雨の日に聴きたいジャズバラード7選

せっかくの休日なのに、朝から外は雨模様。出かけたくはないけれど、家で何もしないのはつまらない。そんな時は雨の日にピッタリのジャズバラードを聴きながら、憂鬱な時間をちょっとイイ時間に変えてみませんか?

おすすめCD一枚目:有名ピアニスト、ビル・チャーラップの率いるニューヨーク・トリオ「オールウェイズ」

オールウェイズ

      オールウェイズ


<「オールウェイズ」より おすすめベスト3選>
「オールウェイズ」
「ゼイ・セイ・イッツ・ワンダフル」
「チェンジ・パートナー」


このCDはまず、ジャケットの素晴しさに目を奪われます。スポーツカーで颯爽とドライブするレトロな恋人同士がほほえましく、カッコイイ写真です。天気さえよければこのジャケットのように今頃きっと……といった気持ちはひとまず置いておき、早速CDをセットしてください。
 

オールウェイズ 

一曲目「オールウェイズ」でのピアノの清々しい音色に浸ると、すぐにでも雨の休日が雰囲気のある時間に思えてくるはずです。

演奏している「ニューヨーク・トリオ」のリーダー、ピアニストのビル・チャーラップは1966年生まれの生粋のニューヨーカーです。母親は1960年代にヒットを放った有名なシンガーで、父親はブロードウェイ(演劇)の作曲家という恵まれた環境に育ちました。

1940年代後半から、ジャズの世界では「モダン・ジャズ」と言われるジャンルの時代になっていきます。現在ではさすがに「モダン・ジャズ」の創成期から活躍したミュージシャンは一線を退いている人が多く、二世三世へとバトンタッチされています。

このCDでピアノを弾いているビル・チャーラップもそういった新しい時代の期待の星の一人。

彼のピアノには、その育ちのよさを感じさせる、凛とした品格のようなものがあります。テーマメロディをあまり崩さず大切に扱い、ソロではテンポよく聴きやすいプレイに徹します。聴く者をゴージャスで楽しい気分にさせてくれます。
 

ゼイ・セイ・イッツ・ワンダフル 

次のおすすめは「ゼイ・セイ・イッツ・ワンダフル」。このCDでは三曲目に入っています。

あれ、この曲どこかで聞いたことがある? と思う方も多いのではないでしょうか。そう、以前のコラム「これからジャズ(JAZZ)を聴いてみたい人へベスト3」でも紹介しました「ジョンコルトレーンとジョニーハートマン」の一曲目の曲と同じです。

あのビロードのような、つややかなハートマンの美声によって歌われたこの曲が好きになった方は、きっとニューヨーク・トリオの演奏も気に入るはず。

ビル・チャーラップはテーマをほとんど崩さずにメロディを綴っていきます。ピアノの音が一音一音粒だって聴こえ、まるで雨のしずくの様です。まさに雨の日にうってつけなジャズと言えます。これからは雨の日も、あなたにとって憂鬱ではなくなるはずです。
 

チェンジ・パートナー

次におすすめの曲「チェンジ・パートナー」は、このCDの六曲目に入っています。

この曲は、男性と踊る女性に、「ダンスのパートナーをチェンジして僕を選んで」と迫るちょっとスリリングな恋の歌です。どうにも止まらない恋の高鳴りを表現したプレイは聴きどころです。

この曲を作曲したのは、アメリカでは知らない人はいないと言われる大作曲家の「アーヴィング・バーリン」です。彼は、ロシアで生まれ五歳の時にアメリカに渡りました。決して恵まれたとは言えない環境に育った彼の音楽家としての人生は、チャイナタウンのカフェの歌手がスタートでした。

そこから、数々の名曲をものにし、アメリカ第二の国歌とも言われる「ゴッド・ブレス・アメリカ」や誰もが知っている「ホワイト・クリスマス」などによって「彼自身がアメリカの音楽だ」とまで言われるようになります。

そんな順風満帆な音楽人生を送った彼も、実は反面悩みや苦しみを多く抱える人物でした。彼の最初の奥さんは新婚旅行に行った先で疫病にかかり、半年後に亡くなってしまいます。

そして、時間をかけて傷心から立ち直ったアーヴィングが次に恋した女性とは、女性の父親によって無理やりに引き裂かれる運命にありました。それでも、アーヴィングは彼女を愛し続け、ついには何年もかけて、二人は晴れて一緒になる事が出来たそうです。

