それぞれに楽しい時間はあるでしょうが、おそらくはその中でも最高だと思われる一つに、恋人やパートナーとの二人の時間が上げられるのではないでしょうか。
今回はそんなお熱いお二人の時間をさらにハッピーにさせてくれるジャズ・JAZZをご紹介いたします。
あなたに、最初にお勧めするのはこの一枚です!

ワインライト
有名サックス奏者グローバー・ワシントン・ジュニアのCD「ワインライト」
<「ワインライト」より オススメベスト二選>「ワインライト」
一曲目「ワインライト」はジャケットの白ワインのような、澄んだ爽やかさが信条です。グローバー・ワシントン・ジュニアのアルトサックスが軽やかに、テーマを奏でます。口当たりが良くて飲みやすいのに、それでいてボディはしっかりして軽すぎない。彼のサックスは、まさに極上の白ワインの様です。「ジャスト・ア・トゥー・オブ・アス」
五曲目大ヒットした「ジャスト・ア・トゥー・オブ・アス」を聴いてみましょう。この曲は、1981年の全米ポップスチャートで二位を取り、グラミー賞も受賞したほどのヒット曲。あなたも、もしかしたら一度は聞いた事があるかもしれません。おだやかな波を思わせる心地よいリズムに乗り、ボーカルのビル・ウィザースによる二人の愛の歌が歌われます。その後のスティールパン(ドラム缶よりつくられた楽器、音階がある)という珍しい楽器によるソロは、南の島のようなリゾート感を演出します。続くグローバー・ワシントン・ジュニアによるウォームなテナーサックスソロが始まる頃には、まぶしい日差しの下、パラソルでくつろぐ二人のようなゴージャスな気分になる事請け合いです。
グローバー・ワシントン・ジュニアは、ジャズから派生したジャンルの「フュージョン」における代表的なサックス奏者です。フュージョンとは、1970年代後半から始まった音楽ジャンルで、それまでのモダンジャズとの大きな違いは一言で言うとリズムの違いにあります。
ジャズはそれ以前にも、ラテンやカリプソなど様々な違うリズムの音楽との交流がありましたが、基本のリズム(ビート)は4ビートでした。それが、8ビートのロックと融合した「ジャズロック」を経て、リズムが16ビートの「フュージョン」というジャンルが新たに作られました。ここにきて、従来のジャズとは全く違うイメージの音楽となったと言えます。
そのフュージョンにおいて、いち早く名乗りを上げたサックス奏者がグローバー・ワシントン・ジュニアです。ソプラノ・アルト・テナー・バリトンと四種類の高音から低音までのサックスをそれぞれ個性豊かな音でスムースに鳴らす彼は、まさにフュージョンサックスの立役者と言えます。
特にこのCDは、数多い彼のアルバムの中でも最もヒットしたもの。お二人の時間を演出する極上のBGMとしてもピッタリのおススメの一枚です。
二枚目に聴いてほしいCDとそのストーリーについては、次のページで紹介します。
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次にご紹介するのはこの一枚です!

ラヴ・アフェア
個性派アルトサックス奏者ゲイリー・バーツのCD「ラブアフェア」
<「ラブアフェア」よりオススメベスト二選>「ペネロペ」(エーゲ海の真珠)
このCDでは、何と言っても二曲目「ペネロペ」(エーゲ海の真珠)から聴いてみてください。出だしのピアノの和音からゲイリー・バーツのアルトサックスがルバート(テンポは変えずに、ある程度自由に演奏する事)でイントロ(出だしの前奏)を情熱的に奏でます。ストリングスやハープなども絡んできて、何かが起こる期待感が高まります。そして、ついに有名なメロディがサックスにより奏でられます。この曲「ペネロペ」は、別名が「エーゲ海の真珠」と言い、イージーリスニング音楽の世界では知らない人はいないと言われる「ポール・モーリア楽団」の十八番。同楽団の「恋はみずいろ」や「オリーブの首飾り」と同様、世界的にヒットした哀愁漂うメロディです。もしかしたら、あなたもどこかで聴いた事があるかもしれません。
その有名なメロディをゲイリー・バーツは艶やかに演奏しています。エレキベースのチョッパー奏法(スラップ奏法とも言い、ベースの弦を指ではじいてリズム感を強調した奏法。「ンベンベッ」と言う風に聞こえる)が、サスペンスタッチを感じさせ、ドラマチックな雰囲気を醸し出しています。この曲をバックに見つめ合うお相手は、きっと紺碧のエーゲ海のように神秘的な表情を湛えている事でしょう。
「ジャイアントステップス」
六曲目「ジャイアントステップス」を聴いてみましょう。この曲は超有名サックス奏者ジョン・コルトレーンの出世作。コルトレーンが自身研鑽を積んだオリジナルの難しいコード進行(楽曲におけるコード・和声の流れのパターン、普通はある程度決まった自然な流れになっている)で出来ている難曲です。ジャズの世界では、腕自慢の演奏家がこぞって演奏している有名曲です。ゲイリー・バーツは、クラシックで例えるならばショパンのエチュード(練習曲)とも思えるハードな曲調を、ストリングスをバックにあくまでスタイリッシュに演奏しています。曲中ドラムは16ビートで一定の決まったリズムを続け、その上に乗ったサックスの静かな出だしから次第に熱を帯びて行く様が興奮を誘います。情熱的でハッピーなお二人にピッタリの音楽と言えます。
もしこのゲイリー・バーツの「ジャイアントステップス」が気にいったのなら、本家ジョン・コルトレーンの演奏はもちろん、他の演奏家のこの曲も探してみてください。おそらくはそのどれもが、力の入ったある意味鬼気迫る演奏ぞろいで、あまりの雰囲気の違いに驚いてしまうかもしれません。
その上で再度ゲイリー・バーツに戻ると、彼の良い意味での力の抜け具合に気がつくはずです。こうしたところもジャズの楽しみ方の一つです。どんどん、自分たちだけのお気に入りの演奏を見つけて行ってくださいね。
三枚目に聴いてほしいCDとそのストーリーについては、次のページで紹介します。
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三枚目にご紹介するのはこの一枚です!

