GNHと経済成長の間で揺れるブータン

GNHと経済成長の間で揺れるブータン

“幸福の国”として世界中の関心を集めるブータン。国民総幸福量(GNH)という独自の尺度を導入し、国民の幸福に基づく国作りを目指していることで知られています。憲法にも国の基本政策として「国民総幸福の追求」を掲げているほどです。

ブータンの「国民総幸福量」に見る幸せの形(All About News Dig)

美しい自然と仏教文化のなかで、経済的には決して豊かではないけれど、幸福に暮らす素朴な人々――。そんなイメージで語られることが多いブータンですが、理想と現実とのギャップも報じられています。

近代化にともない、犯罪率も高まり、空き巣や強盗、若者による薬物濫用などの問題もでてきているそう。さらに、ブータン国内には民間事業が発達していないため、事務職の求人は限られている一方で、建設産業などにおける手仕事はインドから越境してきた労働者が大半を担うなど雇用のミスマッチがあり、いずれ失業が大きな問題となるという意見もあります。

2005年に行われたブータン政府による国勢調査によると、国民の97%が幸福であると回答したというエピソードが有名だが、そこにも思いがけない誤解が隠されていました。選択肢は「非常に幸福(very happy)」、「幸福(happy)」、「非常に幸福とはいえない(not very happy)」の3つのみ。「どちらでもない」「不幸」といった選択肢がない上、こうした世論調査や意識調査で、選択肢が3つある場合、中央に回答が集中する傾向があることも指摘されています。

ちなみに、2010年にブータン国立研究所が2010年に行った調査によると、ブータン人の平均幸福度は6.1(0がとても不幸、10がとても幸福として11段階から選択)。一方、日本は内閣府の調査によれば、6.6と、日本のほうが幸福度が高いという結果だったそう。

そもそも「幸せ」という概念自体、主観によるところが大きい曖昧なものだけに、調査方法や定義の仕方によって、数値が変わるのはごく当然のことなのかもしれません。しかしながら、各国の政府や自治体に広がりつつ、“幸福の指標”を取り入れようという動きは広がりつつあります。新たな尺度をもたらしてくれるのか、それとも、幻の理想郷となるのか。それを決めるのは私たち一人一人なのかもしれません。

【関連記事】
ブータンの「国民総幸福量」に見る幸せの形
“幸福立国”ブータンの役割
インドから見えるブータンの“国民総幸福量”のまぶしさ
「国民総幸福量」はいいけど、まずは「わが家の幸せ基準」
「幸福」は“主観”だからこそ素晴らしい尺度となる
日本ならではの“国民総幸福量”を考えよう
パンドラの箱を開けたブータンの未来
幸福は、忘れた頃にやって来る
「豊かになること」と「豊かでありたい」ということ
決めるのは自分! 経済の発展と自分の幸せはイコール?
それぞれの国の形にあったGNHの追求を
納得した生き方なら幸せだって最大に!
ブータンの「国民総幸福量」を使っても、日本は幸せになれない
日本にこそ必要な「国民総幸福量」
国民総幸福量はブータンだから活きる。荒川区には似合わない
国民総幸福量は“負け惜しみ”に最適
みんなの幸せは大切ですが、あなたの幸せはもっと大切です
ブータンにはブータンの、日本には日本の国家理想がある
国民総幸福量、とてもコワいです
国民総幸福量に“ゆとり”と同じニオイを感じる
未来に続かない幸せは幸せじゃない
「国民総幸福量」を手放した先に“幸せ”がある
ブータンと離島と南国トムソーヤ

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。