半年前から予約が入る人気タイトルが、発売1ヶ月またずに7割引き

セールの図

人気だった……はずなのに

新しいプロモーションムービーが露出する度に大きな話題となり、発売の半年以上も前から店舗には予約問い合わせが次々と入る期待のタイトルがありました。バンダイナムコゲームスから2013年8月29日にPlayStation3(以下PS3)用タイトルとして発売された「ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル(以下ジョジョASB)」です。

ジョジョASBの発売初週の売上は約39万本、歴代のPS3用タイトルの中でも10本の指に入る好スタートです。しかし、発売直後、状況は一変します。39万本もの売上を叩き出したタイトルの価格が、どんどん下がっていったのです。希望小売価格7,980円があっという間に、6,000円、5,000円、2週間もすれば半額の4,000円程度で売られるところも多く見られました。2013年9月18日現在で、大手ネット通販のAmazonの価格を見ると、約7割引きの2,590円です。

なんでこれほどまでの短期間に価格が下がってしまったのでしょうか。人気があると踏んで出荷し過ぎたのでしょうか? 実は、そうではないんですね。問題はいくつかありますが、最も大きな失敗は、オンラインサービスによる課金システムにありました。なんでオンラインサービスの課金システムで、パッケージの店頭価格が下がるのか、お話していきたいと思います。

ユーザーの逆鱗に触れた課金システム

ジョジョASBの図

スピードワゴンのこの台詞にポルナレフ状態になった人も少なくないでしょう

ジョジョASBの評判を地に落としたのは、「キャンペーンモード」というサービスです。キャンペーンモードをプレイしていくと、キャラクターのコスチュームや、カラー変更、あるいは台詞など、自分好みにカスタマイズすることがきる「カスタマイズメダル」が手にはいります。ジョジョASBは「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズという漫画を原作とするゲームですから、自分のこだわりのカスタマイズで楽しみたいという原作ファンのユーザーはたくさんいることでしょう。

しかしこのキャンペーンモード、プレイしようとすると違和感のある説明がでます。「このモードは、エネルギーが溜まっている分だけ、 無料で遊べちまうんだ!」無料で遊べちまうんだ? エネルギーが溜まっている分だけ? なんとも不可解な説明です。

簡単に言ってしまえば、エネルギーが溜まっていないと遊べないモードで、連続して遊ぶには別途課金が必要、ということです。

コンピューターと1回対戦するのにエネルギーが1つ必要で、エネルギーは1個溜めるのに20分かかります。最大10個まで溜められますが、それを使いきってしまうと、次の対戦は20分後ということになります。またエネルギーが切れた状態から最大の10個まで溜めようと思えば3時間20分程かかる計算です。そんなに待ってられないということであれば、お金を払ってエネルギーをチャージするアイテムを買うこともできると、こういう仕組みになっているんですね。

キャンペーンモードは、コンピューターとの対戦を繰り返すとランダムでボスが登場、ボスとの対戦に勝利すると、対戦時とは別に設定されたボスの体力を削ることができます。何度も対戦に勝利してこの体力を削ることができれば特別なカスタマイズメダルがもらえます。ボスは1度現れれば10分間は連続で登場する仕組み。また、対戦時にエネルギーをたくさん賭けることによって、一度の勝利でボスの体力をいっぺんに削ることもできます。つまり、何度も対戦をして、ボスの登場を待ち、エネルギーを使ってボスの体力を削る、エネルギーが無くなったら3時間20分程待つか、お金を使ってチャージしましょうと、こういうことです。

ちなみに、ボスはたくさんいて、それぞれに体力が設定され、倒した時に手に入るカスタマイズメダルもボスごとに違います。課金せずにカスタマイズメダルを全部収集しようなんて思うと、途方もなく時間がかかるように設定されていて、それだけでガックリ来てしまいます。