そんなアーヴィングが作った曲だからこそ、「恋をしたならば、回り道はせずに少しくらい強引な手を使っても」という歌詞の内容が生きてくると思えます。

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番外編 ~チェンジパートナーと言えば~ 

もしも、先程ご紹介した「チェンジ・パートナー」が気にいったならば、次にはぜひこちらのCDも聴いてみてください。

有名歌手フランク・シナトラ  「シナトラ・ジョビン」
 

シナトラ・ジョビン

シナトラ・ジョビン

 

 「シナトラ・ジョビン」では、大御所歌手フランク・シナトラの歌声で「チェンジ・パートナー」を聴く事が出来ます。必ずしもボサノバに合っているとは言いがたいシナトラも、この曲ではさすがの粋な色男ぶりを発揮しています。

「ねえ君、あいつとばかり踊っていないで、パートナーをチェンジして、そろそろ僕と踊ってよ」とストレートに女性を誘い、「あいつにはウェイターから電話が入ったって呼び出してもらうからさ」や「僕と踊ったら、二度とパートナーを変えようなんて思わなくなるよ」などと自信とウィットに富んだ不良っぽい歌声は、まさにはまり役。

この演奏が好きになったら、他にもこの曲の違う演奏を探してみてください。

「雨の日」に聴いてほしいCDとそのストーリー、まだまだ次のページでご紹介します。
 
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おすすめCD二枚目:有名コーラスグループ、フォアフレッシュメンの「フォアフレッシュメン&ファイブトロンボーンズ」
 

フォー・フレッシュメン&5トロンボーンズ

フォー・フレッシュメン&5トロンボーンズ

<「 フォアフレッシュメン&ファイブトロンボーンズ」よりおすすめベスト3選>
「ユー・ステップド・アウト・オブ・ア・ドリーム」
「アイ・リメンバー・ユー」
「ギルティ」


このCDは、冷たい雨が降る夜にこそ聴いてほしいCDです。それというのもここでは、全編を通してまるで暖炉のある部屋を思わせるとても温かい雰囲気を感じさせるからです。

ユー・ステップド・アウト・オブ・ア・ドリーム 

一曲目から素敵な雰囲気のバラードが続きますが、ここは思い切って七曲目「ユー・ステップド・アウト・オブ・ア・ドリーム」から聴いてみましょう。

粋なテンポの出だしから、もうすでに何か楽しい事が起こる様な予感がします。続いてコーラスが「ユー・ステップド・アウト・オブ・ア・ドリーム」と歌いだし、すぐにあなたは1950年代中ごろの古き良きハリウッド映画のような世界に誘われます。

このCDは、50年代に活躍した有名コーラスグループ「フォア・フレッシュメン」の代表作と言われるCDです。どの曲を聴いても、彼らのコーラスの醍醐味を味わえます。

ファイブトロンボーンズという題名が付いているくらいですから、ここでの第二の主役は5本のトロンボーン。間奏に入るとそのトロンボーンが張り切ってバリバリいう位に賑やかに鳴っています。

普段はメローなイメージのトロンボーンをあえてフルに鳴らす事で、艶やかなコーラスとの対比が出来、演奏のメリハリとなって飽きさせません。
 

アイ・リメンバー・ユー 

素晴しいハーモニーに浸っているとあっという間に次の八曲目「アイ・リメンバー・ユー」が始まります。

先程よりぐっとテンポを落として、「あなたを忘れない」と歌い出しからムーディーな彼らのハーモニーに酔えます。この「アイ・リメンバー・ユー」はいわゆる「スタンダード」といわれる曲です。

ジャズで演奏される曲には、大きく分けて二つの種類があり、「オリジナル」と「スタンダード」と言うものです。

「オリジナル」は、その名の通り、ジャズメンが自分で作った曲です。もう一つの「スタンダード」と呼ばれるものは、多くがブロードウェイ(演劇)で使われたものであったり、映画の主題歌や挿入歌であったり、歌謡曲であったりするものです。

そういった古いものの中でも現在に至るまで多くの歌手やミュージシャンによって演奏され続けているものが特に「スタンダード」と呼ばれます。

この「アイ・リメンバー・ユー」などは、そのスタンダードの中でも有名な曲の一つで、覚えておくとよいでしょう。
 

ギルティ 

気がつけばいつの間にか雨が止み、夜空に黄色い星が輝き始めました。最後の十二番目の曲、「ギルティ」を聴いてみましょう。

鈴の音のようなチェレスタ(ピアノのような鍵盤楽器の一種です)のまたたく星のようなイメージの可愛い出だしから、切ない恋の歌が始まります。

この曲は先程の「アイ・リメンバー・ユー」とは違って、同じスタンダードでもあまり取り上げられることが多くない曲です。しかし、もちろん曲として劣っているなどという事では決してありません。「あなたを愛することが罪ならば、私は有罪」と歌われるこのコーラスを聴いていると、今すぐにでも恋をしたい気分になってしまいます。

