一般社団法人ペットフード協会の「平成28年(2016年)全国犬猫飼育実態調査」(n=1104)によれば、犬の飼育数のうち7歳以上の犬が56.8%を占め、10歳以上の犬は35.7%、13歳以上は15.7%という結果になっています。ここ5年間を見ても、少しずつ増える傾向にあり、1歳~6歳の犬は逆に減少傾向にあります。人間同様、犬の世界でも着実に高齢化が進んでいるということ。

では、少しでも健やかなシニア犬ライフを送るには、どのような気配りをし、どのように世話をしてあげたらいいのでしょうか。この記事では介護が必要になった場合のお話となります。


老犬・高齢犬の食事

シニア犬の食事1

高齢になると首の位置が下がるだけで体に負担がかかりやすい。立っていられるコの場合は、食器を食事台に乗せてあげると食べやすくなる:(c) L.M


高齢になってくると消化機能も低下し、栄養を吸収しにくくなってきます。タンパク質の合成能力が低下するとともにタンパク質不足によって筋肉量も落ち、免疫力の低下や貧血を招くこともあります。少しでも栄養を摂れるように、良質で消化のよいものを与えるようにしましょう。同様にカルシウムの吸収も少なくなり、骨も弱くなってきます。バランスのよいカルシウムとリンを与えて骨粗しょう症も予防したいものです。そして、腸の運動も不活発になり、便秘になりやすくなるのがシニア期。適度な食物繊維は便秘を予防します。

また、立って食事ができるコでも、首を下げて食べるのがだんだんと負担になってくるので、食器を台の上に置いて食べさせてあげたり、場合によっては食器を口の高さで持っていてあげたりするといいでしょう。そうすることで体にかかる負担を軽くすることができます。

中には、床が滑りやすい状況であると、脚が滑って踏ん張りきれず、食べる気はあってもなかなか食べられないというケースもあります。結局、食べない(食べられない)ので、オーナーさんとしては食欲がないのかと心配になってしまいますが、床の滑りが原因の場合もあります。そのような場合は、食事台の前に滑り止めのマットを敷いてあげるといいでしょう。ただし、厚みがあると逆に足が引っかかってしまうので、薄めのマットがお勧めです。
(*本来であれば、足腰のために若い頃から滑りにくい床の上で生活させてあげるのがベストです)

寝たきりの場合

寝たきりの犬の場合は、少しでも頭を高くして食事を与えたほうが安全:(c) L.M


立てなくなったコの場合は、フセの状態が保てるならその姿勢で、それも無理な場合は抱っこをして体を支え、少しでも頭が体より上の位置になるようにして食べさせてあげます。寝たままであってもクッションなどに寄りかからせたりして、頭が少し高くなるようにしてあげるといいでしょう。というのは、寝たままで食べさせると、場合によっては食べ物が飲み込みきれず、食道に引っかかってしまうことがあるからです。

流動食となった犬

流動食を与える時はシリンジやハチミツの容器などが便利:(c) L.M


流動食になったコでは、シリンジ(針のない注射器)やハチミツの容器などを使って、口の横から少しずつ流し込んであげます。この時、注意したいことが一つあります。特に抱っこをして食べさせる時、顎をグッと上に向かせ過ぎて食べさせると誤って気管に入ってしまうことがあるので気をつけてください。



 

老犬・高齢犬の運動

散歩中のシニア犬

歩行を補助してお散歩。少しでも体を動かすことは体や脳を刺激し、心身によい影響を与える:(c) L.M


高齢になってくると動きも不活発になり、寝てばかりのことが多くなってきます。動きたがらないからと散歩も休みがちになってしまうところですが、動かなければその分筋力も落ちてくる上に、関節の動きも硬くなってきてしまいます。少しでも体を動かす、外の空気にあたるということは体や脳を刺激して心身によい影響を与えるので、無理のない範囲でできるだけ適度な運動をさせてあげましょう。

自力で歩けるのであれば、そのコのペースに合わせてゆっくり歩くだけでかまいません。後ろ脚がふらつくコは、歩行補助ベルトなどを使って歩くのを手助けしてあげます。前脚も踏ん張ることができず立てないコの場合は、体を起こし、伏せさせてあげるだけでも運動になります。たとえ寝たきりであっても、時々は本来の立っている姿に近い姿勢をとらせてあげることは心身の刺激にもなりますし、状況が許すのであれば、抱っこやカートに乗せて外の空気にも触れさせてあげたいものです。

また、特に寝たきりのコには、マッサージをしながら脚の屈伸運動をしてあげるといいでしょう。足先をくるくる回してみたり、脚をさすったり、指圧してみたり。体がこわばるのを予防しながら、血行を促す効果もあります。


安心できる寝場所

寝たきりとなったシニア犬

犬にとって安心できる寝場所を。ベッドは体に優しい素材を選びたい:(c)L.M


高齢になってくると、犬も人を恋しがるようなところがあります。家族と一緒にいることが安心できるのでしょう。これまで自分専用の場所で寝ていたコが、家族が集まるリビングで寝たがったり、飼い主のベッドの近くで寝たがったりというようなことはよくあります。一方で騒々しさを嫌うようにもなりますが、なるべく家族の目が届いて、安心できる寝場所をつくってあげましょう。

特に、寝たきりになった場合は、床ずれ予防のためにもベッドの素材を柔らかいものにするのがベストです。低反発マットやエアマットなどはお勧めできます。



気をつけたい床ずれ

床ずれ

寝たきりになるとできやすいのが床ずれ。できてしまった時は悪化しないうちに早めの対処を:(c) L.M


寝たきりになってしまった場合、気をつけたいのが床ずれ。意外に早いうちに床ずれができてしまうことがあるので、注意が必要です。特に、腰や肩、前脚や後ろ脚の関節など、圧力がかかりやすいところは床ずれになりやすい部位です。

