歌い手の違いで異なる味を楽しめる名曲

1975年4月に発売された、布施明さんの大ヒット曲です。1975年の日本レコード大賞を受賞するなど、さまざまなタイトルを獲得したことでも有名です。恋に落ちた愛しい女性を思うちょっと切ない歌詞と、美しいメロディが印象的です。私はまだ生まれていなかったのですが、小さい頃からときどき耳にしており「きれいな曲だな」と思っていました。

歌詞については賛否両論あったと聞いたことがありましたが、偶然耳にした小椋佳さんのラジオでのインタビューで、

「(3番の冒頭に出てくる)紫色のシクラメンは存在しない」
「そもそもシクラメンには香りがない、すなわちこれはウソの世界を描いている」

という主旨のコメントをされていました。香りをあらわす言葉は「かほり」という表記はしませんが、小椋さんは小学生のときに「かほりちゃん」という同級生が好きだったそうで、後にお二人は結婚されています。この曲は、子供の頃から恋焦がれていた女性がモデルだったのでしょうね。

布施明さんと小椋佳さんのバージョンを聴き比べていると、歌い方にかなりの違いを感じます。布施さんは「恋する女性を思い出す男性の姿」が想像され、小椋さんは「物静かな男性が愛しい女性を前にして恋心を押し殺している姿」が描かれているように思います。個人的には小椋さんの歌い方がしっくりときますが、シャンソン歌手の布施さんの歌声のよさと歌唱力はさすがで、こちらもとても素敵です。

小椋佳さんの歌詞は、人物や情景などさまざまな想像をさせてくれるので好きです。「シクラメンのかほり」を聴いていると、とても清楚で知性的な女性が思い浮かんできます。1番の歌詞にある

「ためらいがちに かけた言葉に 驚いたように ふりむく君に」

という部分で、好きな男性に声を掛けられた驚きと喜びの表情を浮かべた女性の姿が見えてくるようです。シクラメンという花はちょっと地味な印象があったのですが、この曲を聴いているうちに物静かで美しい花だと思うようになりました。

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