婦人病・女性の病気/無月経・生理不順・不正出血・過多月経

排卵痛でない腹部の激痛を伴う卵巣出血の症状・治療法

若い女性が急激に腹部に激痛を感じた場合、卵巣出血の可能性があります。卵巣出血とは、排卵によってできる卵巣の傷から出血してしまう状態。排卵日に起こることがあるただの排卵痛ではありません。不妊症との関連はありませんが、早期の婦人科受診が必要です。産婦人科医が詳しく解説します。

藤東 淳也

執筆者:藤東 淳也

産婦人科医 / 子宮の病気ガイド

腹部に激痛が起こる卵巣出血とは

女医

卵巣出血はだれにでも起きる可能性があります

急激に起こる腹痛を「急性腹症」といいますが、産婦人科関連で考えられる急激な腹痛には、「異所性妊娠(いわゆる子宮外妊娠)」と「卵巣出血」があります。

卵巣出血とは、排卵によってできる卵巣の傷から出血してしまう状態。排卵の傷が大きい場合などは大量に出血し、急激な腹痛が突然起こります。

20代の女性に多くみられ、だれにでも起きる可能性がありますが、通常は1週間程度の安静で治まります。しかし、まれに重症化し、入院や手術が必要になることもあります。排卵がある女性には誰にでも起きる可能性があり、早期の婦人科受診が必要です。

軽い排卵痛ではない卵巣出血の症状

卵巣の中には卵子があり、卵子は卵胞と呼ばれる袋の中にあります。卵胞は月経後に徐々に成長して大きくなっていき、月経開始から14日目ころに約20mm程度の成熟卵胞になります。そして、成熟卵胞が破れて卵子が腹腔内に出てゆきます。その卵子を卵管が捕捉して、子宮内へと導いていきます。これが卵胞発育、排卵という現象です。このように、健康な女性では排卵時に、毎月卵巣表面が破れているわけです。正常排卵時には卵巣表面が破れても出血はわずかですし、少量の卵胞内の液体が腹腔内に出るだけなので、痛みとしてはほとんど自覚されません。毎月、排卵の時期に軽い痛みを感じる場合を「排卵痛」といいます。

ところが、何らかの機序で卵巣表面の破れた部分から大量に出血することがあります。タイミングとしては性生活直後に起こることが多いのですが、腹腔内に大量の血液がたまることにより急激な腹痛が起こります。また、血管内の血液が大量に血管外に出るわけですから、貧血、低血圧、顔面蒼白となり、ショック状態になります。

卵巣出血の治療法

治療は安静、輸液、造血剤の投与でしばらく経過をみることになります。多くの場合は腹腔内に出血しても自然に止血することが経験的に知られています。また腹腔内にたまった血液は自然に吸収されてなくなります。しかし、腹腔内出血がどんどん進行し、症状も悪化して行く場合は、開腹手術や内視鏡手術が必要になり、手術操作によって止血させなければならないこともあります。

ただし注意点があります。妊娠反応の確認です。妊娠反応が陰性で、腹腔内から血液が確認されれば、ほぼ卵巣出血で間違いありません。しかし、妊娠反応が陽性の場合には
  • 異所性妊娠の可能性
  • 正常妊娠初期と卵巣出血の合併の可能性
  • 異所性妊娠と卵巣出血の合併
という3つの可能性が出てきます。妊娠の極初期の場合、これら3つの正確な診断は難しくなります。

卵巣出血の90%ルール

卵巣出血には、90%ルールというものがあります。次の3つです。
  • 90%が右側の卵巣出血
  • 90%が月経周期の15~28日目の黄体期に発症する
  • 90%が24~48時間以内に性交歴がある
左側にはS状結腸があり、クッションになって出血性黄体の破裂が起こりにくいため、90%が右側で起こるといわれています。また、黄体出血が圧倒的に多いため月経周期の15~28日目の黄体期に多く発症します。そして、性交刺激により出血性黄体の破裂が誘発されやすいからと考えられています。

下腹部痛が急激に起こり受診された方で卵巣出血を疑った場合、お話をよく聞くと「性交渉後から痛くなり始めた」ということがよくあります。

卵巣出血と妊娠・不妊症の関係

卵巣出血は20代の女性に多いということもあり、「卵巣に傷がつくということで将来、妊娠に問題が起こるのでは」など、不安の声をよく聞きますが、妊娠・出産に対する影響はありませんのでご安心下さい。重い卵巣出血を経験した人でも、ほとんどの方が普通に妊娠・出産をされています。

卵巣出血の再発予防法

また、人によっては卵巣出血を繰り返すことがあります。頻回に繰り返す場合はピルなどを使って排卵を抑える治療をする場合もあります。
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