*『4 Stars』特集目次*

  • 『4 Stars』2017開幕レポート(本頁)
  • 2017年版演出・サラナ・ラパイン インタビュー(本頁)
  • 『4 Stars 』2013開幕レポート(2頁)
  • 2013年版演出・ダニエル・カトナー インタビュー(2頁)

【『4 Stars2017』観劇レポート】
国境を超え、ミュージカル界の至宝たちが
珠玉の歌唱で“愛の探求”を雄大に描くコンセプチュアルなコンサート

『4 Stars 2017』撮影・森好弘

『4 Stars 2017』撮影・森好弘

中央にオーケストラがゆったりと配され、彼らを取り囲むように左右の階段と上下のスペースを使いながらステージは展開。はじめに我らが日本を代表する城田優さんが登場し、今回のコンサートは“search for love(愛の探求)”というテーマを持つものであることを語ります。

『4 Stars 2017』撮影・森好弘

『4 Stars 2017』撮影・森好弘

“Longing for adventure(冒険への憧れ)”という小テーマにぴったりな“Corner of the Sky(Pippin)”を皮切りに、シエラ・ボーゲスさんの美しくも芯のある“Part of your world(Little Mermaid)”、スケール感たっぷりのラミン・カリムルーさんの“Neverland(Finding Neverland)”、スペイン語で楽曲に新たな風合いを加える城田さんの“Maria(WestSide Story)”、シンシア・エリヴォさんの力強いリードを3人が美しいコーラスで支える“The Color Purple(The Color Purple)”まで、流れるように一気に進行。

一曲歌い終わってもすぐに舞台を去って次の歌い手にバトンタッチというわけではなく、次の歌唱まで残ったり、歌ったキャラクターの性根でちょっとしたしぐさを見せ、次のナンバーとの関連性を見せるのは、演出家は違えど、前回の【4 Stars】コンサートとも共通する趣向です(演出・サラナ・ラパインさん)。

『4 Stars 2017』撮影・森好弘

『4 Stars 2017』撮影・森好弘

続いて小テーマは“travel” “friendship” “love”と移ろい、ダンサー四人も加わって城田さんとシエラが『ラ・ラ・ランド』(Another day of sun)を軽快に歌えば、ラミンは「闇が広がる」(『エリザベート』)で鼻濁音を含め日本語での歌唱をかなりの精度でこなし、ナイーヴな城田ルドルフに対して野獣のごとき勢いで迫り、場を沸かせます。

『4 Stars 2017』撮影・森好弘

『4 Stars 2017』撮影・森好弘

ラミンだけでなくシエラも日本語にて同演目の「私だけに」をどこまでも自在に伸びる高音で聴かせ、『王様と私』では全く異なる2曲(シンシアのソロ“Hello Young Lovers”とラミン、シエラのデュエット“We Kissed in a Shadow”)が見事に絡み合い、一曲にマッシュされるという趣向が(音楽監督・フレッド・ラッセンさん)。

ほか、大切な人との別れを歌うシンシアとラミンの"Worlds Apart"(『ビッグ・リバー』)からの流れが見事な、喪失感に沈む心中を歌うラミンの「カフェ・ソング」(『レ・ミゼラブル』。クライマックスから消え入るような結びへの移行が必聴)、城田ロミオに対してシエラ演じるジュリエットがフランス語原詞を一言一言、内面から絞り出すように歌い、一瞬にして場内を情感で満たした“Aimer”(『ロミオ&ジュリエット』)など、一曲でも十分に満足度の高いパフォーマンスが次々と登場、時を忘れさせます。

『4 Stars 2017』撮影・森好弘

『4 Stars 2017』撮影・森好弘

二幕では“love”の小テーマの続編としてプリンセス・メドレーや大人の愛を語る『ナイン』(シエラの情感溢れる“Unusual Way”が出色)、『フォーリーズ』等のナンバーが続き、最終小テーマ“Coming Home”へ。シタール風の音色が一瞬にしてインドの風を運んでくる城田さんの“Journey Home”(『ボンベイ・ドリームス』)、シエラの“Home”(『ファントム』)、ラミンの“Bring Him Home”(『レ・ミゼラブル』)と来て、シンシアが自身の代名詞と呼ばれるナンバー“I’m Here”をやや足を開き、腰を落とした独特のポーズでダイナミックに歌い、4人が故郷への思いを荘厳に歌いあげる“Anthem”(『チェス』)にて幕。

