現代アートを絵画、彫刻、といった形式やジャンルに分けて見ることは、もはやナンセンス。現代アートを見慣れていると、そんな形式やジャンルにこだわって、見る必要性がないからです。しかし、多くの人たちが「インスタレーション」の見方が分からないようです。今日は群馬県立館林美術館の学芸員の松下和美さんに、これまで企画をした展覧会での作品を例に、「インスタレーションの見方」を教えていただきます。

インスタレーション=空間に作品をインストール


1950~60年代「前衛」と呼ばれたアート作品は、「絵画=キャンバスに筆で絵具を塗る」「彫刻=鉄や木を削る/彫る」というルールに反抗して、つくられていきました。同時に「キャンバス」という決まった幅や素材のものからはみ出るような表現をしたい、とか、彫刻は台座に載ったものだけではなくて展示する場所全体が台座ではないか、といったように、アーティストたちは作品と空間の関係を考えるようになっていきました。こうした動きの中で「インスタレーション」は生まれました。パソコン用語で「ソフトをハードディスクに入れる」ことを「インストール」と呼びます。美術用語の「インスタレーション」も同じで、「作品(ソフト)をハードディスク(展示空間)に入れる」ことを指します。今回は群馬県立館林美術館にある、弧を描くような形をしたガラス貼りの展示室に、これまで展示した3つのインスタレーション作品を例に挙げます。

インスタレーションは空間を味わうもの


美術館の学芸員
は、展覧会を企画することを仕事にしています。今回お話を伺う松下さんに、まずは「インスタレーションとは何か」について、作品を見せる立場からどうとらえているかを聞いてみました。

「インスタレーションという手法による作品の有りようは、作家や作品によって異なるでしょう。展示空間へのアプローチを積極的に行う、つまり展示する空間の特性からスタートして考えて、一から作品を作る場合もあれば、全体の作品イメージが先にあり、展示する空間との掛け合いによって、その場、その場で異なる展示となる場合もあるでしょう」。

「鵜飼美紀+辻和美undefined光のかけら」展undefined展示風景(2005年)

「鵜飼美紀+辻和美 光のかけら」展 展示風景(2005年)


 
わあ、展示室全体にガラスの雨が降っているような、光が差し込んでキラキラして、夢の中にいる感じがします。キレイだけではなくて、まぶしい光と柱の影、ガラスの反射、見えないはずの空気、私を取り囲む空間、何もかもに対して反応してしまいます。

「ひとつの展示室に、ふたりのアーティストが一緒に作品を発表しました。天井からは、辻和美の涙の形をしたガラスが吊るしてあります。床には、鵜飼美紀の水をはったガラスの器が散りばめられています。この空間は、両者の作品が交差しています。そして個々のパーツが、展示室の内と外の風景、そこに入り込んだ自分の姿を映し出し、無限に広がります。身体と心の中とを見通すような感覚をもたらしました」。

体感という言葉は、こういうアート作品を味わうときにつかうのですね!

見て感じる「だけではない」インスタレーション


展示室に入ると、色の付いた紙と糊を渡されました。え?いったい何?ナニ?
「エコ&アート展」(2009年)よりundefined日比野克彦《DNA PLAIN》段ボール、紙、テント

「エコ&アート展」(2009年)より 日比野克彦《DNA PLAIN》段ボール、紙、テント


 
「この作品は、館林の大地をイメージした緑の平原を皆で作ろう、という作家のコンセプトのもと、展覧会の会期中、訪れた人が床に敷き詰められた段ボールに、緑や茶色の紙片を貼っていって完成しました」。

最近の展覧会では、鑑賞者の参加が前提になっている作品もあります。この日比野克彦の作品もそうでした。見に来た人たちが、作品を一方的に見るのではなく、触る、操作する、描くなどの行為で作品に参加しながら鑑賞するタイプの一例です。このような参加型の作品について、松下さんは「鑑賞者もときに作品の一部となる」ととらえています。

「他の人に『見られる』ことが億劫に感じることもあると思いますが、やってみないと分からないその経験こそ意味があるでしょう」。

もし展覧会で色の付いた紙と糊を渡されたら、どんどん貼って、参加していきましょう。手を動かす楽しみ、自分が作品協力した喜び、そしてそんなことをしているあなた自身も実は作品、という状況を面白く感じることができますよ。

会場を動き回って見る?!


「夏の蜃気楼」展(2005年)よりundefined稲垣智子《オアシス》undefined映像、砂、電化製品、サウンド

「夏の蜃気楼」展(2005年)より 稲垣智子《オアシス》 映像、砂、電化製品、サウンド


 
一見、何を意味しているか分かりにくいですね。

「これは、女性が芝生に夢みるように横たわる映像と、手前には、砂山に古い家電製品が置かれ、鳥のさえずりがサウンドで流れる。文明と自然、夢と現実について問う作品です」。

こういう作品の場合は、できる限り展示室を動き回りながら見ることをおすすめします。

「歩きながら変わる風景を感じ、気になったところで立ち止まって、その視点で見えてくるもの、自分が感じることを意識して、また動いてみる、を繰り返すことで、新しい発見や気づきが生まれます。この作品では、映像に出てくる女性のように、床に横になって見ていた方もいらっしゃいました」。

そう、ひとつの方向から見てもつまらないのがインスタレーションです。展示室をぐるぐる歩き回ったり、かがんだり、覗いたり、をしながら、「なんだろう」「私にはこう感じる」という気持ちを重ね合わせてみましょう。もう「インスタレーションは難しい」とは言わせませんよ!

■今後の展覧会スケジュール

群馬県立館林美術館では、以下のスケジュールを予定しています。

■開催中~2014年6月29日(日)
「陽光の大地―ブラジルの日系人画家たちと大岩オスカール
~兵庫県立美術館所蔵 リカルド・タケシ・赤川コレクションを中心に~ 」

■2014年7月19日(土)~8月31日(日)
「夏休み!いきもの図鑑」

■2014年9月20日(土)~11月30日(日)
「ペルシアのきらめき」

■2014年12月20日(土)~2015年4月5日(日)
「ダイアローグ-対話するアート」



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