんなことを言っていますが、実はエンジニア時代の私は、「もっと違う場所があるはずだ」と感じて、アメリカに就職活動に行ったりもしていたんです。でも今思うと、自分に問題があったのでしょうね。最先端の技術に携わっているんだという自己満足がありながらも、それが世の中にどんな風に役に立つのかが見えなかったし、それをアピールする努力もしていませんでした。振り返ると、プライドばかり高くて、嫌な奴だったなあと思いますね。ですが、独立直後にプロの音楽家の世界を垣間見たことで、自分の甘さを痛感しました。

――どういった経験だったのでしょう?

藤川 独立直後はとにかく仕事がなかったので、作曲家をしている親戚の運転手をさせてもらっていたんですが、収録でスタジオに行くと、スタジオミュージシャンの方々がいらっしゃるわけです。皆さんプロですから、楽譜を渡されて10分程度練習したら一発目でしっかり音を合わせてくる。でも、たまに少しだけ外してしまう人もいます。でも、そういう人は二度と呼ばれることはなかったんですね。たとえ誰かの知り合いでも、たった1回の収録で成果が出せないとあっさり首をきられてしまう。目の前のチャンスをモノにしないと次はない――。組織のなかで働いてきた人間にとっては、なかなかシビアな光景でした。次がないというプレッシャーは、組織にいるとなかなか感じづらいけれど、独立した以上、1回ごとに成果を明確に出していかないと次はないんだと痛感しました。

最初にそういうシビアな世界に触れたことで、それ以降の仕事への意識や取り組み方が変わりましたね。ですが、たとえ会社員であっても、そういう危機意識を持つことは重要だと思うんです。それくらいの気持ちで取り組めば、必ず次の扉が開くと思います。

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教えてくれたのは…
藤川太さん
ファイナンシャル・プランナー。All About 資産運用ガイド。「家計の見直し相談センター」で10年以上にわたり1万5000世帯を超える家計の見直しを行ってきた。資産運用、家計管理、マイホーム購入、不動産投資などに精通。「普通の人」でもお金を貯める・増やせるようになる方法をアドバイスするFP。

取材・文/西尾英子

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