床ずれができてしまった場合、なるべく早めに見つけて対処したいものですが、クッション材やドーナツ枕などで床ずれとなった傷の横や周囲を保護した場合、状況によってはその部分が逆に圧迫され、血流が悪くなって傷を悪化させたり、新たな床ずれを作ってしまったりということもあるので、使用するのであれば、あてがう場所や時間など考慮したほうがいいでしょう。

こうした保護材を使う時には、一点に圧力が集中するのではなく、なるべく広い面に圧力が分散するように考えたほうがいいと思います。そういった点でも上記の低反発マットやエアマット、またウォーターベッドなどは圧力を和らげるという意味で使える素材です。

また、床ずれの傷の対処法として、近年では、消毒液を塗ってガーゼで保護するという従来のやり方に代わり、傷口を湿った状態で保って治癒させる湿潤療法というのが動物医療でも取り入れられるようになってきています。これは簡単に言うと、傷口に適度な湿度があることによって細胞も活性化しやすく傷が治りやすいという考え方から成り立った治療法で、一般の人でも手軽に行えるものとしては食品ラップや台所の生ゴミ入れに使用する水切り穴付きのポリ袋を利用した保護法が知られています。

しかし一方では、ラップ療法について、水分が多すぎると逆に細菌が繁殖して、特に免疫力が落ちている場合には危険があるという意見もあるので(*1)、安易に判断せず、一度動物病院で相談してからにしたほうがいいでしょう。


徘徊時の対処

徘徊中のシニア犬

徘徊の症状が出てきた時には、ケガ予防の意味も含め、お風呂マットのようなものをサークル状にして対処を:(c) L.M


痴呆の症状が出てくると、前には進めるものの後ろに下がることができず、家具の間や狭いところにはまり込んでしまうことがありますし、意味もなくただふらふらと歩き続けることがあります。(注:狭いところに入り込んで出てこられない場合、痴呆ではなく、単に体力の衰えが原因となっているケースもあります)

ずっと見ていてやれるならともかく、そうそう愛犬につきっきりというわけにもいきません。家具の隙間などはなるべくなくすとともに、愛犬から目を離す時にはお風呂マットのようなクッション性のあるものをサークル状にして、その中で歩かせておくとケガの予防にもなります。最近では柔らかい素材でできた介護用のサークルも売られているので、そういったものを使ってみるのもいいでしょう。


冷え対策

冷えや床ずれ予防に靴下

足先の冷え、床ずれ予防に靴下をはかせるのもよい:(c)L.M


寝たきりになると血行も悪くなって脚が妙に冷えたりすることもありますし、床ずれの予防として靴下をはかせる手もあります。特に脚がバタバタ動くコは傷もつくりやすいので、場合によってははかせてみるのもいいと思います。ただし、素材は摩擦が少なく、柔らかいものを。



 

老犬・高齢犬の排泄

高齢犬は水を飲む意識がやや低い傾向にもあり、本当は飲みたいのに水飲み場まで行くのが面倒、歩くのがつらくて行けないということもあります。水分が足りなくなるとオシッコも出にくくなります。寝たきりになっている場合は自力で水を飲むのも難しいですから、シリンジやスポイトなどを使ってなるべく新鮮な水を飲ませてあげるようにしましょう。

立っているのが難しいコは介助をしてトイレをさせ、自力排尿排便が難しいコは定期的に搾り出してあげるようにします。オシッコがすべて出きらずに膀胱に残っていると、細菌が繁殖しやすくなり、膀胱炎になってしまうことがあるので、できるだけ出しきるように気をつけてください。慣れないうちは難しいかもしれませんが、やり方についてはかかりつけの動物病院で教えてもらえるはずです。

オシッコやウンチを垂れ流してしまうコの場合はオムツを使用するのが一番でしょう。犬用のオムツも売られていますが、サイズによっては人間の赤ちゃん用や介護用のものでも代用が可能です。寝たきりで動けないコはオムツをはかせるより、お尻の下にトイレシートを敷いておくほうが処置しやすくなります。いずれにしても介護が必要となったら、お尻周りや尻尾の付け根の下側あたりの被毛は短くカットしておいたほうが、汚れが最小限で済みます。


老犬介護の生活になると、世話にかける時間や金銭的・精神的負担で私たちのほうが疲れきってしまうこともあります。ガイド自身も老犬介護の経験があり、その気持ちはよくわかりますが、難しく考えて気負い過ぎてしまうとさらに疲れを呼ぶだけです。それを避けるためには、介護生活が長引けば長引くほど、愛犬はもちろん、自分も含めて少しでも楽になれる方法を考え、よい意味での手抜きを考えることが介護生活をより楽にしてくれるのではないでしょうか。

シニア犬との暮らしは、ともに長く暮らしたからこその可愛さ、喜び、幸せがそこにはあるはずです。それを噛みしめながら、愛犬との愛しい、最も濃密と言える時間をお過ごしください。多くの犬たちが健やかなシニア犬ライフを送れますようにと願います。


【取材協力・画像提供】
レディのおうち
ここでご紹介した手づくりグッズはすべてレディのママさんのオリジナルです。個人での使用を除いて、無断での転載・商用への流用などは固くお断りします。

参考資料:
(*1)不適切な湿潤療法による被害 いわゆる“ラップ療法”の功罪/NPO法人創傷治療センター

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※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。