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ドイツビールとは?特徴と歴史、代表的な銘柄4選

ドイツと言えばビールの本場! 日頃はビール党でなくても、ドイツ旅行では是非ともビールを楽しみたいと思う人も少なくないはず。ビール初心者でもドイツビールを楽しんでもらえるよう、その伝統や特徴、代表的な種類(銘柄)、ドイツで注文するときのポイントやおすすめビールスポットなど基本情報をお届けします。

執筆者:尾方 綾子

ドイツビールとは?

ドイツビールの美味しさの隠し味は伝統へのこだわり

ドイツビールの美味しさの隠し味は伝統へのこだわり ©BBMC Tobias Ranzinger

ドイツと言えばビールの本場! でも、なぜドイツビールは一目置かれるビールなの?こう問われてドイツビールを語れてしまうあなたは結構なビール通ですね。でも今回は、熱烈なビール党より、これからドイツビールに出会う人のための入門編。美味しいドイツビールをさらにちょっぴり味わい深くする基本情報をお届けします。

<目次>  

約500年の伝統があるドイツビールの歴史

「ビール製造にはホップ、麦芽、水、酵母だけを使用すること」。ドイツビールの原料は法律でこう定められています。他国では風味を良くするためにコーンスターチやスパイスなどを加えることも普通ですが、ドイツビールに副原料はタブー。原料は4種類だけでも、ドイツビールのバリエーションと風味の豊かさは世界でも群を抜いています。

ドイツビールの原料へのこだわりには、約500年の伝統があります。起源は1516年にバイエルン公国で発布された「ビール純粋令」。これは粗悪品の横行を防ぎ、ビールの品質を守るための法律でした。ビール純粋令に則った醸造は、高品質のドイツビールの証として守り継がれ、21世紀の今日に至ります。

ビール純粋令が制定されたバイエルン公国があったのは、現在の地図ではミュンヘンを州都とする南ドイツのバイエルン州のあたり。9世紀頃にはすでにビール醸造が行われていた地方で、ドイツビールのふるさとです。バイエルン地方にある数々の歴史あるビール醸造所の中でも、1040年創業のヴァイエンシュテファン(Weihenstephan)は、現存する世界最古のビール醸造所として有名です。
 

年間ビール消費量は世界第3位!ドイツビールの今日

バリエーション豊かなドイツビールなら老若男女問わず誰でも好みのタイプが見つかるはず ©Malter, Erich/Tourist-Information Neumarkt

バリエーション豊かなドイツビールなら老若男女問わず誰でも好みのタイプが見つかるはず ©Malter, Erich/Tourist-Information Neumarkt

伝統を守り続けるドイツビールは、今も昔もドイツ人の毎日に欠かせない存在。各地にはそれぞれ自慢の地ビールがあり、現在、ドイツ全土に醸造所1300軒以上、5000種を上回る銘柄があるという統計があります。輸入ビールもありますが、ドイツ全体のビール消費量の7%程度。ドイツで愛されているのはやっぱりドイツビールです。

最近ではドイツ人のビール離れが徐々に進んでいるそうですが、それでも一人当たりの年間ビール消費量は約105リットルで世界第3位。ちなみにドイツ人一人当たりの水の年間消費量は約140リットルなので、ビールは水のように飲まれているみたいですね。参考までに、日本のビール年間消費量は、発泡酒等を加えても一人当たり約42リットルで世界55位。世界1に輝いたのはドイツ人もビール飲みの国と認めるチェコ。第2位は意外にもセーシェルでした(データはいずれも2015年の統計)。
 

ドイツビールの特徴!まろやかで甘みのあるタイプも

レーゲンスブルクの聖エメラム城内にある伝統あるビール醸造所 ©Foto-Design Ernst Wrba/DZT/Thurn und Taxis Regensburg

レーゲンスブルクの聖エメラム城内にある伝統あるビール醸造所 ©Foto-Design Ernst Wrba/DZT/Thurn und Taxis Regensburg

昨今では、ドイツ全国に流通し、日本へまで出荷されている銘柄もありますが、ドイツビールは本来すべて地ビール。水の硬度や麦の種類、ホップの品質、発酵方法などの違いから、各地で個性ある地ビールが醸造されています。地元の醸造所から届くフレッシュな地ビールの味わいは格別! ドイツ旅行ではぜひとも旅先のご当地ビールを味わってもらいたいものです。

