子育て期は夜洗濯が当たり前に
洗濯が室内でできるようになると、洗濯する時間も自由度が増してきます。従来洗濯とは朝にするものだったのですが、子育て期世代では夜にすることがすでに当たり前になっています。洗濯することがある時間帯を訪ねたアンケートを世代別に分析すると(図4)、親同居ではない核家族の場合、専業主婦世帯でさえ、子育て世代では夜洗濯している人が約半数います。これに対しリタイア期の世帯では8割近くが夜洗濯をしていません。子育て世代の共働き世帯では、「夜あり」「夜のみ」の合計は8割を超え、むしろ朝洗濯の方が珍しい存在となってしまっています。
【図4】洗濯することのある時間帯を末子の年齢別で比較したもの。 専業主婦世帯であっても幼児期、学齢期(末子が小学生~高校生)の世帯は夜洗濯率が高い。 共働き世帯では夜洗濯の率はさらに高く、8割を超えている。 ※クリックすると拡大します。 |
興味深いのは、親同居の有無で比較したグラフです(図5)。専業主婦世帯では親同居すると夜洗濯の比率が上がり、共働き世帯では逆に下がる傾向があります。この理由はまだ明確にはなっていないのですが、親同居で洗濯を別々にすることが多い専業主婦世帯では洗濯機が1台の場合親が洗濯機を使わない夜の方が洗濯しやすく、共働き世帯では親が洗濯を分担することにより朝洗濯の比率が上がるのではないかと推測しています。家事協力が多い娘夫婦同居の場合、午前中に親が子世帯へ行くことが多いこともわかっており、主に洗濯の協力のためではないかと考えています。
【図5】洗濯することのある時間帯を専業主婦⇒共働き、親同居なし⇒ありで比較したもの。 親同居は夕食を一緒にしている場合に限定している。 親同居により専業主婦世帯では夜洗濯率が上がり共働き世帯では下がる。 ※クリックすると拡大します。 |
夜洗濯の増加は、一方では洗濯機が静かになったことにも支えられている面があります。洗濯をタイマーでセットできることや深夜電力の普及で夜11時以降は電気料金が安いこともこれに拍車をかけているのではないかと思います。このため、洗濯機とリビング、子どもの寝場所等の遮音が重要性を増してきました。特に二世帯住宅の場合、親世帯が就寝する時間に夜洗濯をすることも考えられますので、子世帯の洗濯機と親世帯の寝室との位置関係など遮音に対する配慮が必要になってきました。
洗濯では「洗う」より「干す」に注目
電器洗濯機と住宅内の洗濯機置き場は屋外でする洗濯では考えられなかった夜洗濯を可能にしたといえます。共働き世帯の増加も夜洗濯の増加を後押ししたのではないかと思われます。洗濯はスイッチひとつの世界に合理化され、衣類も色落ちするものも減って洗い分けの不要なものに移行して来ています。この結果洗濯は楽になり、家造りにおいては乾燥、物干しに対する配慮の比重が相対的に増したのではないかと思います。また、今回手持ちの70-80年代の住宅やインテリア設計の資料を読み返してみて、キッチンや浴室洗面所はよく登場するのに、洗濯や物干しの話はほとんど登場しないことに改めて驚きました。狭いので写真が撮りにくいこと、写真映りの良い空間ではないことも影響していたのでしょうが、これからの家造りでは注目を浴びる分野であろうと思います。次回は洗濯ものを乾かす、干すといった家事と住まいとの関係を考えたいと思います。