若者が人生という航海に出て様々な経験を積み、友情や愛を知って帰還(あるいは自分自身に立ち戻る)までを、珠玉の歌唱で雄大に、濃密に描き、出演者のトークをフィーチャーするコンサートとは一味違う、コンセプチュアルなショーとなりました。前回からの続投で気心の知れたラミン、シエラ、城田さんの輪の中に独自の個性を持ったシンシアが参加することで、新たな「4 Stars」色も楽しめる公演となっています。

『4 Stars 2017』撮影・森好弘

『4 Stars 2017』撮影・森好弘

アンコールはシンシアが主演したこともある『シスター・アクト』より、“Take Me Heaven”。自然と手拍子が湧き上がり、場内はノリノリに。ホールの外に出てからも、多くの観客が高揚感の中、寒さを感じることなく電車や地下鉄に乗り込んだことでしょう。

演出家サラナ・ラパイン インタビュー

サラナ・ラパインundefined2005年からバートレット・シャーのアシスタントを勤め、リンカーン・センター・シアターで数々の公演に携わる。12年に『ウォー・ホース』北米ツアーに参加、14年に日本ツアーも手掛ける。16年にニューヨーク・シティ・センターで『サンデイ・イン・ザ・パーク・ウィズ・ジョージ』コンサート版を演出。同作品で17年2月に演出家としてブロードウェイデビューを飾り、好評を博した。(C)Marino Matsushima

サラナ・ラパイン 2005年からバートレット・シャーのアシスタントを勤め、リンカーン・センター・シアターで数々の公演に携わる。12年に『ウォー・ホース』北米ツアーに参加、14年に日本ツアーも手掛ける。16年にニューヨーク・シティ・センターで『サンデイ・イン・ザ・パーク・ウィズ・ジョージ』コンサート版を演出。同作品で17年2月に演出家としてブロードウェイデビューを飾り、好評を博した。(C)Marino Matsushima


歌で“ストーリーテリング”が出来る俳優・城田優さんを
ぜひブロードウェイで演出したいです

――サラナさんはどんなご縁で『4 Stars』を演出されたのですか?

「仕事仲間の美術デザイナーから梅田芸術劇場のプロデューサーを紹介されたのです。私は以前、『War Horse』のツアーで来日したことがあり、いつかまた日本で仕事をしたいと思っていたので、とても嬉しく思いました」

――『4 Stars 2017』は“The Search for Love(愛の探求)”というテーマを持つコンサートでしたが、このテーマはサラナさんが選ばれたのですか?

「はい、二つの理由からこのテーマを選びました。一つは、アメリカの女流作家の作品に“どんな困難に直面しても愛の探求は続いていく”という一節があって、この困難な時代においてタイムリーだなと思えたこと。もう一つは、人との出会いにとても積極的でオープンな城田優さんという俳優に出会ったことで、日本での仕事にチャレンジする私と“探究心”が重なるのではと思えたのです」

――コンサートでは常にテーマを設定されているのですか?

「いい質問ですね。ええ、その通りです。以前キャバレー・ショーを演出した時に、TVドラマ『glee』の音楽スーパーバイザーをやっている知人が“キャバレー・ショーであれコンサートであれ、常にストーリーを呈示したらどうか”とアドバイスしてくれ、以来、実践しています。お客様が気づかれるかどうかはわかりませんが、私の中にはいつもテーマがあるんですよ。」

――テーマを設定してからの選曲作業はいかがでしたか?

「とても時間がかかりました。何しろ、プロデューサーからいただたいた、4人の出演者の持ち歌リストがとっても長いものだったんです(笑)。まずはそれを少しずつ削いでいって、日本のお客様にとってお馴染みの曲を厳選すると同時に、私からのアイディアで、新たなレパートリーを加えていきました」

――第一部で登場する『エリザベート』『モーツァルト!』『ロミオ&ジュリエット』等のヨーロッパ・ミュージカルは、サラナさんにとっては新たな出会いだったのではないでしょうか。

「そうですね。クラシカルで、自分にとっては新世界でした」

――日本ではいくつかのヨーロッパ・ミュージカルはとても人気がありますが、ブロードウェイではそうでもない、というか興行的に成功する作品はほとんどありません。なぜだと思いますか?