しかもことさら問題だったのは、このキャンペーンモードについて、事前に詳しい情報を公開していなかったことでした。

「騙された」と思わせてしまった

ユーザーの図

8,000円も払ったのに……と思った人も少なくないのでは

この、遊べるけども時間的制限がかかっていて、快適に遊ぶためには課金が必要、というような仕組みは、ゲームを無料でダウンロードできるいわゆる「基本無料」を謳うソーシャルゲームなどではありふれたやり方です。ただしそれは、ゲームそのものを遊ぶのにお金がかからない分制限がかかっている、ということをユーザーが納得していて初めて成立するのであって、8,000円近い大金を払って購入しているユーザーに同じことを言えば、当然反感を買います。

さらに悪いことには、この課金しなければプレイが制限されるというキャンペーンモードの情報をバンダイナムコゲームスが発売直前まで公開しなかったことです。ユーザー側は、プロモーションビデオを見て期待して予約し、そして7,980円という決して安くない金額を払ってソフトを購入しました。39万人ものファンが、期待して、信頼して、お金を払ったんです。しかし、キャンペーンモードを遊び、その信頼を裏切られたと感じたユーザーがたくさんいました。中には、騙された、と思った人もいたでしょう。

さらに、格闘ゲームとしても問題が続出。永久コンボと呼ばれる一度始まったら途切れること無く繰り返すことができる連続技が発見されたり、システムの穴をついた偏った戦法が横行したり、オンライン対戦において操作を入力してからゲームに反映されるまでにタイムラグがあったりと、不備が目立ちます。インターネット上で不満の声が上がり、評価が下がっていきました。

中古の買い取りが殺到し、引きづられるように新品の価格が下がる

ワゴンセールの図

市場に出回っている数が多く、買い取りが多数あり、でも発売直後しか売れないという条件が揃ったゲームの結末は、かなり高い確率でワゴン行きです

こういった状況が、店頭での価格に大きな影響を与えます。初週39万本というのはかなりいいスタートです。ジョジョASBの在庫状況について考えると、生産出荷50万本達成という発表がありましたから、初週で約8割はさばけているわけです。

生産出荷というのは、店舗に届いた在庫の数ではなく、工場で生産した時点の数を言いますので、店頭消化率ということで言えば8割よりさらに高い数字が達成できていたと考えられます。これは他のゲームと比較しても低くない、むしろ高めの数字です。なので、冒頭申し上げた通り、出荷し過ぎて安くなったというわけではないんですね。

しかし、39万本さばいた後、状況が激変します。だまし討のような課金の仕組みがユーザーの怒りに触れ、格闘ゲームとしての不備も目立ってしまったため、お店に売りに行くユーザーが大量に発生します。

店舗から見ると、ジョジョASBの買い取りが異常に増えることになります。買い取りが増えるとどうなるか、店舗の中古在庫が増えるので買い取り価格が下がって行きます。在庫が増えて買取価格も下がると連動して中古販売価格が下がります。中古価格がグングン下がっていくと、新品のソフトを購入する人が少なくなります。評判が悪いならなおさらですね。

消化率がいいとはいえ、売上規模が大きいだけに絶対数はありますから、新品ソフトの売れ行きがピタッと止まれば、お店としては価格を下げざるを得ません。かくして、中古ソフトの価格に追随する形で新品ソフトの価格も下がり、あっという間に半額以下になってしまったのでした。

これ以上ない好スタートを切ったにもかかわらず、ユーザーの反感を買い、値崩れを起こしてしまったジョジョASB。バンダイナムコゲームスは急いで対策を講じますが、根本的な解決は中々難しいかもしれません。

たったひとつのシンプルな答え

ジョジョASBの図

良く出来ている部分は本当に良く出来ているんです。だからもったいない!(イラスト 橋本モチチ)

