乳がん患者は年5~6万人のペースで増えている

女性

女性にとって気になる乳がんの罹患は、年々増加している。

女性のがんと診断される部位でもっとも高い乳がん(国立がん研究センターがん対策情報センター「2008年 地域がん登録全国推計によるがん罹患データ」より)。私の周囲でも、検診して乳がんが見つかったという人は多く、誰が罹患してもおかしくないと実感しています。乳がん患者さんは、毎年5~6万人のペースで増えており、乳房切除術(全摘、全切除)を選択される人も多いそうです。日本経済新聞社の実力病院調査によると、全摘手術を希望する理由として通院に片道2~3時間かかるなどの時間的かつ体力的な負担や経済的な状況が多いとのことです。

とはいえ、身体の一部を失うのは、本当に心身ともにつらいことですよね。乳房切除術をされた方の中には、「温泉旅行に行きたい」「子どもたちと一緒に気兼ねなくお風呂に入りたい」など、日々の行動範囲を狭めずに生活できるよう、乳房再建を求める声もよく聞かれます。

そこで、2013年7月より健康保険の対象になったという人工乳房による乳房再建について取り上げたいと思います。乳房再建で悩んでいる方のみでなく、今後、乳房の切除を一部にするか全部にするか迷う際などにも、この情報が少しでも判断材料としてお役に立てればと思います。

乳房再建の治療法 「自家組織」と「人工乳房」

乳房を切除したあと、どこから組織を補充するかで大きく2つの方法があります。1つは自分の身体の一部をとって移植する自家組織、もう1つは、人工物を皮膚の下に入れて乳房を再現する人工乳房です。前者の自家組織による乳房再建手術は、すでに2006年に健康保険の適用となっています。

この2つ手段は、どちらもメリットとデメリットがあり、その主なものをまとめたのが、表1です。
がんの治療法

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自家組織として、腹部や背中の筋肉、脂肪、皮膚を移植する方法は、もともと自分の細胞を使うので異物に対する拒否反応がないこと、また人工乳房のような冷たさもなく、自然な乳房になるのがメリットといえます。しかし、自分の健康な腹部や背中に大きくメスを入れるので入院を伴う大手術になり、どうしても体の負担が大きくなってしまうのが気になるところです。

一方、皮膚を組織拡張器(エキスパンダー)で一定期間伸ばした後、シリコンインプラントを入れる人工乳房は、自分の体の他の部分を傷付けずに済むので負担が軽く、回復も早いといわれています。しかし、異物を体内に入れるので冷たく感じたり、胸の上部に独特のしわができやすいという利用者の悩みも聞きます。また、皮膚が固くならないようにマッサージをしたり、10年前後で中のシリコンを取り替えたりとメンテナンスも必要とのことです。

つい先日までは、人工乳房は美容整形の要素もあるため、健康保険の対象にはならず、片方の乳房だけでも50万円~100万円程度の費用になる点が患者さんを悩ませてきたと思います。それが、やっと過去の実績などから健康保険の対象になる医療器具が認められ、2013年7月から適用されることになりました。

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