NUSのElectronic Music Lab

ガイド:
ベン、ジェーン、今回のインタヴューができたのは奇妙な偶然です。現在、松見君(aka Breezesquad)と「世界のエレクトロ男女ペア」という記事を連載しています。現在、東欧辺りにおり、まだあなた達がいるシンガポールには到達していません。omikronさん(コバルト爆弾αΩ)が僕の記事を読んでくれて、彼が知り合いでもあるあなたたちのバンド、Cosmic Armchairについての情報を送ってくれたのです。omikronさんとはどのように知り合ったのですか?

ベン:
cosmicarmchair

Cosmic Armchair:(上)Ben, (下)Jane

私たちはomikronさんに紹介してもらい感謝しています! 彼はNUS(National University of Singapore)で修士課程を終えようとしています。コバルト爆弾αΩの二人の設立メンバーが彼に会うためここに来てくれて、私が主任講師をするElectronic Music Lab(NUSのベースに活動)にコンタクトしてくれたのです。一緒にNUSでイベントをオーガナイズして成功させました。そこで、コバルト爆弾αΩはパフォーマンスをするだけではなく、どのようにテクノロジーを使うかというワークショップもしてくれました。学生にとっては目から鱗でした。

ガイド:
お二人とも、NUS出身でElectronic Music Lab(EML)に参加していたんですよね。EMLについてもう少し詳しく教えてください。EMLは、シンガポールからより多くのアーティストを生み出す場所となりえるのでしょうか?
 
ベン:
私たちがNUSの法学部の学生だった頃、NUSセンターでアート・パフォーマンス集団だったEMLに参加しました。曲を作り、オリジナルの電子音楽を演奏する多くの機会を与えてくれました。卒業後、私は週末に集団にコーチングをしはじめ、現在、主任講師をやっています。EMLは学生たちが学び、音楽のアイデアをシェアするために集う機会を与えてくれます。EMLのメンバーの中には、自ら電子音楽のグループを結成する人たちもいます。最近では、OCEAN'S CHILDREN (ヴォーカル入りトリップホップ・ダブステップ3人組)やSKYSPRINTER(ソロのエレクトロニカ系音楽家)とか。彼らもイベントでコバルト爆弾αΩの前でパフォーマンスを披露しました。

ガイド:
エレクトロポップの分野では、このところ、より多くの男女デュオがいると感じています。このスタイルの音楽は、二人でも十分に成り立つからではないだろうかと。お二人は結婚されているんですよね? EMLで出会ったのですか?

ジェーン:
エレクトポップは二人でも十分成り立つというのには、私たちも全面的に賛成するわ(笑)。私たちは法学部とEMLで出会ったの。EMLでは各々違う個別の電子音楽プロジェクトを試みていて、時にはコラボしました。2008年に最終的にCosmic Armchairを結成することに決めました。

 


YMOのファン

ガイド:
日本では、テクノポップがこの分野の音楽を呼ぶための最も普及している用語となっています。エレクトロポップやシンセポップという用語が他の国々ではより普及していますが、Yellow Magic Orchestra等のお陰で80年代初期にテクノポップのブームがあったので、テクノポップという言葉は普及しました。この分野で日本のアーティストを知っていたり、好きだったりしますか?

ジェーン:
はい、ベンはYMOのファンで、『増殖』のアナログ・アルバムを今でも持っているわ。Kraftwerkのテクノポップ・アルバムをアナログでも持っています。

シンガポールのニューウェイヴ

ガイド:
あなたたちは、シンガポールのバンドとしてインタヴューする二組目となります。I Hate This Placeが最初で、バンド・メンバーのショーンが在日していた時に出会いました。彼らを知っていますか?

ベン:
janeandben

Jane & Ben

私たちはショーン、そしてI Hate This Placeとは2、3年ほど前に知り合いになりました。彼らはショーをオーガナイズしていて、彼らの前座として私たちを迎え入れてくれたんです。お互いの音楽を楽しんで以来、連絡を取り合い、お互いのショーに参加し、コラボの可能性について話し合ったりしています。実際のところ、ショーンとローマンの二人は先週(4月13日の週)あったEsplanadeでのショーに来てくれて、ショーが終わった後、いいおしゃべりが出来ました。

 

ガイド:
僕は、色々な国でのポップミュージックの歴史に興味があります。掘り起こしていくと、よく意外な発見をします。例えば、ロシアにもソ連時代にテクノ(エレクトロ)ポップのバンドが居たとか。ディック・リーが多分、もっとも有名なシンガポールのアーティストでしょうが、80年代のシンガポールにエレクトロポップやニューウェイヴ系のアーティストはいたのでしょうか?