バンダイナムコゲームスは、急ぎ対策を実施します。永久コンボや偏った戦法を封じる為にシステムの穴埋めをするアップデートを実施、有料配信キャラクターの「パンナコッタ・フーゴ」を無料提供、さらにキャンペーンモードで20分に1つ回復するエネルギーが4倍早く回復する「エネルギー回復量4倍速キャンペーン」を常時実施と、とにかく不満が上がっている点の改善を急ぎます。

もっとも、本来格闘ゲーム部分の調整は非常に繊細で難しく、短い時間で指摘されている部分を修正する為に大きくシステムをいじった為にゲームバランスに大きな影響を与え、格闘ゲームとして楽しみたいユーザーからは、アップデートに対しても不満が出ています。

また、新キャラクターの無償提供や、キャンペーンモードのエネルギー4倍回復といったことに対しては喜びの声もあがっていますが、根本的な解決になっているかといえば難しいかもしれません。何故なら、本質的な問題はゲームの細かい調整の話ではなく、信頼を失ったという点にあるからです。

ここまで厳しいお話をたくさんしてしまいましたから、ジョジョASBは面白く無いゲームである、駄作であると思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、ガイドがプレイした限りではそんなことはありません。

純粋な格闘ゲームとして考えればあまりに穴が多く、また、オンライン対戦時のタイムラグの酷さから、とても快適に遊べるものではありません。しかし、原作者である荒木飛呂彦先生の絵を3Dにしたらこんな風に動くんじゃないかというイメージそのもののキャラクター、原作のカラーページの雰囲気そのままな背景、原作のカメラワークまで再現した必殺技、プレイアブルキャラクターはもちろん、ちょっとした台詞を言う為だけにイラストで登場するキャラクターまですべてボイス付き、遊んでみれば本当に作りこまれていることが分かります。スタッフロールで見れるゲームのキャラクターモデルを利用した原作再現ムービーは鳥肌モノです。

1万円以上もするスティックを買って、この技の硬直時間が何フレームで……なんてことを考えながら遊ぶ格闘ゲームファンには決してオススメしませんが、原作ファン同士が次々キャラクターをとっかえひっかえ、コントローラーでガチャガチャ遊ぶ限りは、こんなに素晴らしいソフトは中々お目にかかれません。他の漫画やアニメなどを原作としたキャラクターゲームと比較しても、むしろ良い方だと言えるぐらいです。

しかし、一度こんな風にファンの心理を利用するようなやり方に嫌気がさしてしまえば、悪い所もあるけど、良い所を見て楽しく遊ぶ、なんていう気持ちにはなれない人がたくさんいるのです。むしろ、嫌なところばかりが目についたりすらします。今回の記事ではすべてを網羅していませんが、インターネット上では非常にたくさんの問題点が、ユーザーによって列挙されています。

課金があるからいけない、ということでもありません。高騰する開発費の回収を考えれば、パッケージソフトだってダウンロードビジネスに取り組む必要があります。メーカーとユーザーが信頼関係で結ばれ、良い物を提供するからその分の対価が必要ということであれば、お金なんて惜しくないというファンはたくさんいるはずです。

むしろ、長期に渡ってしっかりとしたお客さんを掴むチャンスだったはずです。そのチャンスをみすみす逃したのです。ユーザーを怒らせ、ゲームの評価は価格と共に地に落ちました。パッケージはとにもかくにも売上が立ったと言えます。しかしダウンロードビジネスをしていくのであれば、ユーザーとの信頼関係が崩れ去ってしまったことは痛恨の極みでしょう。

この話は、ジョジョASBや、バンダイナムコゲームスだけではなく、ゲーム業界全体においても非常に重要な意味を持っています。ユーザーとの信頼関係を大切にし、気持よくお金を払ってもらうということをもっともっとよく考える必要があるように感じます。

ガイド追記 2013年9月21日、本文に誤りがありましたので修正しました。キャンペーンモードのエネルギーは15分1個ではなく、20分に1個回復となります。お詫びして訂正いたします。

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