「キュレーター」って何?

今回お話を伺った加藤義夫さん

今回お話を伺った加藤義夫さん

以前、美術館で展覧会を企画する「学芸員」について取り上げました。今回お話を伺った加藤義夫さんは、美術館など特定の場所に限らず、「アート作品を展示してほしい」という依頼に答えて、展覧会を企画する人=「キュレーター」です。

「展覧会はいろいろな人と関わって、つくっていきます。デザインの業界でたとえると、ひとつのポスターをつくるとき、アートディレクターが指揮を執って内容や方向性を決めます。それを元にして、デザイナー、カメラマン、コピーライターなどいろんな人をまとめながら、一緒にポスターをつくっていきます。そんなアートディレクターの仕事内容に、キュレーターがしていることは似ています」。

美術館学芸員や大学教員を主な収入とするキュレーターが多いなか、フリーランスのキュレーターとして生活している人は、日本に10人もいません。加藤さんはフリーランスのキュレーターです。

「キュレーション」って何?

加藤義夫さんがキュレーターを務めた、あいちトリエンナーレ地域展開事業「アーツ・チャレンジ2012」青木恵美子作品展示風景

加藤義夫さんがキュレーターを務めた、あいちトリエンナーレ地域展開事業「アーツ・チャレンジ2012」青木恵美子作品展示風景

「キュレーション」とは、どういう意味なのでしょうか?

「20年ほど前、アメリカから『アートマネジメント』や『キュレーション』という言葉が入って来て、未だに誰もその意味をちゃんと訳せないままです。欧米での『アートマネジメント』や『キュレーション』は、美術の考え方を通して、あるいは展覧会を開くことによって、社会の枠組みを根本的に変えるような意味を持っています。そのために、展覧会を企画するのです。 しかし日本では、美術にはそのような哲学はないし、キュレーションの解釈もキュレーターによってまちまち。今の日本での展覧会やアートイベントの多くは、宗教性のないお祭りでしかありません」。


 
あいちトリエンナーレ地域展開事業「アーツ・チャレンジ2012」作品見学ツアー 嶋田晃士作品の解説をする加藤義夫

あいちトリエンナーレ地域展開事業「アーツ・チャレンジ2012」作品見学ツアー 嶋田晃士作品の解説をする加藤義夫

確かに2013年だけでも、日本全国で100を超えるアートイベントが開催されています。皆さんの地域でも、B級グルメ大会のような町起こしイベントとして、アートイベントが開かれていたのではないでしょうか。つまり100のアートイベントがある=100人のキュレーターがいる=100通りのキュレーションがある、とも言えます。
加藤さんがキュレーションを手がける展覧会やアートイベントの主催者は、自治体、民間企業、個人、海外からなど、タイプもさまざま。ほとんどは「全体予算が3000万円以下、中小規模の展覧会やアートイベントをしたいとき」に、キュレーターを加藤さんに頼んで来るようです。


 
「僕の場合は、野外やちょっと変わった場所での作品展示を考えてほしい、という依頼が多いです。展覧会のコンセプトにあまり縛られないように、柔軟な作品選びを心がけています。気が付くと『自然』や『生命』をテーマにした作品を選ぶことが多いのですが、作品だけでなく、アーティストの性格を重視しています。特にグループ展は『寄せ鍋』のようなもので、出品アーティストがそれぞれ具材やだしだとすると、味付けをするのが僕。アーティストに任せていても、お互い無理をしてしまう性格のアーティストでは、仕事が進みませんからね」。

「ヨッちゃんビエンナーレ2013」の場合

会場入口に張られたチラシ

会場入口に張られたチラシ

ビエンナーレとは、2年に1回開催するアートイベントのこと。加藤さんは、“おそらく世界で一番小さな”ビエンナーレとして、自分のニックネームを冠した「ヨッちゃんビエンナーレ」を開いています。
「2年前に1回目を開催したときは、招待作家と公募で選んだ作家で会場を分けて構成しました。今年2013年は大阪造形センターをつかって、イタリアからの招待作家も含めて14人のアーティストによる国際展となりました」。

 
搬入当日に来られないアーティストからの「指示書」を見ながら作品設置

搬入当日に来られないアーティストからの「指示書」を見ながら作品設置

11月10日~24日に開催された「ヨッちゃんビエンナーレ2013」。その準備は春ごろ、アーティストに出品を依頼することから始まりました。打診して「OK」となったアーティストには、出品してほしい作品のサイズや数を伝えました。加藤さんと会場を一緒に下見もしたアーティストもいます。開催の1カ月前には、フライヤーも完成。

 
会場全体を調整するのもキュレーターの仕事

会場全体を調整するのもキュレーターの仕事

そうしてオープン前日に、アーティストは作品を搬入します。事前に決めた場所に、加藤さんはアーティストと一緒に作品の位置や高さを調整していきます。海外在住のアーティストから宅配便で届いた作品は、加藤さんが指示書を見ながら作品を設置します。全体を見渡し「この絵はもう少し上かな」「これとあれを離そう」というように、スペースの中を調整するのがキュレーターの仕事。


 
アーティストとトークをすることも仕事

アーティストとトークをすることも仕事

さらに、他のアーティストより大きめのスペースで“特集”した井村隆さんとのトークも、司会はキュレーターとして加藤さんが務めました。

 

キュレーション/キュレーターに必要なこと、求められること

アーティストとコミュニケーションを取ることも仕事(あいちトリエンナーレ地域展開事業「アーツ・チャレンジ2012」出品作家の牛島光太郎と加藤義夫)

アーティストとコミュニケーションを取ることも仕事(あいちトリエンナーレ地域展開事業「アーツ・チャレンジ2012」出品作家の牛島光太郎と加藤義夫)

「美術のプロが分かればいい、という展覧会をするキュレーターもいますし、大衆的な内容の展覧会を行うキュレーターもいます。多様なものを見せることが、アートのできることのひとつなので、正しい展覧会はこれだ!というものはありません」。

ケース・バイ・ケースですが、展覧会やアートイベントの主催者は、予算規模の大きいもので予算の3%から5%、小さいもので10%を加藤さんに支払います。加藤さんが心がけていることは「お値段以上の内容にすること」。美術に詳しい人たちが納得するだけでなく、一般の人たちにも興味を引くような分かりやすい展示を目指しています。


 
来てくれたお客さんに作品説明をすることも仕事

来てくれたお客さんに作品説明をすることも仕事

「でもアートはスポーツや言語と同じで、見ただけで分かろうとすることは難しいもの。ルールを知ってスポーツは楽しめるし、単語の意味が分かって外国語を知ることが出来るように、美術にも勉強が必要です」。

 

現代美術はアーティストが生きていて、展覧会をしょっちゅう開いています。加藤さんは展覧会へ頻繁に足を運んだり、アーティストと交流を図る「勉強」を欠かさないそうです。

 

【展覧会・イベント情報】

キュレーターの加藤義夫さんが今後手がける展覧会、アートイベントの情報です。

Asia Hotel Art Fair 2014
2014年2月28日~3月2日
Marco Polo Hongkong Hotel(香港)

Art Osaka 2014
2014年7月11日~13日
ホテルグランヴィア大阪(大阪)

※どちらも、アートフェアでの展覧会を企画。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。