最高ランクに位置する競馬のレースが「G1」

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G1レースとなると10万人以上の観衆が詰めかけることも(写真 JRA)

自分の人生を振り返ってみると、色々な年代において、知り合いみんなに報告(自慢)したくなるようなステータスがあったのではないでしょうか?

小学生なら「逆上がりができた」、中学生なら「初めて美容院に行った」、高校生なら「原付免許を取った」などなど、同世代がうらやむようなことがあったはずです。

これを競馬の世界に移すとどうなるか。おそらく競走馬にとって、誰もが自慢したくなるステータスは、「G1を勝った」ということでしょう。先ほどより分かりやすい例で言うと、元高校球児が「俺、甲子園出たことあるんだよ」と語るようなイメージです。

ご存知の方も多いかも知れませんが、「G1」とはレースの格付けにおける最上位のもの。よく言う「G1レース」とは、毎週行われる競馬のレースの中でも、トップランクということになります。

ですが、これだけでは「G1とは何か」について、いまいち伝えられていません。G1のすごさ、そしてその面白さを知るには、「G1以外」の部分を張り切って説明する必要があります。

いくつものクラスを突破しないと、G1に出ることはできない

日本の競馬では、その馬の成績に合わせて5つにクラスが分かれています。以下の図を見て頂きましょう。
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日本の競馬では、獲得賞金に合わせて各馬の所属するクラスが決まります

1番下のクラスは、デビュー前の馬も含めて「一度も勝ったことのない」馬たちのクラス。そこから、1勝あるいは2勝するごとにクラスが上がります。なお、500万下・1000万下などのクラス名は、その馬が今まで1着になって稼いだ賞金のトータル(1着賞金の合計が500万以下の馬)を意味するもの。そして、勝ち続けると「オープン」という最上位のクラス、いわゆる1軍にたどりつくのです。

オープンクラスのレースは、さらに4つのランクに分かれており、その頂点に位置するのがG1。「G」とはグレードの意味で、「重賞レース」と呼ばれ、賞金はグンと高くなります。G1のほか、G2・G3と、格のつかないオープンレースがあります。

クラス分けについては、ある1頭のサラブレッドの成績を見てみるとよいでしょう。その馬の名はローマンレジェンド。
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一気に最上級クラスまで勝ち進んだローマンレジェンド(写真 JRA)

ローマンレジェンドは、2011年にデビュー。最初の2戦は芝コースのレースに挑戦するのですが、2連敗してしまいます。

2011年1月5日 3歳新馬  芝2000m 3着 
2011年1月22日 3歳未勝利 芝2200m 8着

この時、ローマンレジェンドはいわゆる「未勝利クラス」。しかし、3戦目で兄弟が得意とするダートのレースに挑戦したところ、これが大正解。「待ってました」とばかりに、ローマンレジェンドの快進撃が始まります。3戦目以降の成績を見てみましょう。

2011年5月1日 3歳未勝利 ダート1800m 1着
-------------------------------------クラス昇格
2011年11月5日 3歳上500万下 ダート1800m 1着
-------------------------------------クラス昇格
2011年12月11日 3歳上1000万下 ダート1800m 2着
2011年12月25日 赤穂特別(1000万下) ダート1800m 1着
-------------------------------------クラス昇格
2012年4月22日 上賀茂S(1600万下) ダート1800m 1着
2012年6月9日 灘S(1600万下) ダート1800m 1着
-------------------------------------クラス昇格

どうですか、この成績。0勝クラスだったローマンレジェンドは、500万下→1000万下→1600万下とみるみるうちにクリアして、オープンクラスまで上り詰めたのです。

次ページでは、ローマンレジェンドのG1挑戦をレポートします。



オープンに辿りついてもG1はまだまだ遠い……

さて、晴れてオープンクラスとなったローマンレジェンドですが、まだG1には出られません。というのも、G1レースで1回に出走できる頭数は多くて18頭。その出走権は、やはり稼いだ賞金を元に決められます。オープンクラスでは、今までにたくさん稼いだ馬が多数いますから、オープンになったばかりの馬がG1に出るのは困難。ローマンレジェンドがG1に出るためには、まだまだ賞金が足りないのです。

ということでローマンレジェンドは、G1出走権を得るために、オープンクラスのレースで3戦します。その成績がこちら。

2012年7月15日 ジュライS(オープン) ダート1800m 1着
2012年8月25日 エルムS(G3) ダート1700m 1着
2012年11月4日 みやこS(G3) ダート1800m 1着

オープンに昇格してもローマンレジェンドの勢いは止まらず3連勝。重賞である「G3」も2勝し、この頃には、すっかり「新スター候補」として、競馬界のパパラッチに追われる程の注目を集めます。賞金的にも、これだけ勝てば十分G1への出走は可能。最初の2連敗から、8勝を挙げてついにG1の舞台へ。よく頑張ったよ、本当に。

しかし、ここからがG1における本当の「すごさ」

そして2012年12月2日。破竹の勢いで勝ち上がってきたローマンレジェンドは、いよいよG1の舞台で頂点を狙います。がしかし、結果は……

2012年12月2日 ジャパンカップダート(G1) ダート1800m 4着
※レースの動画はこちら(リンク先の「HIGH」か「LOW」ボタンをクリック)

悲しいかな、ここで連勝ストップ。ちなみに、ローマンレジェンドのように下のクラスから一気に上がってくる馬は滅多にいません。いわば千代の富士以来の怪物。ですが、そのローマンレジェンドでも跳ね返されてしまうのがG1という最高峰のレースなのです。

