動物と長く一緒に暮らすということを考える『クロはぼくのいぬ』

絵本『クロはぼくのいぬ』に登場する、黒い犬の「クロ」は20歳。主人公の「だいちゃん」のお父さんが、小学校6年生の時に、生まれたばかりの子犬を公園で拾いました。犬の20歳は人間の歳にしたら100歳前後。姿にも動きにも子犬だった時のような愛くるしさはありません。クロと一緒に成長してきた幼稚園児のだいちゃんは、ある出来事をきっかけに、クロがかけがえのない存在であることを再認識します。

 


家族の歴史を見つめてきたクロ

クロはお父さんと一緒に成長してきました。人間の成長より犬の成長の方が速いですから、1年もたたないうちにお父さんに追いつき、2年もたてばお父さんを追い越して大人になってしまったでしょう。クロと一緒に遊び、クロが見守る中、お父さんは大人になり、お母さんと結婚してだいちゃんが生まれます。お父さんの成長を見守ったクロは、新しい家族がやってきたことを尻尾を振って喜び、だいちゃんの遊びやおしゃべりの相手になって、再び成長を見守ってきました。そして毎日、おじいちゃんと一緒に、ぼくの幼稚園までの道のりを送ってくれてきたのです。

おいぼれ、きたない……。クロに対する、悪気はないであろう友だちの言葉を聞いて、だいちゃんは憤慨します。生まれてからずっと一緒に暮らしてきただいちゃんにとっては、クロは大人になって年老いて、若いころのようなはつらつさはなくなっても、理解し合える大切な家族。しかし、だいちゃんもクロの老いを少しずつ意識していきます。


クロは「ペット」ではない

表と裏の表紙の裏には、元気だったころのたくさんのクロの姿が描かれています。お父さんが子どもの頃の活発だったクロ、だいちゃんと一緒にお散歩に行ったり、だいちゃんの話をたくさん聞いてくれたりしたクロはもういません。急に老け込んでしまい、呼んでも反応せず、散歩にも行かず、1日中居眠りばかりしているようになったのです。そんなある日、クロが姿を消してしまいました……。

だいちゃんは、一緒に遊べなくても家にいてくれるだけでいい、呼んだときに反応しくれなくてもいい、と思いながら、見つかったクロを抱きしめます。だいちゃんにとってクロ=ペット=愛玩動物であったら、このような気持ちはわかないでしょう。親子2代にわたって、あふれるほどの愛情を注がれてきた家族、クロ。もしお子さんが「動物を飼いたいな」「犬を買って!」とせがむことがあったら、ぜひ、動物と長く暮らすということについて、クロの姿を見ながら時間をかけて話し合っていただければと願います。


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