山下達郎の「クリスマス・イブ」。毎年12月になると街に流れますが、今年は1983年の発売から30周年にあたるため、記念盤が出るなど例年以上の盛り上がりを見せています。

「クリスマス・イブ」がヒットしたのは1988年、JR東海「ホームタウン・エクスプレス(X'mas編)」のCMソングとして使われたのがキッカケ。その後「クリスマス・エクスプレス」CMとしてシリーズ化され、「ホームタウン」では深津絵里、「クリスマス」では牧瀬里穂、吉本多香美などが出演しています。

クリスマスが恋人たちのものになった80年代

このヒットの背景には、80年代にクリスマスが「家族で過ごすもの」から「恋人と過ごすもの」に変わったことがあります。特にバブル期の盛り上がりはものすごく、プレゼントにはカルティエの三連リング、おしゃれなシティホテルが人気で「赤坂プリンスホテルの予約がとれない」と若い男たちは必死になっていました(その赤プリは今年、解体が完了)。

テレビドラマもそんな世の中の流れとリンクして、10月に始まり最終回のクリスマスに向かって盛り上がるクリスマス恋愛モノがヒットします。

クリスマス=恋愛、の先駆け『君が嘘をついた』

その先駆けはトレンディドラマの代表作の一つ、1988年の『君が嘘をついた』。自称弁護士のヨット仲間(三上博史、大江千里、布施博)と良家の子女を装っていたイベントコンパニオン(麻生祐未、鈴木保奈美、井上彩名)の男女三人ずつが、嘘をついてつきあっていたのがばれて一度は別れる。しかしクリスマスにありのままの姿と気持ちをさらけだして結ばれる、というドラマでした。

しっかり見れば「バブルに流されず本質を見つめよう」というテーマがある作品なですが、当時はそこについてはあまり考えられず、クリスマス=恋愛の図式が浸透していきました。

 次は「いよいよクリスマス漬けに


タイトルも主題歌もクリスマス一色、『クリスマス・イヴ』

さらにクリスマスが強調されたのは1990年の『クリスマス・イブ』。タイトルにクリスマスが入り、最初から盛り上げる気満々。さらに主題歌も辛島美登里「サイレント・イブ」で、もちろんストーリーもクリスマス漬け。ある年のクリスマス、オーストラリア旅行中の雪子(仙道敦子)が同じ銀行に勤める剛(吉田栄作)とその恋人くるみ(松下由樹)と出会ったところからスタート。翌年の10月にはくるみと別れた剛とつきあっている雪子だが、なかなかプロポーズしてくれないのに焦っている。そこから紆余曲折あり、クリスマスには愛を再確認する、というストーリーです。

雪子はクリスマスに並々ならぬこだわりがあり、仕事で忙しい剛を10月の時点から「イブはどうするの」と問い詰め、直前になって剛が出張から戻れないとわかると物凄い勢いで落ち込みます。今振り返るとオーバーでやり過ぎに見えますが、当時の雰囲気からするとこのくらいが普通だったのかもしれません。

主題歌に引きずられた『ホームワーク』

1992年の『ホームワーク』は二組のカップル(唐沢寿明、清水美砂、福山雅治、浦江アキコ)が途中で組み合わせが変わるパターンで、ストーリーとしてはあまりクリスマスに向かっていく感じはありません。しかし主題歌が稲垣潤一「クリスマスキャロルの頃には」なので、歌詞の通り最終回のクリスマスに「君と僕の答え」が出ました。

クリスマスドラマの退潮を示した?『29歳のクリスマス』

そして1994年は『29歳のクリスマス』。仕事のストレスで10円ハゲができたあげくアパレルからレストランの店長に左遷、恋人にも振られて最悪の誕生日だった典子(山口智子)が「30才までには絶対に幸せになってやる」と誓うドラマ。しかしクリスマスの頃には、仕事が元のアパレルに戻るわけでも恋人とうまくいくわけでもないけど、「今、ここにいる自分が好き」と思える境地にいたるまでを説得力をもって描きました。

恋愛が成就しない『29歳のクリスマス』がヒットしたことは、クリスマス=恋愛という時代が終わったとは言わないまでも、ピークを過ぎたことを示すものでしょう。ちょうど「クリスマス・エクスプレス」のCMシリーズも1992年で終了しています(世紀が変わる2000年に星野真里で復活)。

ちなみに『29歳のクリスマス』はいまだにDVD化されていません。これは主題歌がマライア・キャリーで使用許諾料が高いためといわれています。そのかわりなのかはわかりませんが、フジテレビのBSやCSでよく再放送されています。

冬の時代を予見?

このあと2000年の竹野内豊・中谷美紀『真夏のメリークリスマス』や2004年の織田裕二・矢田亜希子『ラストクリスマス』(主題歌はワム!の曲の織田裕二カバー)などがありましたが、ヒットしていません。最近ではなおさら、ほとんど作られもしません。
クリスマスに向かっていったわけではないけど、クリスマスをクライマックスに持ってきて盛り上がった近年の連ドラというと『花より男子』第一シリーズぐらいでしょうか。

クリスマスドラマの退潮は、恋愛ドラマ冬の時代を予見していたのかもしれません。
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