ソチ・オリンピックへの懸念

ジョニー・ウィアー

全米フィギュアスケートチャンピオンでオリンピック出場経験もあるジョニー・ウィアー選手(左)。一昨年、パートナーのビクター・ボロノフさん(右。ロシア系アメリカ人の弁護士の方)と同性結婚しました。

2014年冬のソチ・オリンピックに関する懸念も広がっています。ソチを訪れる観客だけでなく、仮にゲイやレズビアンのアスリートがメダルを獲得してカメラの前で同性愛者権利擁護のパフォーマンスをすれば、処罰されかねないからです(なにしろレインボーカラーすら許されないのです)

オープンリー・ゲイのフィギュアスケート選手、ジョニー・ウィアは、自分がどんなにロシアを愛しているかを語ったうえで、このように綴りました。
「僕はこの先、一生ロシアに行くためのビザを発行してもらえないかもしれないという事実、僕が愛してやまないロシアに子どもたちを連れていくという夢が叶わないかもしれないという事実、そしてもちろん、僕が公の場で恥ずかしめを受け、暴行され、逮捕され、刑罰を受け、国外追放されうるという事実。この法案のせいで、僕は2月のソチオリンピックに安全に参加することができないかもしれない、そして僕の友人で敬愛するエフゲニー・プルシェンコが開催するツアーにも参加できないかしれない。僕のたくさんのロシアの友人の子どもたちにも二度と会うことができないかもしれない、そしてロシアで二度と仕事ができないかもしれない。ずっと応援してくれたロシアの素晴らしいファンのことを考えると…彼らの前で二度とパフォーマンスを見せることができないかと思うと、僕の心は砕け散りそうだ。そして、僕と同じように生まれついた(生まれた国が違うだけの)同志たちのことが、本当に心配だ」

他の選手も、オリンピックへの参加をボイコットする代わりに、個人的な意思表示を行ったり、五輪開催期間中に同性愛者の権利を訴えるパレードを行うなどの抗議活動を呼びかけたりしています。

ALL OUT」はIOCに対し、同性愛者弾圧をやめるようロシア政府に圧力をかけるよう求める署名を集めています。 

別の署名は、オリンピック開催地をソチからカナダのバンクーバーに変えるよう求めています(カナダは同性婚を認めるくらいゲイに寛容な国。そしてバンクーバーは国際的なゲイのウィンタースポーツイベントを開催している実績があります)

Outsports(スポーツに関するゲイのトピックを報道する有名なサイト)の代表であるCyd Zeigler氏は、ロシアが五輪憲章の「スポーツの実践は人権」「全ての個人はいかなる差別もなく友情と連帯とフェアプレイの精神とともに相互理解を求める五輪精神の中でスポーツを行う可能性を有せねばならない」という条文に違反しているとして、ロシアのソチ五輪への参加を禁止すればいい、と訴えています。

国際オリンピック委員会(IOC)は7月末に「新法が五輪の観客や参加者には影響しない」との確約を「ロシア政府最高部から」取り付けたと述べましたが、ロシアのムトコ・スポーツ相は「非伝統的な性的指向のスポーツ選手のソチへの来訪を禁じるものではないが、選手が公の場でプロパガンダを始めれば、当然ながら責任を問われることになる」「スポーツマンなら法律は守ってほしい」と述べており、矛盾しているように見えます。

IOCのジャック・ロゲ会長は「五輪は全ての人にオープンでなくてはならない。それは観客、役員、ジャーナリスト、そしてもちろんアスリートにも当てはまる」「IOCは五輪が差別なく開催されるよう努力を続ける」「この原則を脅かそうとする動きには全力で対抗する」と語りました。

在英ジャーナリストの木村正人氏は、「IOCが北京五輪と同じような態度を繰り返すつもりなら、五輪はスポーツを通じて差別のない世界を推進しようという高邁な精神を失い、国威発揚と国内の景気対策に利用される落とし穴に再びはまるだろう」と厳しく批判しています(詳しくはこちら

日々、新しい情報が届き、さまざまな議論が飛び交うなか、ソチ五輪での同性愛選手の扱いについては依然、不透明なままです。IOCがロシア政府にどのような態度で接していくのか、今後も注目されます。
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