しかし、全国のローマンレジェンドファンの皆さん安心してください。新スター候補は、その悔しさをバネに挑んだ次のG1レースでやってくれます。

2012年12月29日 東京大章典(G1) ダート2000m 1着
※レースの動画はこちら

やっぱりローマンレジェンドは強かった。ウルフと呼ぶべき怪物でした。ただ私は思うのです。そのローマンレジェンドでも、初挑戦のG1では負けた。それこそが「G1」のすごさなのだと。つまり、どんな怪物でも初挑戦であっさりG1を勝てるほど甘くない。今後まだまだG1を獲りそうなローマンレジェンドでも最初は手こずるほど、レベルの高いレース。それがG1なのです。

次ページでは、G1で行われたある駆け引きのエピソードを紹介します。



年にわずかしかない、G1奪取のチャンス

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G1の中でも最高峰とされるのが「日本ダービー」(写真 JRA)

そんな最高峰のG1レースが日本で行われるのは1年で20回以上。「なんだ、いっぱいあるじゃん」と思うかもしれませんが、しかし、競走馬にはそれぞれ得意な距離があり、各距離で頂点を競うもの。となると、本当に自分の得意な距離で行われるG1は年に2・3回しかありません。

ちなみに、1年で生まれるサラブレッドの頭数は約7000頭。その世代の中でG1を勝てる馬は毎年10頭ほど。G1とは、高い才能と運を持った限られた馬たちが、それぞれの得意部門で頂点を競う、最高峰のレースといえます。くどいでしょうが、何度でもいいます。最高峰のレースなんです。

どんなレースも、G1につながっている

さて、すべての馬が目標とするのがG1となると、それ以外のレースは、それぞれの馬がG1を見据えて戦うレースといえます。そう、これこそが競馬の面白さ。

競馬のレースは、ただ毎回シンプルに勝利を目指して戦っているわけではなく、各馬がG1の舞台に向けて様々なステップを踏んでいく、その過程ともいえるのです。

つまり、G1以外のレースでは、ローマンレジェンドのように、G1に出るための賞金を稼ぐ馬もいれば、時にはG1でライバルと激突する時に備えて、前のレースで駆け引きを行うケースもあります。

有名なのは、2007年春にあった、2頭のライバルにまつわるエピソード。

エピソードの主役となるのは、ダイワスカーレットとウオッカという2頭。後に名馬としていくつものG1を勝つ同世代のライバル牝馬は、デビューの翌年、2007年の3月に行われた「チューリップ賞」というG3レースで、初めて激突します。このレースは、その1カ月後に行われるG1・桜花賞と同じ距離・コースで行われる、まさに前哨戦。

レースは、ダイワスカーレットが序盤でウオッカより前に行き、直線でウオッカがスパートするのを待ってエンジンをかける展開。マラソンでいえば、有力2選手が終盤までジッとにらみ合いながら、最後の最後、短い距離での瞬発力勝負というイメージ。

そしてどうなったか。この戦いを制したのはウオッカでした。しかも、明らかに「一枚上」の勝ち方。本番の桜花賞でもウオッカが勝つと予想する人が大半でした。
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チューリップ賞のゴール写真。2着の騎手を見て何か気付きませんか?(写真 JRA)


しかし、上の写真をよく見てください。ウオッカの斜め後ろで2着に敗れたダイワスカーレットの騎手が、何だかニヤリと笑っているような気がしませんか? 考えすぎかもしれませんが、しかし本当に笑っていてもおかしくありません。なぜなら、ダイワスカーレットは本番の桜花賞で見事にウオッカを負かしたのですから。

2007年桜花賞の動画はこちら(リンク先の「HIGH」か「LOW」ボタンをクリック)
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前哨戦から作戦を変えて、本番ではダイワスカーレットの完勝(写真 JRA)

ダイワスカーレットが逆転した理由。それは、チューリップ賞のような、ウオッカが迫ってくるのを待ってからの瞬発力勝負では分が悪いと見たダイワスカーレットの安藤勝己騎手が、相手の意表を突くように、早いタイミングでスパートしたことでした。

ウオッカにとっては、チューリップ賞のイメージがありますから、まさに予想外の出来事。前回と同じくゆったり最後に仕掛けようと思っていたウオッカは、想定外の早い仕掛けで引き離すダイワスカーレットを必死に追ったものの、すでに流れは相手。一度つけられたリードを挽回できず、完敗してしまいます。

そう、ダイワスカーレットとそのジョッキー・安藤勝己は、前哨戦のチューリップ賞を布石にして、逆転勝利を呼び込んだのです。

これ以外にも、G1で勝利を得るためにG2やG3では馬にレースを教え込んだり、いつもと違うスタイルを試したりするケースは多々あります。言ってみれば、競馬のレースは点ではなく、線でつながっている。そしてそのゴール地点にG1があるんですね。


G1とは、すべての競走馬とそれに関わる人が目指す、各部門のチャンピオン決定戦。その距離、そのコースで頂点を競う最高峰のレースなのです。くどかろうが、私は何度でもいいます。競馬における最高峰のレース、それが「G1」なのです。

【関連サイト】
JRAホームページ|2013年G1レース一覧(※東京大章典を除く)
JRAホームページ|もっとケイバ!|ルールと仕組み –上級編-
ローマンレジェンド|競走馬データ –netkeiba.com
ダイワスカーレット -JRA

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