クリッカートレーニングも6回目を迎えました。ここで実際的なトレーニングを少し離れ、犬達が出すサインである、エモーショナルシグナルについて学んでみることにしましょう。

私達の思いをただ押しつけるだけではしつけもうまくいきません。感情が豊かである犬達は、出すサインも豊富。これらを知っていれば、より彼らを理解できるというものです。

=Index=
・エモーショナルシグナルとは?
・ボディ(パーツ)シグナルとディスプレイスメントシグナル
・アボイダンスビヘイビアーと全体の様子から見るエモーショナルシグナル

“エモーショナルシグナル”とは

ドッグウィスパラー山田りこさん
「エモーショナルシグナルを理解して、日々の生活に応用してくださいね」(山田りこさん)
エモーショナルシグナルとは、いったい何を意味するのでしょうか? それは、犬が自然に出すボディシグナルのこと。いわゆる、ボディ・ランゲージですね。犬という動物は、実に感情が豊かであり、その表現も豊かです。つまり、その時の心の状態が、何らかのシグナルとして表現されることが多いということ。

しつけはもちろん、日々の生活でこうしたシグナルをうまく読み取って対処してあげることで、より愛犬との関係もうまくいくようになるはずです。クリッカートレーニングも、その理論と手法だけを理解しても何にもなりません。基本は、犬達(その心の状態)を理解して、トレーニングをすればこそ。

「人間の場合、徹夜をして詰め込み状態の勉強をしても、実は、本来持っている学習能力は発揮できないと言われています。というのは、集中力を発揮するにも、心身共にリラックスできている状態であることが望ましいのです。犬にしてみても、トレーニング時、特に新しいことを学ぶ時には、少しでもストレスのない、リラックスできている状態であることが望まれますね」(山田さん)

犬の心理・行動を理解できてこそ、互いの関係もアップ

ということは、犬が何かしら嫌がったり、緊張が過度にある時などにいくらトレーニングをしてもそれほどの効果は望めないでしょうし、ましてや犬にしてみれば、ただ余計ストレスを加えられているということになってしまいます。

「犬との暮らしを考えた時、パートナーの人間として自分がどれほど愛犬に大好きになってもらえるか、というのはとても大切な要素だと思います。そのためには、健康管理はもちろんですが、犬の行動や心理を理解すること、犬達が持つ繊細さを敏感に感じ取ってあげることが大事なのではないでしょうか。リラックスし、かつパートナーから理解され、愛されているコであれば、トレーニングに関しても進歩が早いはずです」(山田さん)

続けてこうおっしゃいます。
「また、人が犬をコントロールするような高圧的で服従させるといったトレーニングや日常生活の態度は、動物にストレス、不安を与え、犬に対して問題行動を起こさせる原因にもなります。そして、その問題行動に対しての不適切な対応が、犬をますます緊張させ、不安にし、病気にさせてしまうこともあるのです。だからこそ、彼らの行動や心理を理解して接してあげることが大切になるのです」(山田さん)

では、次のページから、犬のエモーショナルシグナルの代表的なものをご紹介しましょう。同じような仕草が見られるからといって、100%それにあてはまるというわけでは決してありませんが、こうしたものを知っておくことで、犬との生活の参考になるはずです。

パーツにおけるボディシグナル

目(ウェールアイ)
 
ウェールアイ(強膜が出ている状態)と呼ばれる目つき。ここに挙げる写真は、どれも不安や緊張を感じている状態です。

フリーズ/じっと見つめる
 
フリーズし、じっと見つめる目。

下がっているシッポ
 
シッポの状態は、わかりやすいシグナルの一つ。このコは、シッポが下がっているのがすぐにわかりますが、加えて、耳がピンチドイヤー(耳の両端がカールした状態)になっており、目は見開き、額には力が入っていて、足は突っ張った状態、頭も下がり、体の重心が後ろに傾いています。