「ミュージカル業界というのはとても“アメリカン”なんです。ミュージカルはとても技術を要する難しい芸術で、ほぼ一つのラインで代々、受け継がれてきていると言えます。アメリカのプロデューサーや観客は、優れた才能を持つアメリカ人がたくさんいるのだからと、あえて外に目を向けないのではないでしょうか」

――例えば『ライオンキング』のジュリー・テイモアは非常に斬新なスタイルを持っていましたが、彼女がブロードウェイに受け入れられたのは、アメリカ人だったからこそなのですね。

「新しいものを受け入れる余地は、ブロードウェイには常にあると思うんです。ただ、オスカー・ハマースタインが祖父、スティーヴン・ソンドハイムが父、その子がリン・マニュエル・ミランダといった具合に伝統が受け継がれている、小さな世界なんですよ」

――なるほど。『4 Stars』の選曲にお話を戻しますが、サラナさんが選んだ“新たなレパートリー”の中で特に成功したと思えた選曲は?

「私にとってはちょっとした驚きだったのですが、プロデューサーからは、日本のお客さんのほとんどは『Big River』という作品を知らないのではないかと聞きました。でも、このミュージカルのナンバー“Muddy Water”をラミンと優に歌ってもらったところ、手拍子が生まれ、予想以上に歓迎されているなと感じることが出来ました」

――2曲のナンバーを一つにまとめている箇所が何度かありましたが、あなたのアイディアですか?

「ええ、ストーリーを伝えるには“流れ”が重要です。『4 Stars』は4人のショーなので、こういう手法が有効だと思いました」

――映画『La La Land』のナンバーが登場しましたが、ひょっとして舞台化のご予定なのですか?

「いいえ(笑)。この映画のファンで、ぜひ取り上げたかったんです。」

――スターのコンサートではダンサーが“常に”踊っていることも珍しくありませんが、今回は“時折”の登場でしたね。

「(登場に)ふさわしい場面だけ登場してもらおうと思いました。オーケストラをピットではなく、ステージにあげている(ので踊るスペースが広くない)ということもあります。オーケストラがすぐ後ろにいることで、歌い手が舞台に出たとき、“よし!”と力強さを感じることができる。それはとても大事なことです」

――特に演出が楽しめたナンバーを一曲挙げるとしたら?

「ラミンが歌った“Cucurrucucu Paloma”です。スペインのペドロ・アルモドバル監督作『Talk To Her』の主題歌で、ずっと好きな曲でした。初めてラミンと会った時、彼に歌ってもらいたいなと思ったのです。彼のパフォーマンスはシンプルでありながら、チェロの旋律ともあいまってとても美しかった。ラミンはどんなスタイルでも歌いこなせる人なんです」

――4人のスター、それぞれについてのコメントをお願いします。まず、ラミンについて。

「とても“磁力”のある人です。共演者と深い関係性を作ろうとする姿勢がとても好きですね。単にナンバーを歌うのではなく、ストーリー・テリング(物語り)をする歌手です。新しいことにも積極的に挑むし、一緒に仕事をしやすい人です」

――シエラ・ボーゲスはいかがでしょう?

「彼女もストライク・ゾーンの広い、美しいソプラノです。遊び心があり、お客さんを前に自然にパフォーマンスが出来ます。共演の3人がやりやすいようにと気遣ってくれて、とても感謝しています。ビッグ・ハートの持ち主ですね」

――日本に初お目見えのシンシアは?

「稀有なアーティストで、今回参加してくれたのはラッキーでした。ステージのサイズに関わらず、舞台に登場して歌うスポットに来ると、曲にすっぽりと入り込む姿が素晴らしいです」

――そして城田優さんは?

「スペインの香りを含め、私に大いなるインスピレーションを与えてくれました。生まれながらの才能を持つ俳優で、ラミンのように歌の中でストーリーテリングをするタイプですね。率直で、とても“リアル”なアクターだと思います。オープンで、面白い一面もありますしね。はじめは彼のことを全く知らなかったので、どんな人物か知ってゆく過程を楽しみました。ぜひブロードウェイに連れていきたいですね。ハムレットもいいですし、ミュージカルならロマンティックな主人公をキャスティングしたいです」

『PHOTOGRAPH51』

『PHOTOGRAPH51』



日本での仕事は、アメリカでは得られない自由を感じることができます

――サラナさんはこの後、日本でストレート・プレイ『PHOTOGRAPH 51(フォトグラフ51)』を演出予定です。“世紀の発見”をしながら男性社会の中で認められなかった女性科学者の物語ですが、いわゆる“ガラスの天井”(性差別によって女性が社会的成功を拒まれる現象)がテーマでしょうか?

