ストレス/ストレス発散・解消法

貧乏ゆすりの治し方・爪噛みなどの癖の止め方

【公認心理師が解説】貧乏ゆすりや爪を噛むなどの癖の止め方が分からず、困っている人は多いようです。これらの癖は、フラストレーションを感じたときなどに無意識にしてしまう「固着反応」と呼ばれるもの。スムーズに止めるための3つのコツをご紹介します。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

貧乏ゆすりや爪を噛む癖が止められない……「固着反応」とは

貧乏ゆすりを我慢する足のイメージ

「もう絶対に貧乏ゆすりはしない!」と決意しても、無意識のうちにしてしまうのが「癖」。上手な止め方はあるのでしょうか

 
人はフラストレーションが溜まったとき、とりあえずその気持ちを落ち着かせようと、無意識のうちに「意味のないこと」をしてしまうものです。

たとえば、今日中に終わらせなければいけない仕事があるのに、なかなか気が乗らずに捌けない……。そんな葛藤を感じたとき、貧乏ゆすりをしたり、爪を噛んでしまったり、枝毛探しやニキビ潰しに熱中してしまったり……。このように無意味な行動で時間を潰して、自己嫌悪に陥ってしまった経験もあるのではないでしょうか。

「こうしたらいいのにできない」といったフラストレーションに陥ったとき、その気持ちを落ち着かせるために、役に立たない紋切り型の反応を繰り返してしまうことを「固着反応」と言います。その行動は、人によってさまざま。爪を噛んだり、貧乏ゆすりをしたり、髪の毛を指で回したり、ニキビを潰したり、指でテーブルを叩いたり、ぐるぐる歩き回ったり……、こんな行動の一つや二つ、誰にでも心当たりがあるのではないでしょうか?
 

貧乏ゆすりなどはなぜ悪い? ストレス解消にはなるが適切な対処を

固着反応は、自然なストレス解消法の一つです。困るのは、その行為による「影響」の方でしょう。

無意味に時間を過ごしてしまい、やるべきことが進まなければ、いずれ後悔してしまいます。貧乏ゆすりやテーブルをコツコツ叩く、歩きまわるなどの行動などは、見た目にもよいものではありませんし、周りの人にも迷惑をかけてしまいます。爪を噛んだりニキビ潰しに熱中してしまうと、爪が削れて不格好になり、ニキビ痕が残ったりしてしまいます。

このように、無意識に固着反応を繰り返していると、他人に眉をひそめられてしまいます。フラストレーションは、誰もが感じるものだからこそ、固着反応には気をつけていきたいものです。上手な止め方として、おすすめしたい3つの方法を解説します。
 

癖の治し方1 . その反応を始めたときに「気づく」

あ、固着反応を始めてる!」とまずは気づくことが大事

あ、固着反応を始めてる!」とまずは気づくことが大事


固着反応は「絶対やらないぞ!」と決意しても、無意識に始めてしまうもの。しかし、始めた後に「いつもの癖が始まった」と気づくことはできます。

自分がとっさにとる反応や行動様式を認識することを「自己覚知」と言います。これは、自分の行動を修正するための第一歩となる気づきです。

自己覚知ができれば、問題解決は大分進みます。まずは、フラストレーションを感じたときにどんな固着反応が出るのか、自分のパターンに気づき、どんなシーンで起こるのか(例えば、焦っているときなのか、苦手な人に会ったときなのか)を分析してみましょう。
 

癖の治し方2. 「問題の原因」と「自分」を切り離す

爪を短く切っても、気がつけば噛んでしまうやっかいな固着反応

爪を短く切っても、気がつけば噛んでしまうやっかいな固着反応


やっかいな癖があると、「止められない私はダメだ」などと自責の念も生じやすいものです。そして、「もう絶対にやるものか!」と癖を強く禁じたくなります。しかし、そのストレスが新たなフラストレーションを生み、無意識にまた癖が出てしまう……こういった悪循環に陥ってしまうことがあります。

ここから抜けるには、「問題の原因」を「自分」から切り離してみるといいでしょう。つまり「『自分がダメ』だから、爪噛みをする」ではなく、「『フラストレーションの蓄積』が、自分に爪噛みをさせている」と捉えるのです。このように、癖は「自分のせい」ではなく、別の原因によるものだと捉えると、原因への対処法を合理的に考えることができます。これを「問題の外在化」と言います。
 

癖の治し方3. 「第2の対策法」に置き換える

フラストレーションの解消法はたくさんあるもの

フラストレーションの解消法はたくさんあるもの


固着反応は無意識の行為なので、意志の力ではうまく止められないものです。したがって、その行為に気づいたときに、「第2の対策法」に置き換えていくといいでしょう。つまり、「あ、爪噛みが始まった。フラストレーションが溜まってるんだな」と気づいたら、その時点で別の気分転換方法に切り換えることです。

特に効果的なのは、その場を離れることです。たとえば、仕事中にイライラして貧乏ゆすりが始まったら、トイレに行ったり、コーヒーを入れたりするといいでしょう。すると、貧乏ゆすりをリセットできますし、気分も変わるのでイライラも落ち着きます。

他にも、深呼吸をする、ストレッチをする、ハンドクリームを塗るなど、気分を変える方法はたくさんあります。このように、第2の対処法に置き換えることを続けていけば、固着反応の繰り返しを防ぐことができます。うまくいけば、固着反応を始める前に「やりたくなる気持ち」に気づき、第2の対策法に置き換えられるようになるでしょう。

――ちなみに、かくいう私もイライラすると爪を噛む癖があり、長年「どうしたらやめられるの?」と悩んできました。そこで、上の3つのステップ「1. 自己覚知」→「2. 問題の外在化」→「3. 第2の対処法への置き換え」を意識してみたところ、爪噛みに走る機会は減り、ガタガタだった爪の形が整ってきました。

固着反応のような「恥ずかしい癖」は、誰でも一つや二つ持っているものですが、スマートな大人になりたいなら、少しずつでも修正していきましょう。今回紹介した3つのヒントを、ぜひ意識して取り入れてみてください。

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