*目次*
  • 小野田龍之介インタビュー(2018年)本頁
  • 小野田龍之介インタビュー(2014年)2頁
  • 『Love Chase!!』観劇レポート(2014年)3頁
小野田龍之介 91年神奈川生まれ。幼少から学んでいるダンスと圧倒的な歌唱力を武器に、ミュージカルを中心に活躍中。近年の出演作品は、『ウェストサイド物語』『三銃士』『ミス・サイゴン』『メリー・ポピンズ』など。11年のシルヴェスター・リーヴァイ国際ミュージカル歌唱コンサート・コンクールではリーヴァイ特別賞を受賞。『ラブ・ネバー・ダイ』の後には『レ・ミゼラブル』への出演が控えている。(C)Marino Matsushima

小野田龍之介 91年神奈川生まれ。幼少から学んでいるダンスと圧倒的な歌唱力を武器に、ミュージカルを中心に活躍中。近年の出演作品は、『ウェストサイド物語』『三銃士』『ミス・サイゴン』『メリー・ポピンズ』など。11年のシルヴェスター・リーヴァイ国際ミュージカル歌唱コンサート・コンクールではリーヴァイ特別賞を受賞。『ラブ・ネバー・ダイ』の後には『レ・ミゼラブル』への出演が控えている。(C)Marino Matsushima

こつこつと舞台出演を重ね、近年は『ウェストサイド物語』『ミス・サイゴン』等、様々な大作ミュージカルで活躍中の小野田龍之介さん。今年も『ラブ・ネバー・ダイ』『レ・ミゼラブル』と大作続きの彼に、充実の日々についてうかがいました。
 
精神的・肉体的な苦しさと戦った『ウェストサイド物語』

――小野田さんは劇団四季の『ウェストサイド物語』(2016年)にも出演されたのですね。
 
「ある時、“劇団四季の作品に興味はありませんか”とお尋ねいただいて、“僕はたくさん拝見して影響を受けましたし、機会があればもちろんやらせていただきたいです”とお答えしたら、“一度歌いに来てください”ということになったんです。『オペラ座の怪人』の“All I ask of You”と『美女と野獣』の“愛せぬならば”を歌ったところ、“近々『ウェストサイド物語』をやるのですが、もし興味があるようでしたらトニー役のオーディションを受けてみませんか? 演出家が海外から来て、がらりと演出が変わります”と言われました。
 
お声をかけていただき嬉しい反面、一瞬考えましたね。『ウェストサイド物語』にしても『オペラ座の怪人』にしても、世界各地で声楽にたけた俳優さんがなさっている演目ですが、僕は専門的に音大に行ったわけではないので、できるのかな、と。でも、チャレンジはしてみようということで、“やってみます”とお答えしました。(準備をして)オーディションで“マリア”を歌ったところ、アメリカ人の演出家からOKをいただきました。
 
『ウェストサイド物語』と言えばミュージカルの原点ですから、携われたことは大きな財産になりました。やってよかったと思います。ただ、苦しかったですね。トニー役の先輩から“トニーは肉体的にも精神的にもすごい苦しい役だ”と聞いていて、覚悟はしていたのですが」
 
――苦しいというのは、どの点が?
 
「人種差別という背景があるなかで、トニーとマリアの恋は誰にも認めてもらえず、孤独なんです。祝福されない恋ってこんなに苦しいんだな、と人生勉強をさせていただきましたね。それにトニー役として一度ならず、(公演期間中)何度も何度も撃たれて死ぬのは、やっぱりつらかったです。愛するマリアが死んだと思ってたら生きていた、喜びが込み上げた瞬間に撃たれてしまうわけですから。彼女の腕の中で死ねるのはトニーとしては幸福だけど、愛する人の涙を見ながら死ぬというのはね。やっぱり祝福されない愛はやめようと思いました」
 
