わずか16名の少女たちから始まった劇団が、100周年を迎えた奇跡……。
様々な困難に遭いながらも新しいものを求め、今に繋いだ軌跡……。
そこにいつもあったたくさんの輝石……。

宝塚歌劇団100年へのキセキのひとコマをご紹介いたします。
――Part8「『パリゼット』~レビュー黄金時代」――

■宝塚歌劇団100年へのキセキ
Part1「小林一三が目を付けた宝塚村」
Part2「タカラジェンヌの意外な誕生秘話」
Part3「宝塚歌劇 第一回公演はお伽噺」
Part4「宝塚音楽学校の移り変わり」
Part5「宝塚大劇場の変遷」
Part6「東京宝塚劇場の変遷」
Part7「『モン・パリ』~レビューの誕生」
Part8「『パリゼット』~レビュー黄金時代」
Part9「海外公演~世界へ羽ばたくタカラヅカ」
Part10「宝塚歌劇団 戦争からの復活」
Part11「宝塚歌劇団の大運動会」
Part12「『虞美人』~小林一三翁逝く」
Part13「『華麗なる千拍子』~芸術祭賞」


数々の成功を収めた宝塚歌劇のレビュー

1927年、岸田辰彌 作・演出の日本初のレビュー『モン・パリ』が大成功をおさめ、宝塚歌劇のレビュー黄金時代の幕が開きました。その後も岸田は、『イタリヤーナ』『ハルムの宮殿』『紐育行進曲』『シンデレラ』と新作を発表します。

その岸田辰彌のレビューを受け継ぎ、『モン・パリ』に続く大ヒットを作ったのが、『モン・パリ』では振り付けを担当した白井鐵造でした。岸田辰彌と同じく、欧米のレビューを視察した白井鐵造は、1930年(昭和5年)、『パリゼット』を上演します。

レビュー(仏Revue 英Review)とは「再び見せる」という意味。白井は、パリでの自身の生活を元に、全20場、上演時間一時間半の大作レビューを作り上げました。

『モン・パリ』同様、この『パリゼット』にも、当時の観客の度肝を抜いた「日本初!」の演出が続々と登場しました。
  • 淡いピンクやブルーの照明。
  • ダチョウの羽を使った羽根扇
  • 足を高く上げたラインダンスの振り付け(*)。
  • タップダンス。
  • それまで白塗りだった舞台メークをドーランに。
  • 付けまつげ(娘役のみ)を使用。
* ラインダンスは『モン・パリ』で初登場しましたが、足を高く上げる振付ではありませんでした。

また、本格的な男役が形成されたのも、この『パリゼット』だと言われています。


不朽の名作となった『パリゼット』

「すみれの花咲く頃」「さよなら皆様」

(C)宝塚歌劇団 (C)宝塚クリエイティブアーツ

今でも受け継がれているこれらと共に、忘れてはならないのが歌。

『パリゼット』には、「すみれの花咲く頃」「おお宝塚」など、7つのパリの流行歌が登場します。どれも時を経ても歌われている愛唱歌ですが、特に「すみれの花咲く頃」は、宝塚歌劇を知らない人にまで愛されました。「宝塚=すみれの花咲く頃」「タカラジェンヌ=すみれの花」というイメージが定着し、すみれは宝塚市の市花にまでなったほどです。

欧米のエッセンスを取り入れたレビューを、日本の劇団が作り演じる……。西洋と東洋の文化を止揚する出来栄えとなった『パリゼット』は、各組(当時は花・月・雪の3組)で続演され、不朽の名作とうたわれました。

その後も1月と8月に白井レビューが上演されます。
初めて銀橋が登場した『ローズ・パリ』(1931年)。名曲インディアン・ラブコールで知られる『サルタンバンク』。『ブーケ・ダムール』 (1932年)では、門田芦子が宝塚で初めて断髪し話題を呼びました。

そして星組が創設された1933年、『花詩集』が初演されます。8つの花物語りがテーマのアンソロジーのようなこの作品は人気を博し、翌年の東京宝塚劇場のこけら落とし作品にも選ばれ、宝塚と合わせ、通算5ヶ月間も上演されました。折しも、宝塚創立20周年の年でした。

さて当時のスターといえば……。

舞踊専科の天津乙女。声楽専科の三浦時子、橘薫、草笛美子、明津麗子、葦原邦子、大空ひろみ。
花組の奈良美也子、桜緋紗子。
月組の小夜福子、巽寿美子。
雪組の桂よし子、雲野富士子。
星組の門田芦子、春日野八千代。

素晴らしい作品と素晴らしいスターたちが創ったこの時代は、宝塚歌劇団第一期黄金時代とも言われました。

その後も白井鐵造は、榛名由梨、順みつき、大地真央らによって上演された『ラ・ベルたからづか』(1979年)に至るまで、150作品を作り上げました。

「岸田辰彌が誕生させ、白井鐵造が完成させた」と言われる宝塚のレビュー。華やかで豪華で、観客を夢の世界へ誘う宝塚歌劇のお家芸は、その精神や伝統を受け継ぎつつ、現在も新しいステージへと進化しています。


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