Nancy Wilson & Cannonball Adderley
有名歌手ナンシー・ウィルソンと有名アルトサックス奏者キャノンボール・アダレイのCD「ナンシー・ウィルソン&キャノンボール・アダレイ」
このCDは、ジャケット写真を見ながらぜひ聴いて頂きたいCDです。ひょんなことから、都会から来た若くて美人のお嫁さんをもらった村一番の暴れん坊が、大汗をかきながら一所懸命にお嫁さんのご機嫌をうかがっているかのような、微笑ましさがあります。
「セイブ・ユワ・ラブ・フォー・ミー」
一曲目「セイブ・ユワ・ラブ・フォー・ミー」を聴いてみましょう。ここでのナンシー・ウィルソンはフレッシュで切れの良い歌声で、洗練さと同時にはきはきしたメリハリのあるイントネーションが印象的。その上、若いに似あわずなかなかのしっかりもののようです。「あなたを愛しすぎてしまうから、お願いあなたの私への愛を、ちょっと抑えて」と、はやる大男の旦那さんをうまい具合にあやつっています。「ハッピー・トーク」
四曲目「ハッピー・トーク」はまさにハッピーソング。大男キャノンボールの弟ナット・アダレイによる、笑っているかのようなミュート(弱音器)をつけたコルネット(トランペットに似た金管楽器、ややまろやかな音が特徴)の出だしから、すぐにはずむ様に歌いだすナンシーの歌声が印象的です。続いて弾け出る様なキャノンボールのアルトサックスソロも楽しい気分をさらに盛り上げてくれます。二人のジャケット写真からは、
「ねえ、ハニー、おれのサックスどうだった? 一所懸命吹いたんだけど」
「あなたはいつだって最高よ」
そんな会話が聞こえてきそうです。
もし、二人が本当の夫婦だったら、おそらくはこれからもずっと尻に敷かれっぱなしであろうキャノンボールですが、それがまんざらでもなく、むしろ幸せそうに見えるハッピー盤です。
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最後にご紹介するCDはこちら!

ブラック・バード
<「ブラックバード」よりオススメベスト一選>
このCDは、ハッピーなお二人のドライブのBGMとして最適です。ぜひ車のCDオートチェンジャーに入れておいてほしい一枚です。全曲軽快ですが、特に三曲目の「ラブズ・ソー・ファー・ラウェイ」がおススメです。夜のしじまを駆け抜ける様な最高にカッコいいドライブが演出できる事請け合いです。
「ラブズ・ソー・ファー・ラウェイ」
ここでの主役は何と言ってもベースのチャック・レイニーとドラムのハービー・メイソンのリズム隊。チャカチャカとリズムを刻むギターのカッティングと跳ねまわるコンガの後ろでベースとドラムの二人の相性はバッチリ。バツグンの乗りで、フロントでソロをとるドナルド・バードのトランペットとフルート奏者を鼓舞します。この曲を聴いているとあまりのリズムの乗りの良さに時間を忘れてドライブしてしまいそうです。このCDは、ジャズトランペット奏者ドナルド・バードがフュージョンシーン転向のきっかけとなった大ヒット作。これ以降、バードは同様の快調なフュージョン作品をヒットさせていくようになります。そのどれもがドライブでの聴き流しに最適なハッピーな音楽になっています。そちらのご紹介はまた次の機会と致しましょう。
それでは、安全運転でいってらっしゃい。また次回お会いしましょう!
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