最近の中国語学習者の傾向と、「通じる」ということ

ガイド(以下「ガ」):林松涛先生こんにちは。今回、先生の著書を拝読し、お話を伺いたいと思ってお邪魔しました。どうぞ、よろしくお願いいたします。

林松涛先生(以下「林」):こんにちは。

ガ:さっそくですが、日本人の中国語学習者についてどのような印象をお持ちですか?

林:さまざまなレベルの方がいらして、数年前に比べると確実にすそ野は広がってきていますね。また、発音も格段に以前より良くなっています。

ガ:発音、ですか。

林:はい、発音は今はCDが必ず教材に付属し、中国人もたくさん日本にいます。以前より話す機会が増加したことも大きいでしょう。また、発音については「通じた」という体験そのものが次へのモチベーションにつながることもありますね。留学をしなくても、その経験を得ることが容易になってきているのです。

ガ:それはそうかもしれません。実際、私も中国に留学したことがないので。ところで、「中国語のレベル」ということがよく言われると思うのですが、先生はどのように捉えられていますか? 資格などとからめて教えていただきたいと思います。

林:難しい問題ですね(笑)。私個人の感覚としては、中級は中国語検定3級以上、上級は2級以上、といったところです。また、留学した人は意外と成語などの領域が弱い傾向にあります。生活すること自体には使う必要性は高くないですから。逆に、日本で学ぶ人たちは成語は強いが発音が弱い。一長一短、ですね。

ガ:本当にそうですね。教える仕事をしていて、発音は一大テーマです。

林:こういうと語弊があるかもしれませんが、発音は北方、語法は南方、それぞれの先生に習うとよさそうです。北方の人たちは自分の発音に自信を持っていますし、南方の先生は発音が標準でないため語法をしっかり研究されています。

ガ:知り合いの中国人の先生何人かの顔が浮かんできました(笑)それでは、その発音の先にあるコミュニケーションですが、先生はどのようにお考えですか?

林:コミュニケーションは、2人、ないしはそれ以上の数の人がいてはじめて成り立つ概念です。私とあなた、あなたと彼……。ですから、言語ももちろんですが、むしろその背景にある文脈にも注目したいと思います。たとえば、一口に「通じる」と言っても段階があります。品のある言葉かそうでないか……。これらは特定の集団によって定められているものですから、コミュニケーションの完成を目指す場合、そういったことにも注意すべきですね。
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すべての物事には、良い面と悪い面があります。両方を知ることがだいじです。


ガ:なるほど……深いです。普段、たくさんの単語や表現、一つでも多く覚えて帰ってほしいということが自分の教室活動だったように思います。実際の文法については、いかがでしょうか?

林:たとえば、初級段階で学ぶ「アスペクト」。これって実は英語の考え方なのですね。英語を深く理解している人にはわかりやすい。けれども、すべての中国語学習者が英語をしっかり学んでいるとは言えないでしょう。文法というのは、いわば「他言語から見たルール」だと思うのです。アスペクト助詞の「过」などは、「経験」として教えられることが多いですが、実際は「~を済ませた」という文脈で使われることが多い。そういった場面ごとの感覚を大事にすべきです。

ガ:私は日本で中国語を学んだので、ある種機械的に覚えてきていました。たしかに、「生きた言葉」を目指す場合、文脈は大事ですよね。

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