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学術的な考察からひもとく「産後クライシス」

産後クライシスのメカニズムと意味を説く「間違いだらけの産後クライシス論争」第2弾。過去の学術的研究も踏まえれば、産後クライシスとは、夫の無神経というような局所的な不都合から生じるものではなく、実はもっと複合的な問題であるといえる。「気付かない夫が悪い」というようなレベルの話に矮小化してしまえば、ますます家族の機能不全が増える。

執筆者:おおた としまさ

産後クライシスは複合的な要因で起こる

産後クライシス

産後クライシスの要因はいろいろ

前回「ツッコミどころ満載の『産後クライシス』」で触れたように、目白大学の心理学教授小野寺敦子氏は、2005年に「親になることにともなう夫婦関係の変化」という論文を発表している。私も当時、小野寺氏から直接論文を見せてもらった。まさに「産後クライシス」について学術的な分析をしているのだ(実は私が「パパの悩み相談横丁」をやろうと決め、心理カウンセラーとしての勉強をはじめたきっかけはここにある)。

論文はこちらで日本語で読める。→『親になることにともなう夫婦関係の変化』 
親になる前、親になった2年後、親になった3年後のそれぞれの時点での、夫婦それぞれの親密性、我慢、頑固、冷静を数値化し、評価した。それによれば……
  • 夫婦ともに親密性の得点が親になる前に比べ、親2年後になると有意にその値が低くなっていた。
  • 親密性得点は子どもの誕生前には妻の方が有意に高かったが、親になると両者の得点間に有意さは見られなくなっていた(ここ、ベネッセのデータと違うところ。妻の方だけが冷めるということはない)。
  • 親になった当初は親密性は低下するものの、親になって2、3年が経過するうちに安定した状態になる(ベネッセのデータでは産後2年までしかフォローしていない)。
  • 夫から妻への親密性を低下させる要因は、妻が子どものいる生活にイライラしていること、夫の労働時間が長いこと、さらには妻が仕事をしていることが関連していた。
  • 妻から夫への親密性を低下させる要因は、夫の育児参加量が少ないことと子どもが育てにくいと思うこと、さらには自分が仕事をしていることだった。
  • 妻の頑固得点は母親になって2年後そして3年後になるにつれて高くなっていた。女性は母親になると毎日の育児に追われイライラすることも多くなるが、そうした苛立ちが夫に頑固になる原因かもしれない。
  • 夫に親密な感情をいだく妻は、子育てで嫌なことがあってもそれを我慢するのではなく、夫に積極的に話しているようだ。ところが夫の我慢得点は妻の得点よりも3期にわたって有意に高かった。これは夫が妻の機嫌をうかがい嫌なことがあっても我慢している傾向を示している。
  • ふたりだけの恋人同士に近い親密性は親になると急激に下がるが、それに替わって夫婦としての絆とでもいうべき別の意味での親密性が夫婦の間に生まれそれが一定の状態で安定して推移していくことが推察される。すなわち夫婦関係の質が親になると変化していくことが考えられる。
まさに産後クライシスのプロセスを客観的に説明しているのではないだろうか。

産後クライシスというような現象は、夫の無神経というような局所的な不都合から生じるものではなく、実はもっと複合的な問題であるといえる。「気付かない夫が悪い」というようなレベルの話に矮小化してしまえば、ますます家族の機能不全が増える。冒頭の書籍を読んで、そのミスリードが非常に気になった。
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