キム役との関係性を大切に演じた『ミス・サイゴン』

――『ミス・サイゴン』(2016年。観劇レポート、舞台写真はこちら)ではクリス役に挑まれました。
 
「初演からエンジニアを演じている市村(正親)さんとご一緒出来、これも大きな財産になりました。稽古に入る前は何年も上演されてきた作品に加わるということでものすごく緊張しましたし、“覚えるの遅いな”とか思われたらどうしよう、と心配でしたが、有難いことにカンパニーには以前ご一緒して気心の知れた方ばかりだったし、楽しくお稽古できました。この年から来日する演出補の方が変わって一から作っていったので、タイミング的にも良かったのかなと思います。
 
韓国から来たキム・スハさんとの共演も、僕にとってはクリス役を作るのに大きな役を果たしていました。『ミス・サイゴン』はアメリカ人とベトナム人の話ですが、僕と彼女も日本人と韓国人という“異国”感があるなかで、初めて歌合せをした時に、“彼女にわかるように言葉を伝えていこう”と思えたんです。(出身国が違うからこそ)丁寧に相対する。これを大事にしよう、と思いました。キムさんと共演させていただけたこともすごく大きかったです。」
 
――キムとの生き別れを描くシーンは絶唱と絶叫がないまぜになっていて、喉への負担も大きそうな役ですね。
 
「絶唱は多いですよね。『ミス・サイゴン』では、とにかく音楽性を大事にしようと思って挑みました。台詞にすることも叫ぶのも簡単だけど、まずは音楽の中でそれを表現できないかなとチャレンジしていって、その中であふれ出てしまったものだけ“叫び”にするよう心掛けましたね」
 
『メリー・ポピンズ』での久々の三枚目役

――『メリー・ポピンズ』(2018年。観劇レポート、舞台写真はこちら)では一転、コミカルなロバートソン・アイを演じました。
 
「非常に楽しんでやらせていただきました。『Love Chase!!』などもそうでしたが、僕はこれまで“色物”の役をやらせていただく事が多かったです。しかし、ここ数年は“大道”の役が続き、ここでまたそういう役を挟むのもいいかなと思ったんです。ダブルキャストが芸人さんのもう中学生さんということもあって、“そういう発想もあるのね”と驚いたり、非常に刺激的でしたね。英国からプロデューサーのキャメロン・マッキントッシュさんやオリジナルの演出家も来てくださり、本当に大作でした。その時のメリー・ポピンズ(濱田めぐみさん、平原綾香さん)とは今度『ラブ・ネバー・ダイ』で夫婦役を演じるので、運命も感じつつ、楽しく大切に演じていきたいと思っています」
 
――小野田さんは今、27歳ですか。
 
「はい、27になりましたね」
 
――まだ20代ですのに、なんと落ち着いていらっしゃることか(笑)。
 
「よく言っていただきますが、実際は全然落ち着いていませんよ(笑)」
 
――『Love Chase!!』の時に、演出家の玉野和紀さんが“まだ若いから30手前で主役をできるようになればいいんだよ”とおっしゃっていましたが、既に数々の大役をこなしていらっしゃいます。ご自分ではどう感じていらっしゃいますか?
 
「僕自身は主役願望があるわけではないんです。ただ、子供のころからこの仕事をやっていると、まだまだ若いという目で見られがちだったのが、がらりと変わったのが、『ミス・サイゴン』でした。クリスをやったことで、やっと大人の俳優として見ていただけるようになったと感じた部分はありましたね。
 
主演だから脇だからということは関係なく、とにかくいい役、いい作品とたくさん出会っていきたいし、それは役者の力と器だと思います。そこをしっかりと磨きつつ、今後も必要とされていく俳優であり続けたいと思います。若いうちからいろいろな役を任せていただいている、それはきっと特別な、有難いことだと思うので、大切に時間を過ごしていきたいですし、次に出演する『ラブ・ネバー・ダイ』しかり、これから出会っていく作品と向き合っていきたいです」
 