ベン:
80年代における最も知られたシンガポールのニューウェイヴ・バンドは、Zircon Loungeです。彼らは1983年に『Regal Vigour』というアルバムをリリースしました。設立メンバーのクリス・ホーは、X’Ho、Zircon Gov Pawn Starzといった様々な名義でレコーディングをしました。

Zircon Lounge - Chanachai (YouTube)

10年後の90年代において最も顕著なシンガポールのエレクトロポップ系バンドはClub Ecstasyです。1993年にアルバム『MIDI Genetics』、1994年に『Virtuoso Of The Infinite Acid Bath』を発表しています。後に、シンガポールのアイドルコンテスト最終選考者のマイア・リーをリクルートして、The Unusual Suspectsを結成し、ローカルラジオ局で3つの曲が1位となり、日本やヨーロッパでもシングルをリリースし、スカンジナビアでもエアプレイされました。グループは解散してしまいましたが、メンバーの一人だったジェフリー・ローは彼のスタジオで私たちのシングル「I Don’t Belong Here」のレコーディングとミックスをしてくれました。彼は、次のアルバムでレコーディングとミックスもやってくれることでしょう。

THE USUAL SUSPECTS
(SPOTIFY) 

 

現在のシンガポール・シーン

ガイド:
現在のシンガポールのポップミュージックのシーンをどのように捉えていますか? シーンを盛り上げるためのスペースやイベントはあるのでしょうか? シンガポールで活動していて、良い点と良くない点があれば、教えてください。

ベン:
cosmicarmchairlive

Cosmic Armchiar Live

シンガポールのインディーズ・シーンは小さいです。良いインディー系バンドはいるし、インディー系バンドを迎え入れるいくつかのハコがあります。小さなパブ、カフェ、クラブからEsplanadeのような大きな国のコンサート場まであります。シンガポールが私たちの地元で、多くの友だちがいるから、ここで演奏するのを楽しんでいます。でも、私たちの多数の聴衆はシンガポールの外に居るのが分かっているから、日本、中国、オーストラリア、ヨーロッパ等で機会があれば、ぜひやってみたいです。

 

ガイド:
janeandben

Jane & Ben

今まで見てきたあなたたちの写真から察するに、二人ともフォーマルな着こなしが好きみたいですね。特にベンはいつもスーツとネクタイ。実際、そのような着こなしは80年代のテクノポップ・ニューウェイヴ系アーティストによく見られました。あなたたちのファッションポリシーは?

 

ジェーン:
私たちのファッションはテクノポップやニューウェイヴ系のアーティストに影響されているわ。ドレスアップするのが好きだし、ヴィジュアル的にも私たちを際立たせてくれます。

最新EPを聴いて

ガイド:
asecondlook

A Second Look

あなたたちのセカンドEP『A Second Look』は楽しんで聴きました。ヨーロッパの哀愁を帯びたエレクトロポップの精神を引き継ぎつつ、トランスっぽいスタイル(特に「Conversations」「Grey」)とブレンドされていますね。今日のスタイルの音楽にはどのように行き着いたのですか?

A Second Look (amazon.co.jp)

 

ベン:
あなたが正しく観察したように、私たちは英国やヨーロッパのテクノポップやニューウェイヴ楽曲に影響されています。例えば、Pet Shop Boys、初期のDepeche Mode、そしてTears for Fears等。彼らのメロディーやサウンドを楽しんでいますから。ZeddやArmin Van Buuren等の今のトランス系サウンドも、メロディーと質感のあるサウンドという点から好きです。私たちの作る音楽は、これらの影響を反映しています。

ガイド:
「Take You Home」はよりトラディショナルですね。とてもスウィートで僕の琴線に触れます。メロディーはあなた方の音楽の重要な要素だと感じます。何らかの憧れのようなものはあるのでしょうか?

ジェーン:
曲を気に入ってくれて嬉しいわ。アメリカのボストンにしばらく居た時、とても寒い冬で、その間に曲を書きました。ちょうどシンガポールに帰国することを楽しみにしていた時なんです。

 


Alfa Matrixとの契約

ガイド:
ベルギーをベースにするAlfa Matrixと契約したと理解しています。このレーベルは知っています。エレクトロポップやダークウェイヴ系のアーティストのいいラインナップが揃っていますね。どのような経緯で契約に至ったのですか?