「そう思います。差別のターゲットになった人、差別をする側、双方の心象がシンプルすぎず、詩的に描かれていて、とても美しい作品だと思いました」

――科学用語が多いのですが、一般の観客も楽しめますか?

「大丈夫だと思いますよ。確かに科学用語は多いけれど、科学的事象を男女の性の営みに例えたりと詩的な比喩表現も多くて、ユニークな戯曲です」

――ストレート・プレイを日本語で演出するのは初めてでしょうか?

「はい。翻訳家の芦澤いずみさんと何か月も、一言ずつ翻訳を吟味するという貴重な体験をさせていただきました」

――板谷由夏さんはじめ、日本人キャストとはお会いになりましたか?

「数日前に初めて本読みを行いました。素晴らしいキャストで、これから稽古を一緒にやっていくのが楽しみです」

――プロフィールについてもうかがいたいのですが、サラナさんは幼いころから演劇界を目指していたのでしょうか?

「いえ、私はもともとシャイなタイプで、一人で作業の出来る作家になりたかったんです。それが、シアトルで非行少女の矯正プログラムに関わった時、自分は彼女たちの模範になれるほど強くない、むしろ自分のほうが子供っぽい。もっと自分自身を外に出して、物語を語らなければいけない、と思って、演劇に向き合うことにしました」

――前述のジュリー・テイモアは女性が演出家としてキャリアを築く困難を語っていましたが、サラナさんはいかがでしたか?

「同じです。『PHOTOGRAPH 51』でも描かれますが、社会は女性のリーダーに敵意をむき出しにしてきます。奇妙なことに、女性と言うだけで信頼されないし、追い出されそうになったこともしばしば。でも私は前述の美術デザイナーのような友人たちにずっと励まされ、その存在に支えられてきました」

――これから演出を目指す若い女性にアドバイスをするとしたら?

「私の世代より、今は状況がよくなったと思います。アドバイスをするなら、仕事はよく吟味すること。そして、信じた仕事のためには戦いぬきなさい、ということです」

――演出をするうえで、モットーはありますか?

「10代の頃、私は未来に対する漠然とした不安があって、それをスポーツなど“行動すること”で解消してきました。今生きていると感じること、ドキドキすることで、何かが始まる。今でも道を見失うと、そこに戻るようにしています。今は自分の生き方、時間の使い方を愛することが出来ています」

――『PHOTOGRAPH 51』の後にはどんなお仕事を予定していますか?

「いろいろプロジェクトがありますが、まだお話しできない段階です。日本でもぜひお仕事を続けていきたいですね。アメリカでは得られない自由を感じられます。過度な競争や差別がないし、皆さんからのリスペクトを感じながら、仕事に集中することができる。とてもいい環境です」

*公演情報*『PHOTOGRAPH 51(フォトグラフ51)』4月6~22日=東京芸術劇場シアターウェスト、4月25~26日=梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

次頁で2013年版レポート&演出・ダニエル・カトナーインタビューを掲載しています。



【4 Stars 2013開幕レポート】

『4 Stars』undefined写真提供:梅田芸術劇場

『4 Stars』 写真提供:梅田芸術劇場

89年、『ミス・サイゴン』の主人公役で彗星のように現れ、ディズニー・アニメのヒロインとしても世界的な人気を獲得してきたレア・サロンガ。『オペラ座の怪人』25周年記念コンサートでタイトルロールを任されるほど、アンドリュー・ロイド=ウェバーの信頼厚いラミン・カリムルー。『エリザベート』『ロミオ&ジュリエット』で、日本のミュージカル界に新たなスターの登場を印象付けた城田優。そして『オペラ座の怪人』クリスティーヌや『リトル・マーメイド』アリエル役で、当代きってのソプラノ・ヴォイスを披露してきたシエラ・ボーゲス……。

『4 Stars』レア・サロンガundefined写真提供:梅田芸術劇場

『4 Stars』レア・サロンガ 写真提供:梅田芸術劇場

ミュージカル史の「伝説」から「ホープ」まで、いずれ劣らぬスター4人が一堂に介する企画が実現しました。このコンサート、実は日本限定。海外メディアでも羨望のまなざしで報道されているという「夢の顔合わせ」コンサートの開幕です!