この「ギルティ」が気にいったのなら、次にはこの曲の他の演奏を探してみてください。そして、それがもし良い演奏だったら、この曲が大好きな私にぜひ教えて下さい。

次のページでは、さらに「雨の日」に聴いてほしいCDをご紹介しましょう。

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おすすめCD三枚目:有名フランス人サックス奏者バルネ・ウィラン「French Movie Story」

French Movie Story

French Movie Story


<「 French Movie Story」よりおすすめベスト1選>
「男と女」

 

男と女 

このCDは、フランス人の有名サックス奏者バルネ・ウィランがフランス映画で使われた曲を集めて演奏したものです。

三曲目にはカトリーヌ・ドヌーヴが主演した1964年の映画のテーマ曲「シェルブールの雨傘」があります。雨の日に相応しいアンニュイな名曲ですが、ここではまずは一曲目から聴いてみましょう。

一曲目は、こちらも1966年の映画「男と女」から、テーマ曲の「男と女」です。これは、おそらくはどこかで聴いたことがあるテーマではないでしょうか。「ダバダバダ・ダバダバダ」というスキャットで有名な曲です。

ここでのバルネ・ウィランはそんな有名なテーマを、ストレートに奏でるのではなく音のタイミングをずらしながら粋にひねって演奏しています。

彼のテナーサックスからは、フランス人らしいエスプリを感じます。硬い音をフルボリュームで鳴らすのが良しとされる最近のテナーシーンにあって、むしろぼそぼそ、むにゃむにゃとけだるさを感じさせ、個性が際立っています。

それこそがバルネの美学。カッチリと決めるのではなく、どこかヌケ感を入れ込んだオシャレな大人のテナーサックスなのです。この演奏をカッコイイと感じたら、あなたはバルネ・ウィランのファンになるはずです。

全編を通してフランス映画のムード満点な演奏は、独特のモノトーンな世界感で、雨の日にピッタリのCDと言えます。二曲目以降は、聴くとはなしに聴く。むしろ部屋のインテリアの一部として聞き流す位がフランス風かもしれません。

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これで「雨の日に聴きたいジャズバラード7選」、全てご紹介いたしましたが、実はもう一曲甲乙つけがたく、ぜひともご紹介したいCDがあります。それがこちらです。
 

番外編:有名サックス奏者スタン・ゲッツ「ゲッツ・オー・ゴー・ゴー」
 

Getz Au Go Go

Getz Au Go Go

 <「ゲッツ・オー・ゴー・ゴー」より追加のおすすめベスト1選>
「ヒアズ・ザット・レイニー・デイ」
 

ヒアズ・ザット・レイニー・デイ 

「不思議ね、失恋した時に限って雨が降る」と歌われるこの曲。さすがにバラードの名手スタン・ゲッツの手にかかれば、雨を眺めながら涙する美しくも薄倖そうな女性(もしくは男性?)の情景が容易に浮かんでくるでしょう。

このCDには他に、有名ボサノバシンガーのアストラッド・ジルベルトとの共演ライブが納められています。二人の共演はまるでゴージャスなナイトクラブに訪れたよう。「ジャズってのはね、結局ナイトミュージックなのさ」と言ったとされるスタン・ゲッツの面目躍如といったところです。

一口にジャズと言っても、範囲は広く、ジャンルによっては違う音楽に聴こえる事も少なくありません。ジャズはおよそ120年の歴史がある音楽です。体系的に聴いていくと少し遠回りをしたり、好きになれなくなってしまうかもしれません。

ジャズへのアプローチは、無理やり断崖絶壁から攻めるのではなく、登りやすい所から始めましょう。なじみの曲や、演奏家ができたらしめたものです。後はゆっくり楽しく登って行って下さい。

もしこの「ゲッツ・オー・ゴー・ゴー」が気にいったなら、次には「ヒアズ・ザット・レイニー・デイ」と「アストラッド・ジルベルト」と「スタン・ゲッツ」というタームを軸にして、他の演奏を探してみてください。 きっと、多くの気に入る瞬間に出会えるはずです。

あなたがもし今回ご紹介したCDの中で、まだ持っていないものがあったとしたら、折角ですから冷たい雨だと面倒くさがらずに、ここは思い切ってCDを探しに街まで出かけませんか?

思いっきりオシャレをしてそのままショッピングや食事、もしかしたらデートをするのも良いかもしれません。

雨の日は、好きなジャズを聴いたら、次は街へ出かける。これが、私がご紹介したい雨の日を過ごす一番の必勝法です。

それでは、ぜひとも行ってらっしゃい。次の記事で、またお会いしましょう。

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