”いつか”到達したい頂点

――以前、目標とする役として挙げていたのが……。
 
「『シラノ』でしょ、それは変わらないです。市村(正親)さんもシラノをされているじゃないですか。やはり僕が憧れる俳優さんは僕の憧れる役もなさっているんだなと思いますけど、やっぱりいつか、シラノを素敵に演じられるようになりたいですね。若くしてやりたいとは思っていなくて、歳を重ねた時に、です。もちろんファントムとかいろいろやりたい役はありますが、そのなかでもシラノって独特ですよね。一つの頂点というか、歳を重ねた時の目標として掲げて、そこに向かっていろんな役をやっていきたいです。
 
俳優って2時間、3時間の中で壮絶なドラマを演じる職業ですが、たくさんのドラマ、人生を演じていって、歳を重ねた時にはかない役をやりたいという意味で、シラノに憧れていますね。でも、最近もう一つ、いい役に出会ったんです、(『生きる(特集記事はこちら)』の)渡辺勘治という」
 
――おっしゃるんじゃないかと思っていました(笑)。
 
「思ってました?(笑)。結局は市村さんや鹿賀(丈史)さんのような俳優になっていきたいんだと思います。シラノをやりたい人は渡辺もやりたいんだと思うんですよ。ああいった、はかない一人の男の人生を演じるというのが、僕の目標です」
 
*小野田さんの『ラブ・ネバー・ダイ』ラウル役についてのインタビューはこちら(←リンクを貼ります)

*次頁で2014年『Love Chase!!』稽古中の小野田さんへのインタビューをお届けします!

 

小野田龍之介インタビュー(2014年)

小野田龍之介 91年神奈川生まれ。幼少からダンスを学び、舞台で活動を始める。ミュージカル『葉っぱのフレディ~いのちの旅』『テニスの王子様』『ドラキュラ』『新オオカミ王ロボ』『フットルース』『ザ・ビューティフル・ゲーム』など、多くのミュージカル、コンサートに出演。11年のシルヴェスター・リーヴァイ国際ミュージカル歌唱コンクールでは特別賞を受賞。(C) Marino Matsushima

小野田龍之介 91年神奈川生まれ。幼少からダンスを学び、舞台で活動を始める。ミュージカル『葉っぱのフレディ~いのちの旅』『テニスの王子様』『ドラキュラ』『新オオカミ王ロボ』『フットルース』『ザ・ビューティフル・ゲーム』など、多くのミュージカル、コンサートに出演。11年のシルヴェスター・リーヴァイ国際ミュージカル歌唱コンクールでは特別賞を受賞。(C) Marino Matsushima

人間界に降りてきた悪魔があちこちで起こす恋の騒動を描くミュージカル・コメディ『Love Chase!!!』。この日、稽古場では、さえない女の子が男性を紹介してもらえることになり、勇気を出して出かける場面がじっくりと練られていました。全体の様子を見た後で、演出家の玉野和紀さんは細かくディレクション。とりわけ、女の子が会う予定の青年と連れだって登場する友人3人衆に様々な注文を出し、その一人を演じる小野田龍之介さんは「こういうことですか」とすぐに応じ、芝居を膨らませていきます。人気ショー『CLUB SEVEN』シリーズで玉野演出は経験済みということもあってか、若手キャストの中でひときわ頼もしそうな存在に見えた小野田さん……ですが、後でカンパニー最年少であることが判明しました。
 

大笑いしながらも、ほろりとする作品に

――資料を拝見したら1991年生まれとのことで、まだ23歳なのですね。

「いえ、22で、7月に23歳になります。まだ22歳なの?とよく驚かれます。『Love Chase!!』のカンパニーでも、実は廣瀬大介君と僕が一番年下なんですが、信じてもらえません(笑)。自信が無いのに自信があるとか、緊張しているのに緊張してなさそうと思われたり……。なぜなのか、僕も知りたいです」

――今回、『Love Chase!!』ではどんなお役なのですか?

