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作曲家と完璧な美少年の物語「ベニスに死す」

50代の作曲家アッシェンバッハは体調を崩し、保養のために一人ベニスに行きます。宿泊先のホテルにおいて完璧な美少年タージオを発見するのです。この映画でビスコンティの作る時代風景は完璧な美とも言えます。出てくる老若男女全てが美しく、太陽の下大きな帽子とシフォンの様なベールは本当に優雅で綺麗です。

投稿記事

上流階級の外も内も見事に描ききった映画

■作品名
ベニスに死す(1971)
■監督
ルキノ・ヴィスコンティ
■主演
ダークボガード、ビョルン・アンドルセン
■DVD発売元
ワーナー・ホーム・ビデオ


ドイツ人作家トーマス・マンの中編小説の映画化です。
彼自身が実際にヴェネツィアに旅行し上流ポーランド一家の
美少年に夢中になり帰国直後に書いた小説で、
高い評価を受けた彼の代表作となる小説です。
なので、あの美少年タージオは実在しているのです。

そんなリアルな小説を、ヴィスコンティの美的感性で仕上げた映画です。

あらすじは、50代の作曲家(アッシェンバッハ)は体調を崩し
保養のために一人ベニスに行きます。
宿泊先のホテルにおいてひときわ美しい家族を見つけ
その中に完璧な美少年タージオを発見するのです。

この作曲家は元々、美に対して確固たる信念があり、
唯一この映画の中で激しく会話をするシーンは、
作曲家とその友人が美について意見を交わしている所です。

それ以外は、あまり会話の無い映画で、
映像で作曲家と美少年の心の内を知るのです。

ベニスに来た瞬間から好きになれなかった、ホテルや、街並みやベニスの人々……
唯一、彼の癒しや保養目的が美少年タージオになります。
同世代の少年と戯れるタージオに目を奪われ嫉妬したり……
街の不穏さ(疫病)に気づきつつも居残る、アッシェンバッハ。

ある日床屋へ行き、店主に言われるまま
ひげを整え、白髪を染め、顔色を良く見せる為に薄化粧までされ
彼はそのまま道化の様に過ごします。
タージオはそんな彼を見てもいつもと変わらず、片方の腰に手をあて
ポーズを取りアッシェンバッハを誘うかの様に見つめます。

結局、タージオ一家が帰国する日に、海辺で彼を見ながら、
汗で化粧や髪の染め粉が溶けた汚れた顔で亡くなってしまうのです。

顔は汚くとも、完璧な美少年タージオを最後に目に焼き付け
死んだ作曲家は幸せとも取れる映画です。

この映画でビスコンティの作る時代風景は完璧な美とも言えます。
出てくる老若男女全てが美しく、太陽の下大きな帽子とシフォンの様なベールは
本当に優雅で綺麗です。
しつこい道化師の笑い、タージオ一家の余裕の美的存在。
この時代の上流階級の外も内も見事に描ききった映画です。

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