ベン:
「Conversation」という曲を彼らに送った時が、Alfa Matrixとの最初の出会いでした。その曲を『Absolute Grrrls Manifesto』というコンピレーション・ボックス・シリーズに選曲してくれました。それで、私たちの気分は盛り上がりました。Marsheux, I:Scintilla、Psy’Aviah、Lovelorn Dolls、Grendel等と共に選ばれ、国際的オルタナティヴ・アンダーグラウンド音楽シーン(ニューウェイヴ、インダストリアル、ポップロック、エレクトロ、シンセポップ、EBM、テクノ、ゴシックメタル)から女性ヴォーカル・バンドとして唯一のアジアのバンドになったのです。

Conversation (YouTube)

後に、Alfa Matrixのアーティストマネージャーのセバスチャン・ドリモントからレーベルの新しいバンドであるスペインのエレクトロ系Mondträumeのリミックスをしてくれないかとの依頼があったのです。彼らの曲に私たち独自のシンセポップ・エレクトロ・EDM的解釈を与えるのは、アーテイストとしての挑戦でした。でも、この曲が気に入ったし、国際的に知名度を上げるにはいいチャンスなので、やることにしました。2、3の違う音楽的方向性への遠回りをした後、彼らの曲「Life Is Short」のクラブリミックスを作り上げました。結果、気に入ってくれました!

Life is Short - Cosmic Armchair Club Remix (BandCamp)

そこから数珠つなぎに事が起こりました。リミックスが公開されて1、2週間後、もう一つのAlfa Matrixのアーティストである英国出身のSimon Carterがそれを聴いてくれて、彼の曲のリミックスをして欲しいと依頼されました。より多くのAlfa Matrixのアーティストがヨーロッパから私たちに電子メールしはじめ、色々なコラボやリミックス・プロジェクトを提案した頃、私たちはかろうじて彼の歌「Reasons」のリミックスを終えました。

Life is Short - Cosmic Armchair Club Remix (BandCamp)

その頃、「Alfa Matrixは私たちをフルタイムのリミキサーとして契約するべきだ」とお互いに冗談を言い始めていました。そして、今年の頭に、彼らは実際にオファーしてきたんです。

 


より多くのリスナーに向けて

ガイド:
あなたたちは独立して今までやって来ています。Alfa Matrixに加入することに躊躇は無かったのでしょうか?

ベン:
自分たちの独立性を犠牲にしないかどうか注意深く考えなくてはいけなったので、すぐに決められませんでした。でも、Alfa Matrixでのチームはビジネスについて率直だったし、アーティストが音楽製作に集中できるように信頼とコミニュケーションを築いていく事を優先する事を確証してくれました。彼らはアーティストとしての自由にオープンで柔軟でした。

長年の間、Front 424、Bruderschaftなど伝説のバンド、そして最近のDepeche Modeのエレクトロカヴァーをしたトリビュート・コンピなど、Alfa Matrixのアーティストによる音楽を購入し、聴いてきました。だから、この契約は私たちの曲が国際的なエレクトロニックミュージック市場への用意が整っているという確認でした。

この契約は、Alfa MatrixのCDと配信両方の販売チャネルのネットワークを通じて、ヨーロッパ、米国、日本、中国でより多くの人の目と耳に触れる事を可能にしてくれます。彼らは、ヨーロッパのエレクトロニックミュージック・シーンでその分野のDJやメディアの中で強いブランドです。私たちのような音楽が好きなリスナーへより際立った認知を与えてくれます。

ビジネスの観点と私たちの音楽をプロモートする事を考えると、経験のある人材と一緒にやれる事には意義があります。Cosmic Armchairを始めた時、ビジネスもプロモーションも友だちや何人かのフリーのプロの手助けを得ながら、自分たちでしましたから、大きなチームを持つ事はプラスになります。

ガイド:
Alfa Matrixからの新しいリリースとなる予定の「I Don’t Belong Here」を聴きました。より多くの聴衆にリーチするチャンスとなるので、このリリースに当たっては何か意識的にやった事はあるのですか? それとも、いままでの自分たちのままでやったのですか?

ジェーン:
このレコーディングは実際Alfa Matrixとの話が始まる前にしたものですから、変更はしていません。他の人たちと意見の相違を経験した時にこの曲を書いたのです。歌詞は、私たちの哲学「本当の人生はこれだけではないと知っている~時には試行錯誤で生きていかないといけないけど、本当の人生は自分たちが今経験していることだけではない」という意味を含んでいるの。人生は大きな視野で正しい展望を持ってこそ最善となると信じています。それがバンド名、Cosmic Armchairの意味の一部でもあるの。

将来のリリースに関しては、より多くの聴衆が何を望んでいるか予測する意味はないので、自分たちのアーティストとしての選択に忠実でいるつもりです。

ガイド:
昨今、世界はどんどん小さくなっています。いつか来日される事を希望します。もし願いや予定があれば、教えてください。

ベン&ジェーン:
私たちは、日本で演奏する事を切望します。機会を模索する事にもオープンです。もし何らかの提案があれば、ぜひ知らせてください! ありがとうございました!

【関連リンク】
Cosmic Armchair (official)

【関連記事】
I Hate This Placeが再来日!(All Aboutテクノポップ)
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。