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・おうちでできる、歯周病チェック!
・歯磨きの仕方
・歯ブラシの使い方と歯磨きのポイント
おうちでできる、歯周病チェック!
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「愛犬の健康維持のためにも、是非歯磨きを習慣づけてあげてくださいね」(藤田先生) |
「元来、歯周病の症状というものはわかりにくいところもあるのですが、主に以下に挙げるようなものは歯周病を疑うことができます。ただし、これらにあてはまるからといって、必ずしも歯周病であるとは限りません。他の病気からくる症状である場合も充分にありえますので、少しでも変だな……と思った時には、なるべく早めに動物病院で診察してもらうことをお勧めします」(藤田先生)
■よだれが多くなった。
■口の周りの汚れが目立つようになった。
■口臭を感じる。
■口の周りを前足で気にしていることが多い。
■口を床や家具などにこすりつけていることが多い。
■頭をよく振っている。
■口の周りを触ろうとすると嫌がる。
■軟らかいものばかりを好み、硬いものは食べようとしない。
■食事中に口からぽろぽろと食べ物をこぼすことが多い。
■片側の歯で物を噛んでいることが多い。
■食事中、または何かを噛んでいる最中、急に妙な声を出すことがある。
■食事を口の中に入れるものの、すぐにそれを出してしまう。
■食欲はありそうなのに、食べようとしない。
■片側の目に目やにが見られる、または目が充血している。
■クシャミ、鼻水、鼻からの出血などが断続的に見られる。
■頬や顎が腫れている。または、穴が開いている。 etc.
一見、歯周病とは関係ないように思える症状もある
上記のチェックポイントを見るとわかるように、一見して歯周病とは関係ないように思えるものも含まれています。「片側の目から目やにが出る、目が充血している」というのは、上顎の奥歯の歯根周囲に炎症が起こると、それが目の周りにも波及することがあるためです。また、「クシャミ、鼻水、鼻からの出血」が見られることがあるのは、第2回目の記事でご紹介した“口鼻瘻管(こうびろうかん)”を思い出して頂ければわかると思いますが、上顎の歯の周りの炎症が進行した結果、口腔と鼻腔とを隔てる骨を溶かしてしまい、鼻と口とがつながってしまうことから、クシャミや鼻水、鼻血などの症状が見られることがあるのです。
このような症状が見られるようになる前に、早めに歯や口の中の変化に気づいてあげたいものです。そのためには、日頃から小まめに愛犬の口の中をチェックしてあげましょう。
■歯の色、汚れ、歯垢・歯石がついていないかなどをチェック。
■歯肉の色や、腫れなどがないかをチェック。
■口臭はしていないかをチェック。
では、歯周病を予防するには、こうしたチェックの他にどうしたらいいのでしょうか? それは簡単、習慣的に歯磨きをしてあげることです! 次のページでは、歯磨きの仕方をご紹介します。
歯磨きの仕方
模型を使って歯磨きの仕方を説明していきます。愛犬の顔や歯の様子などを想像しながら見てくださいね。![]() |
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次のページでは、歯ブラシの使い方など、さらなるポイントを。
ワンランク上の歯ブラシの使い方
歯磨きができるようになったら、歯ブラシの角度や、磨き方にもちょっと気配りしてみると、さらに歯磨きの効果が高まりますよ。是非、試してみてくださいね。![]() |
歯に対して歯ブラシの角度を45度に。歯と歯肉の間の溝(歯肉溝)も綺麗にするようなつもりでブラッシング。
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歯と歯肉との境目あたりを矢印のように歯ブラシで軽くマッサージする。歯肉溝の汚れを落とすのに効果的。
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歯の表面の汚れを落とし、歯肉のマッサージ効果が期待できる。ただし、歯肉溝の汚れを落とす効果はあまりない。
スケラーは安易に使わないこと
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藤田先生お勧めの犬用歯磨きペースト。歯磨きの際にこういったものを使うとなお効果的。 |
■スケラーは安易に使用しないこと。
本来、スケラーを使った後には歯の表面を滑らかにする必要があるのですが、素人がスケラーを使用した場合、一見して綺麗に見えている歯の表面も、実は傷がついてしまうことで逆に歯石がつきやすい環境を作ってしまいます。また、歯肉溝の歯垢・歯石までは落としきれていません。加えて、スケラーを使用することで歯肉を傷つけたり、犬に痛い思いをさせてしまうこともままありますので、それによって犬が口を触られること自体を嫌がるようになってしまうケースがあります。スケラーを使用する場合には、やはりそれなりの技術と気配りが必要になります。
■歯磨きのし過ぎにも注意。
中には「歯磨きをしなければ」と一生懸命になり過ぎてしまう人もいます。やり過ぎによって、歯が健康になるどころか、歯肉が後退してしまうほど磨いてしまう人もいるとか。何事もほどほどに、ということですね。
少なくとも一日おきに歯磨きするのがベスト
そもそも歯垢というのはどのくらいの時間でできるのでしょうか? その答えは、犬の場合、食後おおよそ24時間以内。顕微鏡学的には数時間ででき始めるそうです。それが歯石へと変化するのは、犬ではおおよそ3~5日のうち。人間の場合は、25日程度かかるそうです。口の中のpH(ペーハー)の違いなど(これについては第1回目の記事で説明)によって、犬のほうがずっと早くに歯石になりやすいということです。まだ歯垢のうちでしたら歯磨きだけでも充分に落とせますから、歯石になる前に対処してあげたいものですよね。この歯垢から歯石への変化するサイクルを考慮すると、少なくとも一日おきくらいには歯磨きをしてあげるのがベストと言えます。また、スプレータイプなどのデンタルケア製品もいろいろ販売されておりますが、そういったものだけに頼るのではなく、歯磨きとペアにして使うのが最も効果的だそうです。
「野生動物にはほとんど歯周病はありません。狼を例にとってみれば、獲物の内臓にある植物の繊維や、獲物自身の筋肉組織など様々なものがうまく歯の汚れを落とす作用も担っているのでしょう。ペット動物である犬にどうしてこれほど歯周病が多くなっているのか。それは、食事内容や環境などの変化などいくつかの要因はあると思いますが、言ってみれば私達人間が作り出してしまった病気であるとも考えられます」(藤田先生)
ならばなおさらのこと、私達飼い主が、愛犬達の歯の健康を守ってあげたいものです。それは、体全体の健康にもつながるのですから。愛犬にいつまでも健康で長生きをして欲しいと思うならば、今日からでも始めてみませんか? 歯磨きを!
画像資料提供/フジタ動物病院院長藤田桂一先生
【関連記事】
⇒デンタルケア:「犬の歯について学ぶ」編(第1回目)
⇒デンタルケア:「歯周病と、その治療法」編(第2回目)
【プロフィール】
藤田桂一先生/フジタ動物病院院長、獣医学博士
1985年日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)大学院獣医学研究科修士課程修了。1988年、フジタ動物病院を開院。2000年、「猫歯肉口内炎に関する獣医歯科学的研究」において獣医学博士号を取得。日本小動物歯科研究会の理事でもある。
【関連サイト】
フジタ動物病院(患者さんの立場に立った医療を信条とし、特に歯科医療分野に力を入れている)
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