ドイツビールの種類の踏み込んだ解説は別の機会に譲るとして、とにかく一目で分かる違いと言えば色。黄金色、黄色、琥珀色に黒などなかなかカラフル。濃色ビールは一見苦味が強そうな印象があるかもしれませんが、色は麦芽、苦味はホップに大きく左右されるので、色と苦味の強さは比例しません。また、濁ったビールもドイツではよく見かけます。これは酵母をろ過していない澱入りビールで、味わいがよりナチュラルだとか。

ドイツビールの平均的なアルコール度数は4.5~6%前後で日本のビールと似たり寄ったり。味わいは日本のビールよりまろやかで甘みのあるタイプも多く、苦味のせいでビールは苦手、という人でも親しみやすいと思いますよ。また、ドイツビールはキンキンに冷やすことはせず、8℃前後が飲みごろの温度です。
 

ドイツビール注文のポイント

ドイツで「ビール!」とだけ注文すると、すかさず「どのビール?」と突っ込まれますよ

ビールのチョイスに迷ったら、地元のおすすめなどを尋ねてみてもいいかも

ビールの分類も銘柄も多種多様なドイツビールは、ほとんどの飲食店で数種類置かれているのが当たり前。ビールの注文には種類を指定し、選択肢が複数あるなら銘柄やサイズまで具体的に注文するのがドイツ流。ドイツでビールと言えば生ビールが基本ですが、ワイン酒場など一部の例外では瓶ビールのこともあります。

飲食店でのメニューには、ビールの銘柄・種類・サイズ・値段の順に記載されていることがほとんど。銘柄は店によって千差万別ですが、ドイツで全国的に流通している数タイプと、あれば地ビールが用意されているのが通常。ドイツ全国どこでもメニューに登場するビールの種類を覚えておくと、注文もスマートにできますよ。
 

ドイツの代表的ビール、種類・銘柄

ベルリンの有名ビールブランド、ベルリナー・キンドルのビール ©Merten, Hans Peter

ベルリンの有名ビールブランド、ベルリナー・キンドルのビール ©Merten, Hans Peter

最低限この種類さえ知っていれば何とかなる! という最もポピュラーなドイツビールをチェックしてみましょう。ドイツビールは種類によってグラスの形状やサイズも異なるのがユニークなところ。それぞれのビールの特徴を、平均的なサイズや値段の目安と併せてご案内します。
 

ピルス(Pils)

ピルス ©Brauerbund Hessen/Rheinland-Pfalz e.V.

ピルス ©Brauerbund Hessen/Rheinland-Pfalz e.V.

日本のビールのほとんどはピルスナー。ドイツ語では「ピルス」と呼ばれ、最も人気の高いビールです。ドイツで飲まれるビールの65%はピルスで、透き通った黄金色、苦味とキレが特徴。アルコール度数は4.8%程度です。オーストリア帝国の町ピルゼン(現在ではチェコ共和国のプルゼニュ)で、バイエルン出身のマイスターが1842年に発明しました。

 

ヴァイツェン(Weizen)

南ドイツでもっぱら飲まれるのはヴァイツェン

南ドイツでもっぱら飲まれるのはヴァイツェン

中世以来、バイエルン地方を中心に南ドイツで飲み継がれてきた伝統のビールが「ヴァイツェン」。ヴァイツェンの意味は小麦。大部分のドイツビールには大麦が使用されますが、ヴァイツェンはその名の通り小麦を原料とするのが最大の特徴。バイエルンでは今でもビールと言えばヴァイツェンが常識です。

ヴァイツェンビールには色のバリエーションもあります。伝統的なのはヘーフェ(ドイツ語で酵母の意味)をろ過せず、濁りを残した「ヘーフェヴァイツェン(Hefeweizen)」で、色は淡色のヘル(Hell)と濃色のドゥンケル(Dunkel)の二種類。ヘルは黄色っぽく、ドゥンケルは琥珀色に近いです。酵母をろ過した透き通ったタイプもあり「クリスタル(Kristall)」と呼ばれます。

ヴァイツェンビールは香りがフルーティで、口当たりもマイルドですが、アルコール度数は約5.4%とドイツビールの中ではやや高め。思わずグイグイ飲んでしまうと、しっかり酔っ払ってしまうかもしれませんよ。

