目標が完成した瞬間には全員が本気に

完成した目標は、同時に部下に共有されています。部下自らが参加し、納得して決定したものですから、できた時点ですでに深く心に刻まれているのは当然です。そして、「これならできる」「ここまで頑張る」と自分で言ったことに対して、責任感も生じます。だから、目標ができた時点にはすでに、本気になっているのです。

実例を話しましょう。早稲田大学ラグビー蹴球部の監督時代。私はほとんどの目標を、選手たちと一緒に作っていました。

ラグビーの大学日本一を決める大学選手権の準決勝直前。いつものように目標を選手たちに問いかけると、彼らは「相手を0点に押さえる」と掲げました。自分たちは守備が弱い、守備を固めなければ勝てない、だから0点に押さえよう、と。

その目標ができた時点で、相手を0点に押さえるために、それぞれが何をすべきかが明確になっていました。単に全員が守備に回るのではなく、相手にボールを渡さないように全員が攻撃態勢をとる。驚くほど短期間で彼らの心と体にそれは浸透し、本気で熱くなって、全員参加で決勝戦への切符を手にしたのです。


社長が作った目標にも「No」と言おう

最後に、より現実的な話です。現場の意志と妥当性を反映したとき、どうやっても目標が上司の期待よりは下ブレすることがあります。社長からは、「何をやっているんだ!」と叱られるかもしれません。しかし、そのとき現場のリーダーは、たとえ相手が社長でも、「この目標は機能しません。目標を下げましょう」と、「No」という勇気を持ってほしいのです。もちろん、いきなりは無理かもしれません。しかし、組織のメンバーが立場を超えて、自由な発言ができる環境を常に目指すならば、リーダーとしてお手本を示したいものです。

そもそも年間目標など短期的な目標は、組織の長期的な発展を達成する手段。短期的な、現場を顧みない目標設定によって、長期的な発展を損なっては意味がありません。

実際、私が人材育成に携わっている企業では、このように上と下の対話によって目標設定を行った結果、リーダーがはじめに描いていた目標値を大きく下方修正しました。対話なくして無理やり目標を落とし込めば、現場の疲弊感が増し、離職率が上がって、優秀な人を手放すことになるだろう、と判断したのです。


目標作りでも必要なフォロワーシップ

まとめます。リーダーは、決めた目標を落とす人ではありません。社長や会社が決めた目標を、部下に実行させる人でもありません。目標に本気になってほしいなら、作る時点から始めること。部下に「作り込み」に参加してもらうこと。リーダーは、組織の目標と部下の目標のつなぎ役として、部下を支える役割に徹すること。これが、皆さんに今回、最も伝えたいことです。


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