「一言で言えば“盛りだくさん”の役。若い男の子が、いろいろな愛の形を経験していくのですが、僕だけでなく全員がいろんなことをやる作品で、いったん舞台からはけてもすぐ違うことをしに出てきて、歌ったり踊ったり芝居をしたりで、休む暇がありません(笑)。いろいろなことが起こって、最初はお客様は“なんのこっちゃ”と思われるかもしれませんが、全てが伏線で繋がっていて、その意味が1幕の最後に分かる。お客様にどんどん前のめりになっていただけるよう、テンポよく僕たちが運んでいければと思います」
『ラブ・チェイス!!』

『Love Chase!!』

――2幕にはシェイクスピアをモチーフにした部分もあって、楽しいですね。

「名作の有名な台詞が出てきたりもするのですが、今回、僕は役作りというより、“小野田龍之介”として居ようと思っています。小野田龍之介がいろんな恋愛を通して勉強していく、というか……。ただ、玉野さんには強く言わせて頂きたいのが、今回僕は恋が一つも実らない設定なんですよ。廣瀬君と僕とで同じ職業の役を演じて、廣瀬君だけかわいく結ばれるシーンがあるんですが、そこで玉野さんがおっしゃったのは、“龍(之介)は得意でしょ、こっちのポジション”。ちょっと下世話な3枚目ということで、思わず“そっちですか!”と言っちゃいました。でも、2幕でほんの少しの間恋人がいる状況があるので、そこはめいっぱい楽しんで愛する喜びや苦悩を感じて、その後どーんとどん底に落ちれたらと思います(笑)」

――どんな舞台にされたいですか?

「実は僕、今回、本読み稽古の時に泣きそうになっちゃったんです。恋愛もそうですが友達とか、人間関係において忘れかけていた大切なことが作品に含まれていて、ついほろりとしてしまったんですね。後で玉野さんに話したら“そうだよね、今回はご覧になる方もほろりとするか、(登場人物たちが)バカだな~と大笑いするか、どちらかだよね”とおっしゃっていました。大笑いしながらも、ほろりとしていただける作品になればと思います。ラブが、心に沁みていただけたらいいですね」
 

ディズニー・ショーに憧れてミュージカルの道へ

――これまでの道のりも伺いたいのですが、小野田さんは10歳の頃から舞台に出ていたのですね。

「もう少し早かったかな。小学校2,3年生の頃からです。母親がダンサーだったこともあって、ダンスは身近だったし、イベントなどに声をかけていただくことも少なくなかったんです。最初に憧れたのは『おかあさんといっしょ』の歌のお兄さん。僕の頃は坂田おさむさんが歌のお兄さんで、よくマネしていました。その後、ディズニーランドでショーを観て、すごく幸せな気分になり、“僕もこうやって人を楽しませる人間になりたい!”と思って、練習を積んでいました。

そうこうするうちに、“そんなにダンスが好きならうちのスタジオに来ませんか?”とプロのダンススタジオの方に誘われて、行ってみたらディズニー・ショーのダンサーの方や元宝塚、元劇団四季の方々がたくさんいるところで。そこから徐々にプロのミュージカルに出演するようになっていきました」

――外から見るのと実際に経験するのとでギャップはありましたか?
 
『新オオカミ王・ロボ』(13年)ビンゴ役

『新オオカミ王・ロボ』(13年)ビンゴ役

「なかったですね。大変なのはもちろんですけど、舞台に出た時の喜びというのはお客さんとして観て得る喜びの倍以上あるので。最近、年下の人たちから“小野田さんと共演したくてレッスンしてます”と言われることがあって、かつてディズニーのダンサーたちに憧れた頃の自分を思い出して、とても幸せな気持ちになります。しんどさはもちろん毎日感じているけど、やめようと思ったことは今まで一度もありません」

――転機になった作品は?

