リーダーシップ/フォロワーシップの基本知識

チーム目標の具体的な設定例……メンバー全員が本気になる目標設定とは

チーム目標の具体的な立て方にはポイントがあります。なだめたり、ハッパをかけたりしても、メンバーは動いてくれない。チームリーダーの多くは、こんな悩みを持っています。その原因は、リーダーが独断で目標を決めていること。全員が本気になる目標の具体的な設定例を解説。

中竹 竜二

執筆者:中竹 竜二

ラグビーガイド

メンバー全員が本気になる目標設定とは?チーム目標の具体的な設定例

チーム目標の立て方

チーム目標の立て方

「今期の売り上げ目標は30億円。前期比120%アップ」。前年の売り上げや会社全体の目標を考え合わせ、課長など部署のリーダーが目標を決める。それをもとに、部下それぞれに役割、数字を割り振り、実行させる……。

次年度の目標を立てるとき、リーダーの多くは、一生懸命知恵を絞って目標を1人で決めようとします。これがリーダーの責任であり、リーダーシップを発揮すべきところ、と考えているからでしょう。

しかし、このやり方がそもそもの間違い。これでは部下は目標に対して本気になってくれないのです。なぜでしょうか?
   

チーム目標の立て方……「落とし込み」ではなく「作り込み」

「去年死ぬほどみんなで頑張って25億だったのに、今年、さらに5億上乗せ?」

決めた目標を部下に落としたとき、そんな声が聞こえてきます。決めたリーダーにしてみれば、何度も何度も検討を重ねた数字でも、部下にとっては寝耳に水のようなもの。妥当性も納得感も低い数字でしかありません。

すると、組織に漂うのは、「無理だけど、頑張りますって言うしかないね」とか、「8割くらい達成すればいいか」という諦め感です。妥当ではない目標に対して、人は頑張れません。リアルな目標にならず、本気になれないのです。

ではどうすればいいでしょうか。目標設定は、「落とし込み」ではく「作り込み」がカギなのです。「上」で作ったものを「下」に「落とし込む」のではなく、「上」と「下」で一緒に目標を作る、つまり、双方向の対話で作るという発想の大転換が必要です。
 

チーム目標は、チームの組織と個人の目標を繋ぐ「対話」

たとえば……。

「来年度の売り上げ目標30億。この目標、どう思う?」。リーダーがメンバーに問いかけます。

「今年死ぬほど頑張ったんだから、それ以上の目標を掲げるのは無理」。「去年ひたすら数字を出すことに注力したから、今年は力をつけることに時間を取りたい」。当然、目標が下ブレするような現実的なコメントが出てきます。

そのとき、「これより下がっちゃうと、長期的にはシェアが下がって、価格にも影響するんだけど」「守りに入っていないかな」など、上司は部下に、高い目標の意味を説明したり、下ブレする理由を確認したりしてみます。

すると、「自分は、今年種まきしたから、来年は結構刈り取れる。150%はいけるよ」「担当の業界が好調。だから上乗せできそう」といった声も上がってきます。当初、ネガティブだった部下がそれを聞いて、「うーん、新規開拓、頑張るよ」と言い出したりすれば、しめたものです。

部下は上司との対話のなかで、目標の意味を理解し、それに対して精一杯できることを考えるようになります。それでも、組織全体で見ると、空いてしまう穴(この場合は足りない数字)が出てきてしまう。それを埋めようと、進んで持てる力を差し出そうとします。

対話という「作り込み」のプロセスを通じて、組織の目標と個人の目標がつながるのです。
 

チーム目標が完成した瞬間には、全員が本気に

完成した目標は、同時に部下に共有されています。部下自らが参加し、納得して決定したものですから、できた時点ですでに深く心に刻まれているのは当然です。そして、「これならできる」「ここまで頑張る」と自分で言ったことに対して、責任感も生じます。だから、目標ができた時点にはすでに、本気になっているのです。

実例を話しましょう。早稲田大学ラグビー蹴球部の監督時代。私はほとんどの目標を、選手たちと一緒に作っていました。

ラグビーの大学日本一を決める大学選手権の準決勝直前。いつものように目標を選手たちに問いかけると、彼らは「相手を0点に押さえる」と掲げました。自分たちは守備が弱い、守備を固めなければ勝てない、だから0点に押さえよう、と。

その目標ができた時点で、相手を0点に押さえるために、それぞれが何をすべきかが明確になっていました。単に全員が守備に回るのではなく、相手にボールを渡さないように全員が攻撃態勢をとる。驚くほど短期間で彼らの心と体にそれは浸透し、本気で熱くなって、全員参加で決勝戦への切符を手にしたのです。
 

社長が作った目標にも「No」と言おう

最後に、より現実的な話です。現場の意志と妥当性を反映したとき、どうやっても目標が上司の期待よりは下ブレすることがあります。社長からは、「何をやっているんだ!」と叱られるかもしれません。しかし、そのとき現場のリーダーは、たとえ相手が社長でも、「この目標は機能しません。目標を下げましょう」と、「No」という勇気を持ってほしいのです。もちろん、いきなりは無理かもしれません。しかし、組織のメンバーが立場を超えて、自由な発言ができる環境を常に目指すならば、リーダーとしてお手本を示したいものです。

そもそも年間目標など短期的な目標は、組織の長期的な発展を達成する手段。短期的な、現場を顧みない目標設定によって、長期的な発展を損なっては意味がありません。

実際、私が人材育成に携わっている企業では、このように上と下の対話によって目標設定を行った結果、リーダーがはじめに描いていた目標値を大きく下方修正しました。対話なくして無理やり目標を落とし込めば、現場の疲弊感が増し、離職率が上がって、優秀な人を手放すことになるだろう、と判断したのです。
 

チーム目標作りでも必要なフォロワーシップ

まとめます。リーダーは、決めた目標を落とす人ではありません。社長や会社が決めた目標を、部下に実行させる人でもありません。目標に本気になってほしいなら、作る時点から始めること。部下に「作り込み」に参加してもらうこと。リーダーは、組織の目標と部下の目標のつなぎ役として、部下を支える役割に徹すること。これが、皆さんに今回、最も伝えたいことです。

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