緊張と不安からの逃避行動
 
写真だとよくわからないかもしれませんが、このコは、緊張と不安から、足先がやや硬く丸くなり、耳は後方に倒れて、口角に力が入っています。

ディスプレイスメントシグナル

地面の匂いを嗅ぐ
 
ディスプレイスメントシグナルとは、何らかのストレスや不安を感じた時に、本来とは全く関係ない別の行動として現れるものです。写真は、その代表的な例、“地面を嗅ぐ”という行動。

あくびのような仕草
 
これは、“あくびのような仕草をする”。

まばたきをする
 
“またばきをする”。このコは、被り物が嫌いであるのに、それを被らされて、マテをかけられているために緊張を感じてる状況です。

鼻先をなめる
 
これも代表的な例。“鼻先を舐める”。

顔をそむける
 
“顔をそむける”。


さらに次のページでも写真でシグナルをご紹介します。

アボイダンスビヘイビアー(逃避行動)

飼い主や物の後ろに隠れる
 
アボイダンスビヘイビアーとは、居心地が悪い、怖いものがあるなど、何か、またはそのシチュエーションを避けたい場合に出るシグナルのことです。この写真では、オーナーさんの後ろに隠れようとしています。

後ずさりをする
 
この写真は、ボディシグナルのところでご紹介したものと同じですが、このコは後ずさりをしています。

頭よ横にそむける
 
さらに、頭を横にそむけています。

エモーショナルシグナル

全体的な様子からシグナルを判断する
 
ここからは姿勢やシッポの位置、表情など、全体的な犬の様子から判断していきます。このコは、耳が後ろに倒れ、口は閉じており、頭をかがめ、ウェールアイ(強膜がでている)になっています。アボイダンスビヘイビアーに相当するものです。

狼の行動1
 
狼の群れで見てみましょう。真ん中の狼は耳が後ろに倒れており、口が後ろに引け、目を背けて座っています。手前の狼は、中央の狼に覆いかぶさっており、後ろの狼は集中し、口を閉じてハードアイになっています。

狼の行動2
 
場面が代わり、後ろの狼がまばたきをし、頭をそむけています。中央と後ろの狼が、共に緊張を感じている様子がわかりますね。

狼の行動3
 
左の狼は、尾が下がり、舌を出して、後ずさりをしています。それに対し、右の狼は、尾が上がっており、ハードアイで、頭の位置が下がっています。

狼の行動4
 
左の狼が、頭を背け、耳を後ろに倒して、口角を引き、身をかがめる行動へと変化しています。右の狼も、さらに尾を立たせて、体を大きく見せようとし、ハードアイもきつくなっています。

緊張した状態
 
耳が緊張(後ろに倒れている)しており、口は閉じて、目は見開き、額の様相も緊張の度合いを示しています。

リラックスした状態
 
こちらは見ておわかりのとおり、リラックス状態の写真です。穏やかな表情で、耳も口もともリラックスしている状態を示しています。

まとめ

みんないい顔!
犬を理解して接することで、みんないい表情!
なんとなくでもそれぞれの違いをおわかり頂けたでしょうか? こうしたシグナルを感じ取るには、日頃から愛犬の様子をよく観察し、把握しておくことが大切です。どこでも、いろいろなシチュエーションで愛犬のシグナルを観察してみると、その時に自分のコがどう感じているのか多少なりともわかるようになり、愛犬を見る視線もきっと違ってくることでしょう。今日からでもトライしてみてはいかがでしょう。

最後に、山田さんからのメッセージを。
「犬の心と感情を理解し、犬との円滑なコミュニュケーションを心がけることで、お互いの関係性、絆がより深くなります。クリッカートレーニングも犬とのHappy Life の一部として取り入れてみてくださいね!」


「写真提供/Rico's Canine massage School」

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クリッカートレーニング-5(ターゲット・トレーニングについて)

クリッカートレーニング-7(ターゲットスティック/ダウンを教える)

クリッカートレーニング-8(ヒールワークを教える)

【関連サイト】
PRAISE TOUCH(『プレイズタッチ・パートナーズ』公式ウェッブサイト)
RICO’S CANINE MASSAGE SCHOOL(山田さんが主宰するスクールのサイト)
RICOSホームページ(山田さんの活動に共感された企業がRICOSブランドを展開)

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