「最近では『パルレ~洗濯~』というミュージカルです。今回共演している野島直人さんとWキャストで、初めて海外の演出家と仕事したんです。韓国人の彼は基本的には演劇の演出家で、その手法はとても勉強になりました。例えば、屋上で好きな人を思い浮かべながら洗濯物を干して歌うシーンで、気持ちが盛り上がるので僕もうわ~っと歌っていたら、演出家さんが「龍之介さん、ここはどこですか」と言う。「屋上です」「屋上でそんな声出してたら通報されちゃいますよ。鼻歌を歌うくらいでいいです」。

もちろん、それはその演出家のやり方で、それがすべてではないと思いますが、それまで大きな劇場でやらせていただくことが多かったので、「声って大きく出さなくてもいいんだ」というのは大きな発見でした。それまでは、10代でとにかくエネルギッシュにやることが多くて、若い俳優が出させていただく意義ってとにかくエネルギーを出し切ることだから、それでよかったのですが、『パルレ』をきっかけに内に秘めた役もやらせていただくようになって、新たなお芝居の楽しさを感じられるようになりました」

――2011年にシルヴェスター・リーヴァイ国際ミュージカル歌唱コンクールに出場されたそうですが、どんな経緯だったのですか?

「当初ハンガリーで、ヨーロッパ人だけを対象に行う予定だったそうですが、リーヴァイさんが来日された折に“日本からも出場者を募りたい”ということで急遽俳優が集められ、日本代表のオーディションが行われたんです。『エリザベート』のルドルフの曲と『モーツァルト!』の「僕こそミュージック」を歌ったら、翌日、選ばれたからハンガリーに飛んで下さいと言われました。

セルビアのスボチカ市でまず準決勝があったのですが、出場者は100人以上で、二日間にわたって行われました。僕は二日目だったので一日目は客席で聴いていたら、まるでコンサートに来たみたいに皆うまいし、審査員席にはリーヴァイさんはもちろん、『エリザベート』のタイトルロールを演じたマヤ・ハックフォールトさんを始め、有名な方々ばかり。二日目、僕はちょっと(海外風の歌唱の)真似をしてみようと思って、やり過ぎなくらいに歌ってみたら、決勝に進めることになって、ハンガリーでの決勝でも特別賞をいただくことができました。後で、出場者はヨーロッパで『春の目覚め』や『ロミオ&ジュリエット』で主役を演じている俳優ばかりだったと聞いて、そういう中で賞をいただけて光栄だし、本当に音楽に国境はないんだと感じました。この時出会った人たちとは今も交流が続いています。このコンクールも僕にとっては大きな転機です」

――“やり過ぎな歌唱”が出来るということは、海外ミュージカルに向いていらっしゃるのですね。

「リーヴァイさんやワイルドホーンさんの作品が好きです。今まで自分が歌って一番好きだったナンバーは、ワイルドホーンさんの『ドラキュラ』で精神病患者のレンフィールドが歌うナンバー。20歳になりたての頃だったので、ぐいぐい歌ってしまったけど、今ならもう少し違った風に歌えるかもしれません。ぜひもう一度やってみたい役です」

――小野田さんは様々な役を手堅く演じていますが、今後、自分の中で得意にしたい役どころは?
 
『ザ・ビューティフル・ゲーム』撮影:近藤明子/(C)スマートボーイズ

『ザ・ビューティフル・ゲーム』撮影:近藤明子/(C)スマートボーイズ

「王子様系より、変わった役が面白いです。ミュージカルなら『エリザベート』のルキーニとか、大好きですね。狂言回しで、人を斜めから見ている。きれいな役よりロックな役とか苦悩する役が好きなんですよ。『エビータ』のチェや、『ジーザス・クライスト=スーパースター』のユダもやってみたいです。年齢的にはルドルフだとかウォルフガングを目指すべきなのかもしれませんが……。でも、最高級に目指しているのは、『シラノ』です。二枚目でも何でもないけど、一筋に人を思ったり、自分の意思で生きていくこの役が、男から観てもカッコよくて、歳を重ねたらぜひ到達したい役です」

――最近のスケジュールを拝見すると、一つの作品が終わって1カ月足らずでまた次の舞台が開幕といった具合に、大変な売れっ子ぶりです。

「ありがたい事です。でもいろんな作品に巡り合うということは、いろんな人生を送れるわけで、スケジュールが重なると大変ではあるけど、舞台に立てば“楽しい!”と思えるから、全然苦ではありません」

――今後、役者の道をどう歩んでいこうと思っていらっしゃいますか?