そのオープニングは、期待で胸のみならず喉元あたりまでいっぱいになった観客にとっては、少々意外なものでした。これだけのスターが揃っているなら、イントロを長くするなどしてお客をじらすことも十分あり得るのに、バンドが奏でる「All That Jazz」(『シカゴ』)に併せ、さくさくと下手からレア・サロンガ、上手からシエラ・ボーゲス、そして中央からラミン・カリムルーと城田優が登場。一節ずつ歌い、和やかに合唱するという、シンプルこの上ない幕開けです。
『4 Stars』undefined写真提供:梅田芸術劇場

『4 Stars』 写真提供:梅田芸術劇場

飾らず、のびやかに歌う彼らの姿に滲み出る、スターのオーラ。日本(とスペイン)代表の城田さんも、大柄であることも手伝ってか、頼もしく、そして自然に3人に溶け込んでいます。このほどよい簡潔さとリラックス感は、ショーの最後まで持続し、観客を心地よく包み込みます。

気取らない、大人のムードは音楽面にも反映。『ラスト・ファイヴ・イヤーズ』などで知られる作曲家ジェイソン・ロバート・ブラウンによるアレンジは、大方がジャズ風です。『回転木馬』の「You’ll never walk alone」など、ゆったりとしたジャズに染め直されてもなお感動的に聞こえるのは、編曲、歌い手双方がツボを心得ているからこそでしょう。
『4 Stars』undefined写真提供:梅田芸術劇場

『4 Stars』 写真提供:梅田芸術劇場

1幕ではロジャース&ハマースタイン、ソンドハイム、ロイド=ウェバーらの名曲が登場。スターたちが持ち歌や声域に合う曲を歌ってゆきますが、要所要所にさきほどの「You’ll never walk alone」や「No one is alone」(『イントゥ・ザ・ウッズ』)等、連帯をテーマとしたコーラス曲が差し挟まれ、国際色豊かなスターたち(レアはフィリピン人、ラミンはカナダ育ちのイラン人、城田さんはスペインと日本のハーフ、シエラはアメリカ人)が集う意味を感じさせます。4人のアンサンブルもすこぶる良く、誰か一人が突出することなく、色とりどりの千代紙をきれいに重ねたようなハーモニーが見事です。(レアいわく、彼ら4人はリハーサルを通して大の仲良しになり、何度一緒に晩御飯を食べたか分からないとか。)

『4 Stars』ラミン・カリムルーundefined写真提供:梅田芸術劇場

『4 Stars』ラミン・カリムルー 写真提供:梅田芸術劇場

2幕も『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』などの名曲が目白押しですが、その中できらりと光るのが、ピアノを囲んで4人が思い思いの選曲を歌うお楽しみコーナー。城田さんは「おばあちゃんの名前でもあるので思い入れがある」という「Isabel」を、レアは「病気で声を失ってしまった親戚を思って歌っている」というフィリピン語の歌「イカウ(あなた)」を、声楽出身のシエラは修業時代から大好きだと言うオペラ『ラ・ボエーム』の「私の名はミミ」を、そしてラミンはギターを片手にブルーグラス風のオリジナル曲「Reminder」を英語と日本語で……と、あまりにばらばらな選曲(!)がお茶目。ここが最も、彼らの「素」を垣間見せてくれるシーンと言えるでしょう。

 

『4 Stars』シエラ・ボーゲスundefined写真提供:梅田芸術劇場

『4 Stars』シエラ・ボーゲス 写真提供:梅田芸術劇場

もちろん、各自の持ち歌における「ゆるぎない歌唱」も必聴です。直立不動の小柄な体から聴衆の心へと強靭に、まっすぐに届けられるレアの「命をあげよう」(『ミス・サイゴン』)。歌いだし「Sing once again with me a strange duet」の圧倒的迫力に「待ってました!」と(心の中で)声を掛けたくなるラミンの「Phantom of the Opera」。「最後のダンス」(『エリザベート』)一曲のうちにどんどん声の表情を変え、聴く者を取り込む城田さんの表現力。簡明なアニメソングをここまで、というほど彫の深い曲に聞かせるシエラの「Part of your World」(『リトル・マーメイド』)……。

 

