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冤罪と復讐を軸に描く「灰色の虹」

無実でありながら殺人犯の烙印を押された江木雅史は自分を冤罪に追い込んだ人々への復讐を決意する。「冤罪」と「復讐」。二つのテーマを軸に人間心理を丁寧に描いたミステリーです。

投稿記事

■作品名:灰色の虹
■作家名:貫井徳郎

■おすすめポイント・読みどころ
無実でありながら殺人犯の烙印を押された江木雅史は自分を冤罪に追い込んだ人々への復讐を決意する。「冤罪」と「復讐」。二つのテーマを軸に人間心理を丁寧に描いたミステリーです。

江木雅史が冤罪に至るまでの数年にわたる経緯を描いたパートと、復讐に遭い殺されていく人側を現在の時間軸で描いたパートが交互に進む一風変わった構成に引き込まれます。一人殺される度に殺された人間がどのように事件に関わっていたのかが解り、徐々に全体像が浮かびあがってくるのです。

殺される側の心理描写が丁寧なのが特徴的です。どのような考えでどのように行動する人々なのか。現在の状況を描きながら、冤罪を生んだ過去の事件での行動ともオーバーラップするような描写が巧みです。なる程、このようにして冤罪は作られるのかと圧倒的な筆力で真実味を持って迫ってきます。

雅史の復讐は終わるのか、復讐の後に救いはあるのか、と思いを巡らし読み進めると…最後にやられました。切なく、悲しく、やるせないどんでん返しが待っていました。胸にぐっと込み上げてくるこの感情を何と表現したら良いものか。傑作です。
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