「最近、共演者からちょっと教えてもらったことが影響して、少し歌唱法が変わってきたんですよ。そういうことがあると、一か月どこかに留学したり、どこかの劇団に属してみるといったことも体験してみると、さらにいろんな表現が身について大きくなっていけるのかなとも思ったりします。

一つ一つの役との出会いを大切にすることはもちろん、プライベートでもいろんな人に出会って、妥協しない人生を送りたいです。そういう中で大人の魅力だったり、ダンディさが生まれてくるのかと思っています。自分の信じた道を懸命に歩いていきたいです」
 

演出家、玉野和紀さんが語る“役者・小野田龍之介への期待”

その後、名ダンサーでもある本作の演出家、玉野和紀さんに、小野田評をうかがいました。玉野さんの人気ショー『CLUB SEVEN』シリーズでも起用され、小野田さんは玉野作品の常連俳優となりつつあります。

――小野田さんを今回起用されたのは?

「龍は若手だけど歌えて踊れる。そういう人材が今回必要だったんです」

――どんな役者でしょうか?

「もちろん若いからこれからではあるけれど、小さい時からやっているので踊りとか歌とかテクニカルなことは備わっている。これから内面を磨いていけばと思います。
 
『CLUB SEVEN 9th Stage!』写真提供:東宝演劇宣伝部

『CLUB SEVEN 9th Stage!』写真提供:東宝演劇宣伝部

でも全然焦ることはありませんよ。プリンシパル(主役)が出来るレベルではあるけど、逆にそれをやらないで、しっかり下積みしていけばいいなと思って見ています。30歳前にいい役がつけばいいわけで、それまではまだまだ勉強することはいっぱいあります。テクニカルなことだけではなくて人間的な部分、それがお芝居になってくるんですよ」

――どう成長していきそうでしょうか?

「まだまだ未知ですよね。若手で踊れる人間が少ない中で、彼は踊れるので希少価値は高いと思います。踊りのニュアンス含め、いろいろ勉強し続けていけば、ある日ぼっと大輪の花が咲くのではないかな。

今は人気があれば10代でもとりあえず主演させるような世の中になってきているけれど、それは本人にとっては良くないんですよ。身についているものがないから、30歳でもうキャリアが終わってしまったりする。僕たちが若いころは、20代はレッスンの日々で、実力がないと出られなかったし、いい意味の年功序列で、うまく踊れても先輩が前というのがあったけれど、それが良かったような気がします。出た時には本当にうまくなっていて、50、60(歳)になっても続けていられるわけですから」

――『Love Chase!!』、どんな舞台になりそうでしょうか?
 
『Love Chase!!』稽古より。右から玉野和紀さん、小野田龍之介さん、青柳塁斗さん。(C) Marino Matsushima

『Love Chase!!』稽古より。右から玉野和紀さん、小野田龍之介さん、青柳塁斗さん。(C) Marino Matsushima

「まだ分からないですね。(技術的に)難しいことをやっているので、慣れていない出演者にとってはなかなか掴みにくいかもしれません。1幕はオムニバスで、パワーとダッシュが必要なんですよ。一本もののゆったりと物語を追っていく作品とは違って、背景が何もない中で、ぽっと面白いものをやっていかなくてはいけない。俳優としては、地あかりだけで衣裳も無しで“やってみろ”と言われているような感じでしょう。それだけ心を全部オープンにしていかないと成立しません。

紫吹淳さんや水夏希さんは宝塚でいろんなことをやってきているのでさすがだなと思うし、(原田)優一や龍は『CLUB SEVEN』にも出ているので僕の感覚は掴んでいるけど、他の面々はちょっとやっては“違う”と言って、苦労しています。コメディって、悲しいドラマよりむしろ難しいし、ダンスも(形にするまで)時間と手間がかかる。作っている今はとてもしんどいけど、その分、開幕した時にはみな、役者として一皮むけて、楽しい舞台が出来上がっている……はずです(笑)」