ヴァイツェンビールは500mlを縦長でくびれのあるグラスで飲むのがスタンダードですが、最近は300mlサイズもよく見かけるようになりました。
 

アルコホルフライ(Alkoholfrei)

ドイツの大手ビールブランドのひとつ、クローンバッハーのアルコールフリー

大手ビールブランドのひとつ、クローンバッハーのアルコールフリー

「アルコホルフライ」はドイツ語でアルコールフリーのこと(アルコールフリーと言っても0.5%未満の微量のアルコールが含まれています)。アルコールフリーにも種類があり、ピルスやヴァイツェン風のスタイルが多数派です。

残念ながら、アルコールフリービールは瓶で登場することも少なくありません。ピルスタイプだと330mlサイズが多く、ヴァイツェンタイプは500mlサイズが主流です。
 

ラードラー(Radler)

飲みやすさで女性にも人気のラードラー。見た目はビールとそれほど変わりません

飲みやすさで女性にも人気のラードラー。見た目はビールとそれほど変わりません

近年のドイツではビールベースのカクテルがトレンド。グレープフルーツやライムなどのフルーツジュースをビールにミックスした甘いカクテルです。味のバリエーションが増えたのは最近のことですが、ビールベースのカクテルそのものはドイツでは長らく愛されてきた飲み物。その最もクラシックなカクテルのひとつが「ラードラー」です。

ラードラーはヴァイツェンビールのヘル(淡色)とレモネードを1:1の割合でミックスしたタイプで、アルコール度数は2.5%程度。爽やかな味わいで、夏のビアガーデンなどでは特に好んで飲まれます。

 

ドイツビールはここで飲む!

ミュンヘンの有名ビアホール、ホーフブロイハウス © BBMC Tobias Ranzinger/ Hofbraeuhaus

ミュンヘンの有名ビアホール、ホーフブロイハウス © BBMC Tobias Ranzinger/ Hofbraeuhaus

どこで飲んでも美味しいドイツビールですが、せっかくならビール王国ドイツを体感できる場所で心ゆくまで酔いしれてみてはいかが? レストランやカフェ以上にドイツビールを美味しく感じられる場所へ、最後に少し立ち寄ってみましょう。

■クナイペ(Kneipe)
どんな小さな町にだって必ずあるクナイペは、カウンターのある素朴な雰囲気で、酒場という言葉がぴったり。食べ物は簡単なおつまみ程度しかなく、主役は生ビール! 品揃え豊富で美味しいビールをリーズナブルに飲めるので、学生から年配の人まで色んな世代の人が集まります。ビールだけでなく、地元の人々に触れ合ってみたい人にもおすすめ。お手軽に一杯だけ飲みたい時にも便利ですよ。

■ビアホール
ドイツのビアホールはビール醸造所の直営店や、ビール醸造所に併設されているのが主流。数百年の伝統あるものから、モダンなお店まで様々ですが、醸造所直送のビールと、ビールに合うドイツ料理を味わえるのはどこも共通。しっかりビールを楽しみたい人に特におすすめです。伝統あるビアホールが集中しているのは、南ドイツのミュンヘンで、中でもバイエルン王家の醸造所だったホーフブロイハウス(Hofbraeuhaus)は、観光スポットになっているほどの人気ぶりです。

関連記事:世界一有名なビアホール、ホフブロイハウスミュンヘン

■ビアガーデン
ドイツの夏と言えばビアガーデン! ドイツのビアガーデンは豊かな自然に抱かれながらビールを味わうのがお約束なので、新緑が美しい5月から、秋が近づく9月中旬までの期間限定。町の喧噪を離れ、森や水辺の自然の中、ビール片手にドイツの爽やかな夏を感じる至福のひとときを是非体験してください。ビアガーデンの場所は各地のツーリストインフォメーションなどで教えてもらえます。

■ビール祭り
ビアガーデンの季節が去ると、ドイツの秋の風物詩ビール祭りのシーズンです。ミュンヘンで開催される世界最大のビール祭り「オクトーバーフェスト(Oktoberfest)」は日本の観光客にも大人気! ミュンヘン以外でもドイツ各地で、9月中下旬から10月上旬にかけてビール祭りが開催されます。朝から晩までジョッキを手に乱痴気騒ぎを繰り広げれば、ストレスだって吹き飛ぶこと間違いなし!

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