『4 Stars』城田優undefined写真提供:梅田芸術劇場

『4 Stars』城田優 写真提供:梅田芸術劇場

いっぽうでは、持ち歌以外で思いがけない発見があるのも、こうしたコンサートの楽しさです。演出家ダニエル・カトナーが「優のために」とプログラムに入れたモーリー・イェストン版ファントムの「You are music」で、城田さんはクラシカルな発声に挑戦。ラミンとはまた別の魅力溢れるファントム誕生を予感させましたし、そのラミンは「Moving too fast」(『ラスト・ファイブ・イヤーズ』)でファンキーな歌唱を披露。これまで時代物の作品が多かった彼ですが、『RENT』系もはまるかも?などと想像させてくれました。

最後はジャズ調アレンジの「Somewhere」(『ウェストサイドストーリー』)で4人が虹のように軽やかにメロディを重ね、締めくくり。カーテンコールにもこの幸せなひとときにぴったりな歌詞の曲が選ばれていて、ショーは気持ちよく幕を下ろします。2時間というコンパクトな時間に、4人の様々な歌声が凝縮され、観客はお腹がいっぱい。4人の魅力はもちろん、ミュージカルの楽しさを再発見できる、近年になく完成度の高いコンサートとなっています。

『4 Stars』演出家ダニエル・カトナー スペシャル・インタビュー(2013年6月16日、青山劇場にて)

ダニエル・カトナー氏。( C ) Marino Matsushima

ダニエル・カトナー氏。( C ) Marino Matsushima

――今回の公演はどういう経緯で生まれたのですか?
私は11年に現代劇「みんな我が子」で梅田芸術劇場に招かれ、日本で初演出をしたのですが、その折、また一緒にやろうというお話をいただきました。何がいいかと話すうち、僕はNYでレア・サロンガのショウを演出したことがあるので、彼女を中心に何かできないかと思いついたのです。そこでシエラやラミンや日本のスター、城田さんに加わってもらい、4人のショーをという展開になりました。アイディア段階ではまず夢のキャスティングをしてみるものですが、今回はそれがそのまま実現したので、幸運でした。
ゲネプロ後、囲み会見に応じる4 starsの面々。( C ) Marino Matsushima

ゲネプロ後、囲み会見に応じる4 starsの面々。( C ) Marino Matsushima

――プログラムはどう組み立てていったのでしょうか。
彼らの持ち歌をリストにしてみたら、あとちょっと加えれば「ミュージカル史」が出来上がると気づき、時代順に並べてみることにしたんです。ロジャース&ハマースタインに始まって、ソンドハイム、ロイド・ウェバーやシェーンベルク、ディズニー、そして最後に今回音楽監督も務めているジェイソン・ロバート・ブラウンの作品……。これらを並べながらスムーズな流れにまとめてゆくのは、ちょっとしたエクササイズでした。

――今回のコンサートでは、一人が歌い終わっても舞台からはけず、残って次の歌を聴くことが多いのが特徴的ですね。
今回が初めての試みです。ふつう、コンサートでは一人一人現れて歌っては消えるし、ミュージカルなら物語の中に居続ける。今回はミュージカル・レビューなので、両者の中間的なものができないかと思ったのです。ソンドハイムやジェイソンのパートではとりわけ、アンサンブル的な演出を心掛けました。観客が、彼らはソリストではなく一つのチームなのだと感じてくれることが、僕にとっては重要でした。

――『オペラ座の怪人』のセクションでは、ロイド=ウェバーの一連の作品の前にモーリー・イェストン版の「You are music」が歌われますね。この意図は?
『4 Stars』undefined写真提供:梅田芸術劇場

『4 Stars』 写真提供:梅田芸術劇場

ラミンは世界最高のファントムの一人ですが、(別バージョンを入れることで)城田さんにとってもファントムを歌ういい機会になるのではないか、と思ったのです。ロイド=ウェバー版と同じくらい僕はイェストン版も好きだし、この曲は日本でも知られているので、ちょっと面白くなるのではと思って、「怪人比べ」をしてみたんですよ。

――「ミュージック・オブ・ザ・ナイト」のステージングは、あなたの師匠、ハル・プリンスの演出に忠実でしたが、プリンスへのリスペクトということでしょうか?
『4 Stars』undefined写真提供:梅田芸術劇場

『4 Stars』 写真提供:梅田芸術劇場

彼の演出を拝借しようと思った……わけじゃないですよ(笑)。僕としては、前曲で歌ったシエラはすぐ舞台からはけるのだと思っていましたが、シエラはそのまま残って(クリスティーンとしての)芝居を続けたがったんです。観客にとっては芝居本編を観ているような感覚を味わえる、ボーナスになったのでは?僕にとっても思わぬ「ごちそう」でした。