一見素っ気なく聞こえる玉野さんのコメントからは、小野田さんをはじめとする若手俳優たちに対する、「息の長い、真の役者に大成してほしい」という玉野さんの親心(?!)が、ひしひしと伝わります。「人を育てる、ましてやコメディでというのは大変」と言いつつもあえてその任を担う玉野さんの期待に、小野田さんたちがどう応えるか。ハチャメチャなラブ・コメディに大笑いしながらも、作り手、演じ手たちの熱いハートに、ほろりとさせられる舞台となりそうです。

*公演情報*『Love Chase!!』2014年4月9日(水)~4月24日(木)/シアタークリエ、5月1日(木)/愛知県芸術劇場大ホール、5月3日(土)~4日(日)/サンケイホールブリーゼ

*次頁で『Love Chase!!』観劇レポートをお届けします!
 

『Love Chase!!』観劇レポート
キャストそれぞれの持ち味比較が楽しい“恋のから騒ぎ”ミュージカル

『Love Chase!!』写真提供:東宝演劇部

『Love Chase!!』写真提供:東宝演劇部

人間界に降りた夢魔の恋の悪戯をやめさせるべく、神から使わされた天使と悪魔。彼らと、彼らに翻弄される人間たちの恋の騒動を主筋としつつ、ショー的要素も強い楽しいミュージカルが誕生しました。振って振られて、騙しだまされ、時には真実の恋も芽生え……と、脈絡なく繰り広げられるように見えるいくつものシーンが、一幕終盤にぴっと糸を引いて数珠つなぎとなり、“恋のから騒ぎ”の種明かし。と思わせて2幕最後にさらなる種明かしがあり、最後まで目が離せません。
『Love Chase!!』写真提供:東宝演劇部

『Love Chase!!』写真提供:東宝演劇部

時に男、時に女の姿で若者たちを惑わす夢魔役は、水夏希さん。すらりとした容姿、洗練された身のこなしの「彼」が現れると、イケメン揃いの男優陣が(失礼ながら)霞んでしまうのは、客観的に考えれば不思議な現象ですが、水さんのバックボーンである宝塚歌劇団が一世紀をかけて培ってきた、世界的にも類を見ない「男性表現」のたまもの。改めて、日本の演劇表現の豊かさに気づかされます。対する天使役の紫吹淳さんも男女の姿を使い分け、女性の姿の際には(みごとな脚線美もサービスしつつ)柔らかな歌声を披露。この二人の男装での対決ダンスはキレがよく、見ごたえ十分です。
『Love Chase!!』写真提供:東宝演劇部

『Love Chase!!』写真提供:東宝演劇部

いっぽう、夢魔や天使に翻弄される男女を演じるのは、原田優一さん、木村花代さんをはじめとする若手俳優たち。『レ・ミゼラブル』や『ミス・サイゴン』といった海外の大作ミュージカルで活躍している方も多いのですが、今回はいくつものシーンをゼロから作りだし、持てるものを総動員しながら役を膨らませてゆく必要があります。既に形のある海外ミュージカルよりも、むしろハードルは高いのかもしれませんが、俳優たちはダンスに歌に芝居にとそれぞれの持ち味をいかんなく発揮。同じ振付でも青柳塁斗さんは楷書で清々しく、小野田龍之介さんは22歳とは思えないニュアンスのあるダンスといった具合に、個性が浮き彫りになるのも興味深いところです。
『Love Chase!!』写真提供:東宝演劇部

『Love Chase!!』写真提供:東宝演劇部

他愛無いシーンにも懸命に取り組む彼らの姿を観ていると、日本のミュージカル界の今後のためにはもっとこういう舞台があってもいいし、観る側も応援して行くべきではという思いに駆られる本作。若手俳優たちに厳しくも最高の武者修行の場を与えている演出の玉野和紀さんですが、悪魔役としてタップを踏んだり、最後にちょっとおいしい(?)役回りであることが分かったり。“役者”ならではの彼のお茶目さも顔をのぞかせる舞台です。

 
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。