喧噪の商店街から非日常へのワープ

田中健一氏

田中健一氏

JR環状線の天満駅から徒歩1分という場所にある『バー・アルバ』は、周囲の飲食店とは異彩を放っている。天神橋筋商店街に位置し、庶民的な飲食店が多い中で落ち着いた静かな空気が流れるスタンダードなバーだ。
商店街を歩いていると、周囲とはちょっと異質な扉がある。ヨーロッパの伝統的な装飾、アイアンワーク(何故だか日本では一般に練鉄をさす英語、ロートアイアンと呼ばれている)が施されたその扉を開けると階段があり、昇るとまた扉があり、それを開けて店内となる。この扉と階段が日常から非日常へとワープさせる。

カウンター席

カウンター席

カウンターの中には30代半ばのまだ若いバーテンダー、田中健一氏が立っている。穏やかで優しそうないい男だ。
商店街の喧噪からワープしてきて、見た目、ドラマの設定でありそうな小難しい顔つきのバーテンダーがいたら身構えてしまうところだが、田中氏の容姿は実にいい。柔らかい。ほっとする。
聞くところによると、わたしと同様の思いの客は多いようだ。それと天神橋筋商店街にもこういうバーがあるんだ、と知って、食事帰りに立ち寄る女性客もいるらしい。人は対極を求めるんだな。でも、わたしは田中氏の醸す空気もあると思う。

ミントとレモンの香り

店内

店内にもアイアンワーク

『アルバ』のいちばん人気はラフロイグ&ソーダだ。山崎や白州のソーダ割りよりもよく出るという。アイラモルトのピートの効いた香味がハイボールというカクテルになることでやわらぎ、しなやかな薫香を立ちのぼらせながら心地よい切れ味となる。
この味わいも非日常っていえば非日常だと、わたしはやけに納得した。
次に大好きなミントジュレップを頼んでみた。何でつくるのだろうと見つめていると、赤い封蝋を纏ったボトル、そう、メーカーズマークを手に取った。
いいぞ、いいぞ、である。いまわたしはミントジュレップのバーボン・ベースをジムビーム ブラックかメーカーズマークで飲んでいる。それ以外はごくたまにオールドグランダッドで飲むこともある。

ラフロイグ&ソーダ

ラフロイグ&ソーダ

田中氏は飾り付けに、ミントの葉とレモンスライスをあしらった。わたしはメーカーズマークにはオレンジが合うと思っている。原料の一部に使う小麦由来のスイート&スムーズな味わいとオレンジの相性がいいからだ。要は爽快感と甘美さだ。
レモンか、と少し懐疑的な気持ちで口をストローに近づけていくと、悪くはないのだ。ミントの香にすっきりとしたレモンの香がシンクロして、この爽快感もありだな、と気づいた。時にこの香に浸るのもいい気分転換になる。

メーカーズマーク・ミントジュレップ

メーカーズマーク・ミントジュレップ

しかしながら天神橋筋商店街を歩いて、この店にたどりついたなら、何を飲んでも非日常の美味しさになるんじゃなかろうか。田中氏の穏やかな接客とカクテルの味わいは、ホワホワっとした優しい気持ちにさせる。
天満のほうへお出かけの際は、是非どうぞ。

BAR ALBA
大阪市北区天神橋4-10-22 千寿ビル2階
Tel.06-6881-5123
17:00~1:00 火休
ウイスキー¥850~、カクテル¥950~、ラフロイグ&ソーダ¥950、メーカーズマーク・ミントジュレップ¥1,200、チャージ¥500

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