――最も演出を楽しんだシーンは?
『ミス・サイゴン』『レ・ミゼラブル』『オペラ座の怪人』はもちろん大きな聴きどころですが、これらの作品はレアたちの体の中にすでに入っているので、演出はほとんど出来上がっているようなものです。それ以外の、ソンドハイムやジェイソンの作品コーナーが僕としては楽しかったですね。視覚面のプラン会議で、僕はプリンスの『カンパニー』のオリジナルプロダクション(1972年)のセットを引用し、アイディアを出したんです。出来上がったセットはまさにこれを思わせる、段のたくさんあるものでとても嬉しかったです。

――音楽監督にはどんな音楽的リクエストをしたのでしょうか?
彼はジャジーでモダンなスタイルを特色としています。オリジナルに忠実でありながら、一味違う魅力を引き出してくれることを期待して一任しました。彼は作曲家としてとても才能があるだけでなく、彼以前の作曲家をよく勉強しているし影響も受けていて、アレンジにオマージュをちりばめている。彼との作業はとても楽しいものでした。

――あなたはハロルド・プリンスの一番弟子として知られていますが、彼とはどうやって出会ったのですか?
全くの縁としか言いようがありません。故郷フィラデルフィアで演劇修行を始めた僕は、NYに移ってある新作ミュージカルに携わりました。そこで指揮をしていたのがチャーリー・プリンス。プリンスというのはよくある名前なので僕は何とも思っていなかったのですが、彼と仲良くなった頃、突然「君は僕の父に会うべきだ」と言われたんです。「君のお父さんって誰?」と尋ねたら、彼は怪訝な顔をしながら(笑)「ハルだよ」と。ハルと5分話した後、彼のオフィスで働くことになりました。2年ほど下働きをした後、演出助手となり、それから10年。彼は僕を励まし、多くを学ばせてくれるホームベース。素晴らしい、夢のような関係が続いています。

――彼から学んだ最も大きなことは?
仕事への姿勢です。彼ほど事前にしっかり準備をする演出家を、僕は他に知りません。彼は毎日9時にオフィスに来る。絶対に休まないし体調も崩さない、勤勉な人です。こういう人は演劇業界には珍しいし、多くの人は「演劇は芸術なのだから、楽しむべき」というスタンスかもしれないけど、僕は「仕事」である以上は真面目に取り組むべきだ、というハルの考えにとても共感します。

――彼から「成功」のコツを学びましたか?
彼がここにいたら、おそらく両手をあげて降参のポーズをするでしょう。それは誰にも分からない(笑)。演出家が出来ることは、ストーリーを最大限、説得力あるものにすることですが、それをやっているハルでさえ、『オペラ座の怪人』の後10年間ほど、新作がことごとく失敗しました。ただ、彼のユニークなのは演出歴の長さ。60年ですよ! 『ウェストサイドストーリー』『くたばれヤンキース』の成功に始まり、『屋根の上のヴァイオリン弾き』『エビータ』『オペラ座の怪人』といった黄金期があり……。成功も失敗もあり、そのいくつかは身近にいた僕も分け合いました。そんな経験があるので、昨夜このショーは大喝采のなか初日を迎えましたが、有頂天になりすぎないよう、自制心が働きます(笑)。

――次のプロジェクトは?
新作ミュージカルが2本あります。一本は、とあるドキュメンタリーをもとにしたミュージカル。もう一本は、まだお話できませんが、日本の皆さんにとってもわくわくするようなプロジェクトですよ。

――あなたが創りたいのはどんな舞台ですか?
今回のような商業的なショーから、深い芸術的な作品までいろいろなものに興味がありますが、どちらにしても心を深く揺り動かされるような舞台を創りたい。テーマとしては、特に父と子の関係、あるいは夫婦の関係に関心があります。僕自身、結婚9年目で3歳と1歳の男の子がいます。

――あなたにとって演出の喜びとは?
今回のように、劇場の一番後ろに座って客席を見渡すことかな。素晴らしい役者たちを目の前にして、目を輝かせている人々。そんな姿を見ていると、僕もこの上ない幸せを感じます。

*公演情報*
『4 Stars One World of Broadway Musicals』
2013年6月23日まで=青山劇場
6月27~30日=梅田芸術劇場メインホール
http://www.umegei.com/schedule/258/index.html
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。