ラグビーの起源は「フットボール」

ラグビー発祥の地であるイギリスでは、かつて「フットボール」というスポーツが広く行われていました。しかしこのフットボールには統一されたルールがなく、街や学校ごとにそれぞれ独自のルールを作ってゲームを行っていました。そのため、対外試合を戦う際は事前に両チームのキャプテン同士が話し合い、どのようなルールで試合を進めるかを決めていたそうです。

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試合後、お互いの健闘を称えあうのがラグビー文化


そのようにいくつもあるフットボールの中でラグビーの原型となったのは、ロンドンの北西約140キロメートルの場所に位置する「ラグビー校」というパブリックスクールで行われていたフットボールです。このラグビーフットボールが各地に広まっていく中で、次第に基本的なルールが整備されていき、ほぼ現在のような形として完成したのが1871年。ラグビーの国際統括機関であるIRB(International Rugby Board)は、これをラグビー競技誕生の年と定めています。

かつてはレフリーさえ置かず、キャプテン同士が話し合って決めたルールに基づいて自律しながらプレーしていたという背景から、ラグビーではルールを「守らなかったら罰を与えられるもの」ではなく、「ゲームを進める上で大切なものとして共有し、みずから守るもの」という「ロー」(Law/法律)ととらえる文化があります。

激しく体をぶつけ合う中でも遵法精神を維持し、正々堂々と競い合うことに、ラグビープレーヤーは昔から強い矜持を持っていました。それが、ラグビーが「紳士のスポーツ」といわれる所以です。

日本では「ラグビー校でサッカーをしている最中に、ウェッブ・エリスという少年が突如ボールを持って走り出した」というエピソードが語られ、それがラグビーの起源であると認識されています。しかし、そのエピソードが実話である証拠は、残念ながら残っていません。

エリス少年はラグビー校からオックスフォード大を卒業し、その後フランスで宣教師になったのですが、このエピソードが持ち上がったのは、彼が亡くなった後です。ラグビーというスポーツを広く普及していくために、後の時代に作られたロマンティックな物語であるという説が、世界的には有力とされています。

ニュージーランドやオーストラリアが強い理由

ラグビーが行われるようになった19世紀後半はちょうど産業革命が終わった頃。当時のイギリスは世界中に進出して植民地を拡大していました。そして世界を舞台に仕事をしたり、国を守るために戦ったりする人々を教育する上で効果的であるということから、ラグビーは様々な学校へと広められました。ラグビーでは激しい肉体的負荷がかかると同時に、頭を使うことも求められます。知性と技術と体力を兼ね備えた人間を育てるために活用されたのが、ラグビーなのです。

また、イギリスが植民地化した世界中の地域でも、ラグビーは広められていきました。ラグビーはその成り立ちからして人材育成に直結した競技であり、当時まだ未開の地だった各地で、肉体的にも精神的にもたくましく、かつ自律でき、組織で機能できる人材を育む上で、うってつけだったのです。たとえば、現在世界ランキング1位のニュージーランドや2位の南アフリカ、3位のオーストラリアはいずれもかつてイギリスの植民地だった国であり、いまでは世界的な強豪国へと発展を遂げています。

なぜあの形?楕円のボールの起源

ラグビーでは他のスポーツを見渡しても珍しい楕円のボールが使用します。なぜ楕円球が使われるようになったかということについては、様々な説があります。

豚の膀胱を膨らませて使っていた、皮を縫い合わせる上でもっとも作りやすい形だった、ボールを手に持ってプレーする上で一番適した形だった、はたまたゲーム性を高めるためにどこへ転ぶかわからない形にしたかった等……。しかし現在は、ラグビーという競技の特異性を明確にするために楕円球が使われるようになったとする説がもっとも有力です。

日本で一番知られているのは「豚や牛の膀胱説」ですが、実際に膀胱を膨らませると、ほぼ球体に近いものになります。また実際、当時の丸いボールがこれまでいくつも発見されており、この説については根拠が薄いと考えられています。

ただこの件については、どの説も決定的な証拠が見つかっておらず、おそらく今後も明確な答えは出ないでしょう。一方で、一般的な丸いボールではなく楕円球を使うことで、人々の興味を引きやすい側面があるのは確かです。他にもこのような歴史的逸話がたくさん残されているのは、ラグビーの特徴と言えるかもしれません。

意外?日本生まれのラグビー文化

ラグビーを語る上でよく耳にする言葉に、「one for all, all for one」(ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために)と、「ノーサイド」があります。これらはラグビーの美徳を表す素晴らしい言葉であると私も強く認識していますが、実はこの言葉が使われているのは、世界中でも日本だけです。

「one for all, all for one」は、フランスの「三銃士」という物語の中で登場する有名な言葉です。おそらくそれを読んだ日本のラグビー関係者が、「これで戦うんだ!」と引用したことから広まったと想像されます。また「試合が終われば敵味方なく健闘を称えあう」という意味で使われる「ノーサイド」については、海外でラグビーをプレーされた方がアフターマッチファンクション(試合後に両チームの選手、スタッフなどで行われる簡単なパーティー)等のラグビー文化に感銘を受け、それを日本に持ち帰ったことから広まった言葉だと言われています。

これらはいわば「ジャパニーズ・ラグビー・カルチャー」というべきものですが、言葉としてはないだけで、海外でもラグビーに内在する美徳としてとらえられていますし、誰もが共有できるものです。だからこそ日本のラグビーが世界に誇る文化として、前面に押し出していくべきだと考えています。2019年には日本でラグビーのワールドカップが開催されますが、そこでこの日本のラグビーカルチャーをメッセージとして、世界中の関係者やファンに届けたいと思っています。

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